第19話 姫花、看病する
「んぐっ、はっ、はっ」
姫花のおっぱい枕に体を預けていて、不思議な安心感があった。
休日だから、すごく眠りたいのだろうか。
なんか起きたくない気分だった。
「うーん、熱い」
「熱い」
俺の体はなんか熱かった。
姫花のおっぱい枕から体を剝がしてみる。
それでも、なんか俺の体は熱かった。
「やっぱり、熱いな」
「うん、熱かったね」
姫花を見ると、汗をかいていて、顔も赤く火照っている。
エロいなぁと言いたいところではある。
でも、そんなことをより体がすごく熱い。
なんか重い。
けだるい。
動きたくない。
「けんちゃん! 大丈夫」
姫花がすごく心配そうな目をしながら、 体を小さく揺ってくる。
姫花はこういう時でも気を遣ってくれてるのがわかる。
あんまり強くゆすられると気持ち悪くなったりするからだ。
声もすごい包み込むような感じがあって、安心感がある。
「けんちゃん!」
姫花の泣きそうな顔が目に入る。
心配させちゃいけない。
動かなきゃ。
「ひ………め、か」
俺は必死に声を出す。
やっぱり俺の体が何かがおかしい。
姫花が俺の目をじっと見つめてくる。
「俺から離れろ」
「いやっ!」
姫花の返事が早すぎた。
いつになく、姫花の目が真剣だった。
怒ってるなぁ。
こういうときの姫花は絶対にひかない。
あきらめて、姫花の言うままに従おう。
姫花がおでこを当ててくる。
「熱あるよ、けんちゃん!」
「そうか、でもなぁ」
「無理しちゃダメ!」
またしても姫花に怒られる。
うん、これ以上変なことをしたら姫花を悲しませる。
「分かった」
そういうと、姫花が「うんっ!」とやっと笑った。
「優衣奈ちゃん呼んでくるね」
姫花はささっと動いて、部屋を出て行った。
数分後。
こんこん。
「おにぃ、お医者様の卵が入るよー」
優衣奈の声が聞こえた。
姫花はどうやら入ってきてないようだ。
「ほいほーい、おにぃ、生きてる?」
「生きてるわ」
優衣奈が俺の返事を聞くと、ふむふむとうなづく。
「うむ、それが一番大事」
優衣奈はそれから体温計を取り出す。
「じゃあ、体温をとりあえず測ってね」
俺はそれと受け取ると、脇に体温計を入れる。
毎度思うけど、体温計ってひんやりして気持ちが悪い。
1分後ぐらい時が経つ。
ぴぴっ。
体温計が鳴ると、優衣奈が表示を確認した。
「37.9℃か。熱だね、おにぃ。私の推測だと、単なる風邪だね。」
優衣奈がぽつりと言った。
「本当はねぇ、病院行って調べたいけど、体を無理に動かさないのが今のおにぃにとって大事だから、熱が続いてたら明日必ず内科受診しようね」
優衣奈が右人差し指を唇に当てる。
「優衣奈が思うに」
急に優衣奈がジト目をしてきた。
え、俺、なんかこいつに呆れられるようなことしたか?
「疲れたんだと思う。おにぃ、最近姫花お姉ちゃんのためにすごく頑張ってたもんねぇ、文化祭は頑張りすぎたと思うよ、まったくおにぃは姫花お姉ちゃんのこととなると、まったく」
優衣奈はこれ見よがしに「はぁー」とため息を何度もつく。
「姫花お姉ちゃん、入っていいよ、大丈夫そう」
姫花はおそるおそる部屋にはいってきた。
ずっと部屋のすぐそばにいたようだ。
「わりぃな、姫花、今起きるよ」
「無理しちゃダメって言ったでしょ」
俺は起き上がろうとした瞬間に姫花にまたしても怒られる。
「私、怒るよ」
珍しいぐらいに真剣な目をする姫花。
いや、もう怒られてるんだけどなぁ。
ちなみに言ってはいけないが、姫花の怒った顔もすっごくかわいい。
何にも怖くない。
ただ可愛いだけである。
俺は熱で頭が多少おかしくなっているのか、こういう時でも姫花はかわいいなぁとしか思えなかった。
「健康は何よりの宝物だよ。分かった? けんちゃん」
「わかった」
病気になるからこそわかることがある。
健康って素晴らしい。
どんな偉人も健康でなくては世界を制覇できない。
さて、だったら俺のすることは一つだ。
「妹よ、俺は何をすればいい?」
優衣奈がうーんと顎に手を当てた。
「治療法ねぇ、寝るのは1番だけどねぇ。松永久秀によると、夜のプロレスごっこが効果的とか、うへへ」
「妹よ、ごめん。突っ込む元気がねぇよ、今はな」
今日も俺の妹は正常運転だった。
しかし、元気がないから付き合っていられない。
悪いな、妹よと心の中で俺は謝る。
「ふざけてごめん。まぁ松永久秀の話に関してはある意味間違ってないんだけどまぁ別の機会に話すね。さて、大真面目に提案するね」
妹が今日一番な真剣な顔をする。
さすが医学部志望。
腐っても風邪の対処一つでも自分なりに治療法を考えているのはえらい。
「どうやって治すの? 優衣奈ちゃん」
姫花が両手こぶしを真剣に優衣奈を見つめる。
一ついいか?
なんで、姫花の仕草はすべてがかわいいんだ?
俺はこれを理解することが出来ることは、俺がノーベル賞を取ることよりも難しいことじゃないかと思う。
優衣奈はどや顔をする。
「愛だね」
『愛!』
俺と姫花の声がハモった。
「優衣奈、真面目にやってくれよ」
「これに関してはおおまじだよ、おにぃ」
優衣奈は少し頬を膨らませてきた。
怒ってるぞ。
え、俺怒られるところあったか?
今日はよく俺怒られるな。
「詳しくは省くけど、オキシトシンを分泌するのが大事だと思うの、優衣奈はね」
いつも通り、優衣奈講座が始まる。
「オキシトシンの出し方は簡単だよ。人に親切にすること。他人に対して、優しい言葉をかけることや、親子間、夫婦間の触れ合いによってもオキシトシンは分泌されるよ、だから私が愛情っていうのはおおまじなの」
優衣奈はつらつらとしゃべっている。
有無を言わさぬ雰囲気であり、謎の圧を感じる。
「まとめると、オキシトシンは愛情ホルモン。分泌されると射乳につながるけど、まぁ、おっぱいが出すときにも女性から出るわけだから、おっぱいホルモンと言えなくもないけど」
やっぱりおっぱいに関することかよ。
優衣奈は本当にぶれないな。
「おっぱい」
姫花が顔を赤くして、口を両手で押さえる。
やめーい。
姫花がそんな反応すると、すごく元気になっちゃう。
主に下半身がな。
というか、俺の下半身こんなときでも元気なんだな。
「顔赤いよ、お二人さん、想像するなんてすごくエロいね」
優衣奈は口に手をあてて、うししと笑っている。
「いい機会だから、愛情いっぱいもらいな、おにぃ」
「優衣奈ちゃん!」
姫花が恥ずかしそうに声をあげる。
俺もなんか恥ずかしくなってきた。
「じゃあ、私はこれから乃愛パイを揉みにいくから、姫花さんは私のベッドを使っていいし、あとはごゆっくり」
ばたん。
扉から優衣奈が出ていって、二人きりになる。
「風邪うつるなよ、姫花」
「ううん、私に看病させて、けんちゃん」
姫花の声はえらく必死だった。
「分かった」
姫花が手を当ててきた。
ひんやりと冷たい。
すごく気持ちいい。
それだけなのに心がぽかぽかして、眠くなってきた。
「少し眠るわ」
「うん、お休み、けんちゃん」
※
いつの間にか、俺は眠ってしまっていた。
目を瞑っていると何か感触を感じる。
ぶるんぶるんと顔に何か当たる。
これはあれだ。
おっぱいだ。
「あ」
「きゃっ!」
気が付いたら、俺の手は姫花のおっぱいを揉んでいた。
「もう、ちゃんと元気になってからね」
「はい」
姫花はまるで聖母のように優しく俺に笑いかけてきた。
俺は何も言い返せない。
あのー、俺の下半身はめちゃくちゃ元気になっちゃったんだけどーとかは間違っても言えない。
姫花はそれから両手で俺の手をぎゅっとしてきた。
「けんちゃん元気になってね」
少し涙ぐんでくる。
「これぐらい平気っ、ごほっごほつ」
「無理しちゃダメだよっ」
姫花は涙目になりながら、軽くぎゅーと頬をつねってくる。
こんこん。
ドアからノックが聞こえる。
「失礼しまーす」
乃愛ちゃんが「ぜぇーはぁー、ぜぇーはぁー」としている。
「優衣奈が急にやってくるから何事かと思いましたよ。全くお姉ちゃん、教えてよ」
乃愛ちゃんがなぜかぷんすかとしている。
タオルで覆われた籠を差し出してきた。
「これ、リンゴです」
「ありがと、乃愛ちゃん」
姫花が丁寧に乃愛ちゃんに頭を下げる。
「まったくお兄さんが元気じゃないせいで、ひどい目にあいました」
乃愛ちゃんが呆れたように掌を上に向ける。
「いつもの3倍揉まれましたよ、優衣奈って強がるんだからもう」
乃愛ちゃんが文句を言っていた。
相変わらず、我が妹は素直じゃない。
ストレスを乃愛ちゃんにぶつけていたらしい。
乃愛ちゃんには悪いことをしてしまった。
俺がそんなことを思っていると、乃愛ちゃんがにやりと笑った。
「優衣奈を私によこした罰をお兄さんとお姉ちゃんにこれから与えます、お姉ちゃん。こっち来て」
「えっ! 乃愛ちゃんなになに?」
姫花が俺の部屋の外に連れていかれた。
しゅるしゅる。
ざっ。
ごそごそと変な音がドアから聞こえた。
姫花の着替える音がする。
なんか恥ずかしいなぁ。
それとすごく嫌な予感がする。
「じゃーん、どうでしょう、お兄さん」
「えっ、えっと。恥ずかしいよ、裾短いよ」
俺は姫花を見る。
「ごふっ」
姫花がミニスカートのナース服を着ていた。
「乃愛から聞きましたよ、治療法は愛って」
「いや、あのさ、乃愛ちゃん」
乃愛ちゃんがにひぃーっと笑う。
「乃愛からの選別です、たっぷりお姉ちゃんから愛されてください、お兄さん」
「乃愛ちゃん!」
姫花が恥ずかしそうに叫んだ。
乃愛ちゃんが小さく手をひらひらさせながら、部屋から立ち去る。
姫花が顔を赤くしてうつむいている。
ナース服を着ていて、やはり恥ずかしいのだろう。
「姫花、すごく似合ってるし、かわいすぎるよ」
「私、お粥を作ってくれるね」
姫花はそう言って、立ち上がり、そそくさと部屋を去った。
耳が真っ赤だった。
姫花もたまには恥ずかしがるんだなぁ。
それもそれですっごくかわいい。
数十分後。
姫花は部屋に戻って来る。
おかゆを作ってくれて、持ってきてくれた。
それから、冷たいタオルとたらいも持ってきた。
「けんちゃん、体拭くね」
「わりぃ、助かる」
汗がべったりして、なんか気持ち悪いのである。
俺は服を脱いだ。
姫花は「はっ」と声を出して、口を両手で覆った。
「けんちゃんかっこいい」
「え、いや」
姫花は俺の腹筋を見ていた。
「触ってもいい?」
姫花は首を少しだけかしげる。
「いいけど、別に減るもんじゃないし」
姫花がぺたぺたと触ってくる。
「あ、ごめん、かっこよくてつい!」
姫花が謝って来た。
少し、息も荒くなって、「はぁはぁ」と言っている。
「描いてもいい? あっ、ごめん、体冷えちゃうよね、ごめん」
そう発言した瞬間、姫花はしゅんとした。
まったく、姫花は俺に気を遣い過ぎである。
「いいよ、風邪治ったらいくらでもかけ」
俺はできるだけ優しく姫花に声かけをした。
「うん!」
その後も、頬を染めながら、ときどき腹筋を触ってきた。
そのあと、「あーん」と言われて食べされたりとかして、おかゆを食べたりもした。
俺はひたすら姫花に看病され続けていた。
※
あまり言ってはいけないが、俺はこの日すごく幸せだった。
姫花が彼女でいてくれてありがたすぎること。
姫花の可愛さを実感できたこと。
健康のありがたさを改めて学ぶことができたこと。
姫花のナース服がかわいすぎること。
妹から大切にされている事などなど。
自分にいかに宝物がたくさんあるかを実感できた。
姫花は俺にとって、白衣の天使だった。
いや、女神だった。
どちらも姫花には失礼か。
この日、姫花の愛情をたくさんもらい、オキシトシンが分泌され過ぎたのか気持ちよく眠った。
起きた時にはすごく元気になっていた。
下半身も元気すぎて、俺の理性と本能の戦争は再び始まった。
下半身よ、少しは休んでくれよと思う俺だった。
◆◆◆あとがき、お礼・お願い◆◆◆
最新話までお読みいただきありがとうございます。
今回の姫花ちゃんの看病を堪能していただけましたか?
それと姫花ちゃんのナース服かわいかったですか?
さて、姫花ちゃんに看病されたい
姫花ちゃんのナース服を見たい
優衣奈ちゃん、お兄ちゃんのこと大好きなんだね
と思ってくださいましたら、
♡、☆☆☆とフォローを何卒お願いいたします。
レビューや応援コメントを書いてくださったら読みますし、返信も速やかに致します。
次回の投稿は2月22日6時頃です、
次回はなんと姫花ちゃん、乃愛ちゃんのママが登場します。
やっぱり健太君と姫花はいちゃいちゃしているだけですけど、姫花ちゃんの珍しい側面をまたお見せすることが出来ると思います。
お楽しみに!
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