朝井リョウ『正欲』
「非常に考えさせられた内容だった。」この一言に尽きる。
著者の渾身の書き下ろしであることがビシビシと伝わってきた。引き込まれた。「読者であるあなたはこの話をどう思うか?どう考えるか?」と直接、問いかけられているようだった。
この世にはいろんな人がいる。それは嫌なくらい分かっているつもりだ。多数派から弾かれた少数派はこのような苦しみを抱えて生きてきたのだろう。
それを全て受け入れることはできないし、理解することも不可能だ。それでも、彼らは私たちと同じ現実の中で生きていて。ただ、欲求を覚える対象が違うだけで。特殊性癖を題材としているかと思ったが、実際は違う。「社会」という多数派から圧力に耐えながら生きる人々の物語だったと私は思う。「多様性」という言葉が当たり前になっている現代ですが、それはもしかしすると少数派からするとただの「抑圧」だったのかもしれません。人間は想像力がひどく乏しい。その事実を突きつけられた。社会にとっての正しさは時に暴力となり得るのだと感じた。
特に、冒頭部分の語りが印象的だった。最初はどんな意味なのだろうかと思っていたが、読み終えたあとにまた読むと意味合いが変わる。もちろん、全てを理解したわけではないが、彼なりのメッセージだったのだろうと感じた。
この本はまさに今の時代に読まれるべき作品だ。この本を読んで、再び自分の考えを見つめ直してほしい。
自分の価値観や正しさを人に押し付けてはいないのだろうか。視野の狭さで人を傷つけてはいないのだろうか。今一度、考えてみてほしい。
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