美冬の想い

 なんたこの男は?


 遥香に執着しないように引導を渡すつもりだったのが、コクられてしまった。


 主の人格を守る為だけに生まれた人格の、この私にだ。


 こんなことを人から伝えられるなど、想定外の感覚事項だ、対処できない。


 私はこの男に好意を持ったのだろうか? 分からないがこの男の言う通り、決して嫌な感情ではない。


 今まで人から褒められたことなど、ただの一度も無い、私の感情は辛い嫌なことから耐えるように作られている為、このような場合どうしたら良いか分からない。


 少年よ、それ以上私に何も言うな、気持ちは嬉しいがどうにもならないのだ。


 自分で言っておいて驚いてしまった、私は嬉しいのだ。


 なんと気持ちの良い感情なのだろうか、私がこんな感情を手にしてはならない筈なのに、どうやら私はパンドラの箱を開けてしまったようだ。


 この心地よい感情をもっと浴してしまっている。


 少年よ、私のことが好きなのか? いったいどこが良いのだ。


 私はもっと気持ちが良くなりたくて、わざと問いかけた。


 すると少年は案の定私が気持ちよくなる言葉を沢山投げかけてくれた。


 いかに私が美しいのか、いかに私のことを大切に思ってくれているのかを、私が喜ぶであろう嬉しい言葉に変換して語り尽くしてくれている。


 コイツでなければこれ程私を気持ち良くは出来ないだろう、ヤバイな、私はコイツのことが好きになっている。


 私の中にこんな感情があるなんて、私はもっと好きになって貰いたい、愛されたい、もうこの少年でないとダメだ、私もいつしかこの少年のことが好きになってしまった。


 ところがだ、なんと少年は私のことを諦めると言い出したのだ。


 だ、ダメよ、ダメよダメ、ダメ、絶対ダメよ、許さないから、私、諦めないから。


 なにを言っているんだ私は、そんなことよりも少年を止めなければ。


 なぜ諦めなければいけないのよ、お願い私を一人にしないで。


 少年が言うには、いくら私を好きになっても主である遥香に自分への気持ちがなければ、人格交代で戻った時に辛すぎる、とこうだ。


 そんなことは、はじめからわかって居たはずだ、私が告知したのだから。


 今更ズルいではないか、私はもう戻れない。


 私はすっかりこの少年に心を弄ばれてしまった、気持ちを上がったり下がったりさせられて、気が付いたら自分を見失っていた。


 どうすれば良いの? 私はもう後戻りできないの。


 私を諦めないで、どうすれば私を愛してくれるの、遥香を説得すればまた会ってくれる?


 そうだ、私が遥香を説得すれば良いのだ、そうでしょ? ねえ、純汰、なにか言ってよ。


 遥香の気持ちをこっちの方へもってくれば問題ないのね。


 しかし、これは難しい作戦になりそうね、遥香は今の状況を覚えて居ないし、遥香が目覚めたら私が眠る。


 分かった、私 頑張るわ、2人の愛のためにやるわ。

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