新章※第3話 アマルフィからの絵葉書
親愛なる友へ、 先日、アマルフィの海を見下ろす小高い丘の上にあるカフェで、絵葉書を買った。
これを見れば、きっと君もこの場所に行った気分になるだろうと思いながら書いている。
アマルフィに到着したのは、ちょうど夕暮れ時だった。
陽が沈む直前、海は金色に輝き、空は薄紫から深い群青へと移り変わっていった。
その光景は、時間そのものが溶けていくような感覚を覚えさせた。
人々はその瞬間を楽しむかのように、港近くのベンチに腰を下ろし、静かに海を見つめていた。
初めてこの街を歩いたとき、目を引いたのは細い路地の石畳とその両側に並ぶカラフルな家々だ。
オレンジ、ピンク、イエローといった家の壁が、南イタリア特有の陽気さを感じさせる。
それに反して、路地はひんやりとした空気をまとい、太陽の熱が逃げ込む場所のようだった。
旅の中で出会ったエピソードを一つ紹介しよう。
ある小さな陶器店で、私は年配の店主と話す機会があった。
その店は、手作りのタイルや皿でいっぱいだった。
特に目を引いたのは、鮮やかな青と白の模様が施された小皿だった。
私がそれを手に取ると、店主のアンナさんが微笑みながらこう言った。
「その模様は、この街の海と空を表しているの。古くからアマルフィの人々は、青い色を使って自由と希望を描いてきたのよ。」
彼女の話を聞きながら、小皿をじっと見つめた。
そのとき、この街の人々が長い年月をかけて大切にしてきたものが、少しだけ分かったような気がした。
結局、その小皿をお土産に買うことにした。
今、私のバッグの中に大切にしまってある。
君がこの絵葉書を手にするとき、私が感じたアマルフィの風景や人々の温かさが少しでも伝わるといいなと思う。
いつか君もこの街を訪れて、自分自身の物語を見つけてほしい。 それでは、また次の街から絵葉書を送るよ。
友より
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