お気づきになりましたか
「王女様・・・」
リムラーは足を止め、叫び出したキアラに振り返った。
キアラの顔は涙の痕と鼻水でぐしょぐしょ。
国内外に轟かせた美貌は、今は見るも無残に変貌を遂げていた。
「どうされました?王女様」
アッカーシー達は、バレス達王族に対して既に口調からして敬意をはらっていないが、リムラーは性分なのか今でもキアラに対して丁寧な口調で接した。
葉巻を咥えたままので、不敬には間違いないが。
「どうしても聞きたいことがあるのよ!お願い、質問に答えて!」
キアラはリムラーに食って掛かる勢いでそう叫ぶ。
「フッ・・・」
泣き晴らした顔で親の仇のように睨みつけてくる美人は中々に迫力があるなと思い、アッカーシーはついフッと鼻で笑う。
「アッカーシー。何がおかしいのですか?」
振り返らずに言った底冷えするような言い方のリムラーの言葉に、アッカーシーは一瞬で真顔に戻る。
「いま、女性が必死の願い事をしているのです。それを笑うなど、紳士とは言えませんよ」
仇敵と言えど女性に対して手荒に扱うべきではない、リムラーは口調だけでなく、態度も紳士のそれを心がけるようにと普段からアッカーシー達に教えていた。
葉巻の煙を説教相手に吹きかけたりするのは紳士らしくはない気はしたが、アッカーシーは余計なことは言わなかった。
「何でしょう。僕でよろしければ、お答え出来る範囲でお答えしますよ」
リムラーは葉巻を一旦口から離して手に持つと、ニコリと笑ってキアラの話を聞く姿勢を見せた。早くこの場を去らねばならないのではなかったのかとアッカーシーは言いたいが、女性に優しくというモットーが勝っているらしい。
リムラーの紳士的な態度に少し安堵したのか、キアラは一呼吸してから口を開いた。
「・・・『エニグマ』は、ショウが浮気をしていないこと、そして私との彼との手紙のやり取りをお兄様は妨害していたことを知っていたのよね?」
「・・・左様です」
キアラの質問を聞いてからリムラーは目を閉じ、少し間を置いてから肯定した。
「それなら、どうしてそれをショウに今まで黙っていたの?」
キアラの二つ目の質問が口から出たとき、一瞬、リムラー達の空気がピシッと固まった。
「アナタたちが報告していれば、こんなことにはならなかったじゃないっ!」
答えが返らぬうちから、キアラは感情的になって叫ぶ。
まるでこうなったのは『エニグマ』の連中のせいだと言わんばかりの迫力だった。
「そういえば・・・」
「そうだよ。どうして・・・」
キアラの質問を聞いていて、同じように疑問に思った王家側の人間が声を漏らす。
そう、『エニグマ』はラルスがやったショウの浮気疑惑工作のことを把握していた。
それならば、彼らが然るべき対応をすれば、キアラが浮気すること・・・いや、そもそも誤解をすることも防ぐことが出来、このような騒動に発展することもなかったのだ。
キアラに問い詰められたリムラー達はしばし黙っていたが、やがてリムラーは口を開いた。
「お気づきになりましたか」と。
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