リクとカバン ~ありがとうでつなぐ王国の絆~
まさか からだ
第1話 王子リクのひみつ
リクは、王国で誰もが「優しい心の持ち主」と称賛する王子でした。いつも穏やかで、誰に対しても思いやりを忘れない。そんなリクは、人々から慕われていたものの、自分自身には少し自信が持てないようでした。表向きは問題がなさそうに見える彼にも、心の奥には小さな悩みがありました。
その理由は幼少期にさかのぼります。リクは三人兄弟の長男でしたが、弟たちはとても活発で、自分の欲しいものをしっかり主張する性格でした。反対にリクは、兄として「譲ることが正しい」と思い込むようになっていったのです。ある日、リクが家族でピクニックに出かけたときのこと。母親が用意してくれたお菓子の最後のひとつを、弟たちが欲しがりました。そのとき、リクは自然と「ぼくはいいよ」と言って譲ったのです。その姿に母親は笑顔で「リクは本当に優しい子ね」と褒めました。それが、リクにとって「譲ること=良いこと」という思いを深めるきっかけとなりました。
その後、リクは友だちとの遊びでも、自分の意見を押し通すことなく、相手の希望を優先するようになりました。ボール遊びでは「リクがシュートして」と言われても「いいよ、君がやって」と譲り、グループで意見を出し合うときも「ぼくは大丈夫」と遠慮してしまう。それは次第に習慣となり、リク自身も気づかぬうちに、自分の気持ちを後回しにする癖がついていったのです。
そして時が経ち、リクが15歳になる頃、王様からこう告げられます。
「リク、そろそろ次期王としての準備を始めなさい。リーダーとして、王国を導く力を身につけるのだ」
その言葉を聞いたリクの胸には、不安が渦巻きました。「ぼくがリーダーになんてなれるのだろうか?」誰かを導くどころか、自分の意見すら押し通せない自分に、リーダーとしての資質があるとは思えなかったのです。それでも王様の言葉を無視するわけにもいきません。リクはプレッシャーを感じながらも、自分なりに努力しようと決意しました。
しかし、リーダーとして必要な訓練や授業が始まると、リクの遠慮する癖はますます彼を苦しめました。剣術の練習では、「もっと強く攻めろ」と言われても、相手に傷をつけるのを恐れて消極的になり、作戦会議でも「君の考えを聞かせてくれ」と言われて言葉を飲み込んでしまいます。そんなリクに対して、周りの人々は「彼は優しいけど、リーダーとしては弱い」と思い始めるようになりました。
リク自身も、それを痛いほど感じていました。だからこそ、彼はひとりになれる場所を求めるようになります。そしてある日、リクは偶然にも、城の古い倉庫を発見しました。
その倉庫は長い間使われておらず、埃まみれの家具や道具が乱雑に置かれていました。しかし、リクにとってそれは、誰にも邪魔されない特別な場所に感じられました。リクは倉庫の中を探検するうちに、次第に心が落ち着いていくのを感じます。彼はそこでひとり、本を読んだり、昔の王家の道具を眺めたりしながら、自分の気持ちを整理する時間を過ごすようになりました。
そして、そんな倉庫でのひとときが、彼の人生を大きく変える出会いへとつながるのです。
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