第5話 最初の冒険
リクは魔法のカバンから教わった「受け取ること」の大切さを少しずつ学んでいましたが、それと同時に、自分の心が変わっていくことに気づき始めていました。そして、カバンから言われた通り、自分の冒険が始まる時が来たのだと感じました。
ある日、リクは王国の北の森から届いた一通の手紙を受け取りました。手紙にはこう書かれていました。
「王子リク様、王国の森に住む動物たちが困っています。どうか、力を貸してください。」
その手紙を持ってきたのは、王国の大臣でした。「王子様、この森に住む動物たちが最近、奇妙な病にかかって困っているとのことです。ぜひ、リク様に助けていただければと思いまして。」
リクはその話を聞いて、すぐに心が動かされました。森に住む動物たちが困っていることを聞いて、彼はどうしても手を差し伸べたくなりました。「わかりました。僕が行って、何とかしてきます。」
そして、リクは魔法のカバンを持って、森へ向かうことを決意しました。
王国の森に足を踏み入れると、緑の木々が生い茂り、鳥のさえずりが聞こえました。しかし、リクが歩いていくうちに、少し異様な雰囲気を感じるようになりました。動物たちの鳴き声は聞こえても、どこか元気がなく、森全体が少し静まり返っているように感じました。
リクが進んでいくと、森の奥でうずくまっている小さなウサギを見つけました。ウサギは元気がなく、立ち上がることができない様子です。
「大丈夫かい?」リクは心配そうに声をかけました。
ウサギはかすかな声で答えました。「王子様…実は、私たち、みんな病気で…食べ物も水も、少しずつ少なくなってきているんです。」
「病気…?」リクは驚きました。「それはどうしてだろう?」
「わかりません。でも、どうしても元気が出ないんです。」ウサギは涙を浮かべて答えました。
その瞬間、リクはカバンのことを思い出しました。カバンなら何か助けになる方法を知っているかもしれないと感じ、カバンを取り出して言いました。「カバン、お願い。どうすればこのウサギを助けられる?」
すると、カバンが軽く揺れながら答えました。「リク、君がこれを受け取る準備ができていれば、カバンは何でも出せる。でも、君が本当に助けたいと思う気持ちが大事なんだよ。」
リクは深く息を吸って、ウサギに向かって言いました。「心配しないで。僕が必ず助けるから。」
その言葉を聞いたウサギは、ほんの少し顔を上げて、希望の光を見つけたように微笑みました。
リクは再びカバンを開けました。「何か助けになるものを出してくれ」と頼みました。すると、カバンの中から透明な瓶に入った青い液体が飛び出してきました。
「これが何か特別な薬なんだね?」リクは疑問に思いました。
「その通りさ」カバンは答えました。「この液体は、疲れきった命を元気にする薬だ。でも、ただ飲ませるだけじゃ意味がない。君の心が相手に届ける気持ちが大事なんだよ。」
リクはその言葉をしっかり胸に刻み、ウサギに薬を飲ませるために膝をつきました。「これを飲んで、元気を取り戻してね。」
ウサギは少し恐る恐る薬を飲み、しばらくすると、驚くほど元気を取り戻しました。「ああ、すごい…!なんだか、体が軽くなったような気がします!」
その様子を見て、リクの胸に温かいものが広がりました。彼はやっと「受け取ること」がただ物をもらうことではなく、相手の気持ちをしっかりと受け止め、それを伝えることで初めて本当の意味を成すことだと感じました。
ウサギを助けたリクは、その後も森の中を歩きながら、次々と困っている動物たちを見つけては薬を与え、力を貸しました。カバンは時々、リクにアドバイスをくれながら、力強くサポートしてくれました。
「リク、君の心が動けば、カバンも動く。相手の痛みを感じてこそ、本当の助けになるんだ。」
リクはその言葉を繰り返し思いながら、ひとつひとつの出会いに心を込めて助け続けました。エゾリスが元気を取り戻し、キツネも足を速くし、さらには小さなフクロウも翼を広げて飛び立つことができるようになったのです。
リクは自分がこの森に来た意味を、心から実感しました。彼の心が変わり、そして「受け取ること」だけではなく、「与えること」にも意味があると学んだ瞬間から、周りの世界がどんどん明るくなっていったのです。
冒険が終わり、リクは森を後にしました。動物たちはすっかり元気を取り戻し、彼に感謝の言葉を何度も繰り返しました。そのたびにリクは、心の中で「ありがとう」と言いました。
「カバン、ありがとう。」リクはカバンに話しかけました。「君のおかげで、僕は初めて本当の意味で誰かを助けることができたんだ。」
カバンは静かに答えました。「リク、君の心が成長したからこそ、できたことだよ。これからも、君がその心を大切にして、周りの人々を助けることができるように、私はいつでもサポートするからね。」
リクは微笑みながら、森を後にしました。彼の心は今まで以上に軽く、明るいもので満たされていました。そして、この冒険が始まりに過ぎないことを、彼はまだ知らなかったのです。
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