第7話 古の予言



深夜の水無月神社。本殿に集まった四人の前で、あかりが古い巻物を広げていた。


「昨日の戦いの後、神社の奥庫で見つけました」

淡い月明かりの中、巻物に描かれた古代文字が浮かび上がる。


「七つの闇が目覚めし時、七つの光は散りばめられん」

藤堂先生が文字を読み解く。「そして...『調和』『共感』『守護』『浄化』『知恵』『勇気』『愛』...七つの心は、再び一つとなる」


「七つの神器の名前...」

陽が『共感の器』を見つめる。「でも、どうして散り散りになってしまったんですか?」


その時、本殿の床に描かれた古代文字が突如輝きを放った。光の粒子が舞い上がり、まるでホログラムのように映像を結ぶ。


百年前の水無月神社。七つの神器が祭壇に並び、神聖な光を放っている。そこに、黒いローブの集団が襲来する場面。


「影使いたちの先祖...」

あかりが息を飲む。「神器を奪おうとして...」


しかし、映像はそこで歪んだ。まるで重要な場面が意図的に消されているかのように。


「記録が改ざんされている...?」

藤堂先生が眉をひそめる。


突然、境内の結界が反応を示した。しかし、今度は外からの侵入ではない。地下から、何かが呼応するように波動を放っていた。


「こっち!」

あかりが本殿の裏手に案内する。苔むした岩の前で立ち止まる。


「ここに、隠し通路が...」


岩を動かすと、古い階段が地下へと続いていた。四人が降りていくと、そこには驚くべき光景が広がっていた。


巨大な円形の空間。壁一面に描かれた古代文字。中央には、かつての神器を祀っていたのと同じ祭壇。そして、その奥には巨大な石版。


「これは...!」


石版には、七つの『負の器』と思われる黒い結晶が描かれ、その周りを七色の光が取り巻いている。そして、その中心には...。


「陽様!」

あかりが石版を指さす。「この古代文字、『共感の器』に反応しています!」


陽が懐中時計を石版に近づけると、文字が次々と光り始めた。新たな映像が浮かび上がる。


七つの『負の器』が集まり、巨大な闇の渦となる。それを七つの神器が取り囲み、光の封印を作り上げる場面。


しかし、その結末を映し出す前に、映像が途切れた。


「七つの『負の器』には、何かの封印を解く力があるのね」

藤堂先生が物思わしげに言う。「だからこそ、影使いたちは...」


その時、地上から物音が聞こえた。


「誰か来たわ」

あかりが警戒する。「でも、この場所は...」


「結界に守られているはず」と言いかけた翔の言葉を遮るように、地下空間に重い足音が響いた。


階段を降りてくる人影。それは...。


「まさか...」

藤堂先生の虹色の靄が、警戒するように波打つ。


月明かりに照らされた人影は、かつて水無月神社で神器を守護していた巫女装束の少女。そして、その隣には黒いローブの影使いの姿があった。


「『時の切れ間』から来たものたちね」

藤堂先生の声が震える。「過去の記憶が、形を得て現れる現象...」


陽の『共感の器』が強く脈動を打つ。何か重大な真実が、目の前で明かされようとしていた。

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