第4話 まずは友達から

 ヒバリの決闘から一日が経った。カイは少し痛む体で登校していた。教室に入るとクラスメイトから挨拶をされた。カイは挨拶を返しながら席に向かっていた。


「若夏くん! おはよう!」


 するとカイはヒバリからも挨拶された。


「お、おはよう、ございます」


 ヒバリから挨拶されることは今までにないことだったため、カイは驚いた。カイは少しどもりながら挨拶を返した。


「若夏くん、これ昨日の授業のノート! よかったら使って!」


 ヒバリは昨日カイが保健室にいて受けられなかった分の授業のノートを見せてくれるようだった。


「あ、ありがとうございます!」


「どういたしまして!」


 カイはノートを受け取ると、それを空き時間に写す作業をした。ヒバリのノートは字がとても綺麗で、見やすくまとまっていた。


(ヒバリちゃん、とっても字が綺麗だ……)


 また新しくヒバリの好きなところを発見したカイだった。


 そしてノートを写し終わったカイは、クラスの女子と話しているヒバリの元に向かった。


「ヒバリさん、ノートありがとうございました!」


「いいの、いいの! 困ったことがあったらまた頼ってね」


「はい!」


 ヒバリは笑顔でカイに対応した。カイはヒバリと少しだけでも交流できて嬉しくなっていた。


 それからカイとヒバリは少しずつ交流するようになった。


「おはよう、若夏くん!」


「ヒバリさん、おはようございます!」


 朝や帰りの際に顔を合わせたときには挨拶をするようになった。


「ねぇ、若夏くんって勉強できる方? さっきの魔術入門で聞きたいところがあるんだけど……」


「は、はい! 任せてください!」


 またヒバリが授業のわからなかったところをカイに聞いてくるようになった。


「ありがとう! あたしたちのグループ全員わからなかったみたいでさー」


 ヒバリはカイの横の席に座り、魔術入門のことを聞いた。カイは近づいて来たヒバリにドキドキしながら勉強を教えた。


 それからヒバリとカイは日常会話もするようになった。


「若夏くん、何食べてるのー?」


「朝ご飯のおにぎりです。今日は時間がなくて……」


「そうなんだー、美味しそうだね!」


 他愛もない日常会話だったが、それでもヒバリと話せたことがカイは嬉しかった。カイはヒバリともう友達になれたのでは、と浮かれていた。



          ※



 ヒバリと少し仲良くなれて喜んでいたある日、カイはクラスメイトの男子と昼食を取っていた。すると男子の一人がカイにヒバリとの関係を聞いた。


「カイってさ、ヒバリちゃんと付き合ってんの?」


「いや、付き合ってないけど」


 クラスメイトは最近ヒバリとカイがよく会話しているのを見て、勘違いしたようだった。


「急に仲良く喋るようになったから、なんか進展があったのかと思ったわ」


「まあ、普通に話せるようになっただけでも進展かな」


「そうなんかー」


「てか、カイはヒバリちゃんのどんなところが好きなん?」


「そうだねー」


 クラスメイトに質問されたカイは、ヒバリのどこが好きなのかを改めて考えた。そしてじっくり熟考してからカイは話し始めた。


「最初は一目惚れだったんだけど、教室で楽しそうに話しているところを見て、明るい人だなって思って、それから周りの人も楽しそうなところも好きかな。あと、ポジティブな話題が多くて話してて楽しいし、そういうところも好きかな」


 赤裸々にヒバリの好きなところを語るカイに驚くクラスメイト。


「好きなところを素直に言葉に出来るのすげぇな」


「そうかな?」


「そうだって。普通もっと恥ずかしがって話せなかったり、誤魔化したりするもんだぜ」


 クラスメイトはカイの素直なところに好感を持った。


「あと、字が綺麗なところも好きかな」


「もう何でも好きじゃん」


「そうだね」


 そうしてカイたちは笑いながら昼休みを過ごした。



          ※



 昼休みが終わり、午後の授業が始まりそうだった。授業は魔法薬学で移動教室だった。魔法薬学の教室に移動すると、先生からペアを組むように指示が出た。


 カイはいつも通りハクロとペアを組もうとした。するとカイに話しかけてくる人物がいた。それはヒバリだった。


「若夏くん、一緒にやろうよ!」


「え!? 僕と!?」


 カイは驚きハクロの方を見た。ハクロはそんなカイの様子を見て、すぐに別のクラスメイトとペアを組んでいた。


 そしてハクロはジェスチャーで、ヒバリとペアを組めと言ってきた。それを見たカイはすぐにヒバリの方に向き直った。


「それじゃあ、よろしくお願いします!」


「よろしくね!」


 ペアを組んだカイは緊張のため授業の内容が全く頭に入らなかった。そして薬草をすり潰して魔法薬を作ることになった。


 カイはすり鉢に薬草を入れて、それをすり潰し始めた。良いところをヒバリに見せようと張り切るカイだったが、薬草をすり潰すのに少し苦戦していた。


 そんな様子をヒバリは楽しそうに見守っていた。


「頑張ってー!」


 緊張もしたがそれ以上に、カイはヒバリと一緒に何か出来ることを楽しく思っていた。そして無事に魔法薬が完成した。


 完成した魔法薬は魔力を回復するもので、魔法薬学の基礎的な薬だった。完成して先生から合格を貰えた人から、教室に戻って行った。


 魔法薬を完成させたヒバリとカイは、先生から合格を貰い、一足先に教室へと戻った。その途中カイはヒバリから話しかけられた。


「ねぇ、若夏くん、ちょっと時間いい?」


「は、はい。大丈夫です」


 誰もいない廊下で足を止めるヒバリとカイ。カイは二人きりなことにドキドキしていた。そんな緊張するカイにヒバリは一つの提案を持ちかけた。


「今度の魔術大会に一緒に出ない?」

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