第14話 笑顔の王国

 王国は、次第に明るく、温かい雰囲気に包まれるようになりました。それは、リクが学んだ「遠慮しない心」を王国の人々が少しずつ実践し始めたからでした。リクが動物たちに助けられたように、今度は王国の人々が互いに手を差し伸べ合い、みんなが遠慮せずに助け合うことで、王国全体が一つになり、笑顔が溢れるようになったのです。


 リクが学んだことの中で、最も大きかったのは「もらうこと」の大切さでした。それを実践することで、王国の人々も変わり始めました。今まで、みんなが遠慮して本当の気持ちを伝え合うことが少なかったのですが、リクの変化を見て、少しずつその壁が取り払われていきました。




 その日、王国の広場で一大イベントが開かれることになりました。リクは王国の民が集まり、共に楽しい時間を過ごせるようにと、心からの願いを込めて準備を進めました。しかし、その準備をしているとき、リクはふと気づきました。彼は以前、「王子として与えること」ばかりを考えていたけれど、今では「みんなと一緒に楽しみ、共に喜びを分かち合うこと」が何よりも大切だと思えるようになっていたのです。


 広場には、王国の人々が次々と集まり始めました。まずは、村からやって来た農夫たちが、新鮮な野菜を手に広場の真ん中に集まりました。それを見て、商人たちが自分たちの品物を並べ、また別の村からやって来た職人たちも、自分の手作りの品を披露しました。みんなが自分の得意なことを持ち寄り、助け合いながらイベントを盛り上げていったのです。


 リクも自分ができることをしようと、広場の中央で小さなステージを設けました。そして、そこで行うイベントは、みんなが一緒に楽しめるものにしようと考えました。王国の子どもたちには、ダンスや歌を教え、大人たちには手作りの小さなゲームを提案しました。それぞれが参加することで、みんなが一緒に笑顔を作り出すことができるようなイベントを目指したのです。


 そして、イベントが始まると、王国の人々はみんな自分の力を惜しみなく発揮しました。農夫たちは新鮮な野菜を使った料理を振る舞い、商人たちは自由に物を交換し合い、職人たちは自分の作品をみんなに見せました。何よりも、リクが一番喜んだのは、みんなが遠慮せずに「ありがとう」と言い合い、受け入れ合い、互いに助け合う姿を見たときでした。


 「ありがとう、王子さま。」あるおばあさんが微笑みながら言いました。「あなたのおかげで、みんなが一緒に楽しめることができて、とても嬉しいです。」


 「いえ、皆さんのおかげです。」リクは優しく答えました。「皆さんが助け合って、共に作り上げてくれたおかげで、この素晴らしい日が実現しました。」


 リクの言葉に、広場のすべての人々がうなずき、喜びの声を上げました。それは、王国が一つになり、皆で力を合わせることができた証でした。遠慮していた心が解け、みんなが笑顔で過ごせることの大切さを、リクは改めて感じました。


 その日、王国の広場は、まさに笑顔で溢れかえっていました。動物たちも参加して、楽しく過ごしました。リクはその光景を見ながら、心から幸せだと感じました。王国がこうして変わっていったのは、リクが「もらうこと」「与えること」のバランスを学び、それを周りに伝えていったからだと気づいていました。


 それ以来、王国では、みんなが遠慮せずに助け合うことが日常の一部となり、王国全体が温かく、明るい雰囲気に包まれるようになりました。王国の人々は、リクが示してくれたように、与えることも大切だが、もらうことを恐れずに受け入れることで、もっと豊かな心を育んでいったのです。


 そして、リクはこれからも、遠慮しない心を持ち続け、みんなが笑顔で過ごせる王国を作り上げていく決意を新たにしました。彼が成長し、学び続ける限り、王国はもっともっと素晴らしい場所になることでしょう。




 リクの心が成長したように、王国の人々もまた成長しました。みんなが助け合い、遠慮せずに「ありがとう」を言い合い、笑顔で過ごすその日々が、王国の未来を明るく照らしていました。リクは、これからも仲間たちと共に歩み続けることでしょう。

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