第11話 ダンジョン
ダンジョン。
曰く、それは長年魔力が貯まり続け、ある日突然できるもの。
曰く、それは神が人類に齎した試練。
曰く、それはモンスターが造った人間への罠。
ダンジョンができる原因、意味、謎は今現在、正確にはわかっていないが、魔力が多い場所にできるというのが最有力の説だ。いや、世間一般にはそのように覚えられているが正確には少し違う。
魔物は魔力が多く、魔力濃度が高い場所に突然生まれるのだ。それならば、ダンジョンも魔物と同じように生まれる、魔物のような存在ではないのかと、とある魔物研究家が提唱し、それが最有力の説になったらしい。
「ゴブリンが思ったより少なかった理由がわかったな」
フォレ森に想像していたよりゴブリンがいなかったのは、おそらくダンジョン構成のために周辺の魔力が吸われていたためゴブリンが生まれるほどの魔力が集まらなかったのだ。
「まず間違いなく10級ダンジョンだろうけど……」
ダンジョン強さは周辺の魔物の強さに比例する。ここの魔力は平均より少ないくらいだが、魔力濃度は魔物が生まれるギリギリのラインだ。
魔力の量=魔物が生まれる数、魔力濃度=魔物の強さ。と考えていいだろう……実際には少し違うが。つまり魔力が多く、魔力濃度が高い場所は危険地帯ということだ。
……もちろん例外もある。人が近くに大勢住んでいると、なぜか魔物が生まれなくなるのだ。だが、ダンジョンは発生する。それを利用して、ダンジョン都市という大都市もあるのだ。と言うかダンジョン都市の方が多い。ちなみにダンジョンのモンスターは増え過ぎた際氾濫を起こしダンジョンの外に出てくるのでダンジョン都市では程々にモンスターを間引かなければならない。
閑話休題
簡単にまとめると周辺の魔物が弱い場所にあるダンジョンは同じく弱いということだ。
「どうしようか……」
もちろん入るか入らないかだ。数秒迷い、出した答えは……。
「うーんとりあえず保留だな」
入らないだった。ゲームだったらレベル1でも突っ込んでいただろう。だがここは現実。女神様の加護(ステータス)があるとしても俺はまだ5歳だ。いくら〈見習い剣士〉レベル7と言ってもリーチが短い。ダンジョンでは何が起こるかわからない。体がもう少し成長するまでは、ダンジョンに入らないようにしようと思う。
それとダンジョンがあったし万が一のためにロウ爺に伝えておいた方がいいだろう。まぁ10級ダンジョンだったら放置していても被害なんて起きないが……。ゴブリンが湧いていたのだし9級ダンジョンの可能性もあるけどそれでも起きない。
ダンジョンのことに思考の大部分を占められていたが、割と広い空間に出られたので、マッピングが一気にできた。
これで—
「フォレ森のマッピング完了だ!」
「わふ!」
その日は、湖の周辺でマシロと駆けっこをしたり、マシロを撫でながら湖を眺めたりしていたら、帰還の時間になっていた。
どうやら俺は、この世界に来てからか、この森に初めて来た時からか、アウトドア派になったようだ。いや、ただ家にいてもやることがないので冒険という名の
家に着くまでの道中、フォレ森を踏破したことによる達成感からか、自分の変化を落ち着いて考えることができたのだった。
◯
次の日、いつもと同じようにロウ爺に剣の稽古をつけてもらい終わった後、いつもと同じようにマップを見て気付いた。(ちなみにこの時マシロは丸くなって寝ている。)
「まだリポップしてないか……」
そう、フォレ森の魔力は少ない。俺が倒した6匹が全てだったのか、フォレ森にゴブリンがいなかったのだ。
「うーん」
マップを動かしてみると他のモンスターも俺が毎日フォレ森に通っていたせいか、かなり少ない。いや、かなり少ないと言うかスライム2匹しかいない。
フォレ森は村から見て東側だ。なら他の方角のマッピングを始めるか……?他の方角は全てモンスターのいない平和な平原だ。子供の足で平原全てをマッピングするのは骨が折れるだろう。それに効率も悪い。やるとしても大人になってからやりたい。なら今日から何をしようか……
「うーーーーん」
なんとはなしに、家へと足を運ぶ。
「アロンと遊びながら考えようかな」
アロン。それは弟の名前だ。前世では一人っ子だったので弟が可愛いのだ。いつも夕方前に帰っているのは、両親を心配させないという理由もあるが、アロンと遊びたいという理由の方が大きいかもしれない。
ちなみにアロンの名前は俺と同じように母アリアと父ロレンツォの名前からとっているのだろう。
マップを見てると父は畑に、母とアロンは家にいるようだ。
「ただいま!」
言いながら、家に土足で入る。転生当初は慣れなかったが今なら違和感もない。
「あら、おかえりなさい」
母はアロンを背負いながら、割と広い家を掃除していた。
「今日は早いのね」
「うん!」
今更だが口調は無理して子どもっぽくしているわけではない。割と無意識になってしまうのだ。
「にいちゃあ」
「ただいま、アロン。」
アロンは母の容姿を色濃く受け継ぎ、金髪碧眼だ。将来は平民なのに王子様のような容姿になるだろう。
主観だが、この世界はゲームを元につくられているからか、美男美女が多い気がする。まぁまだ村から1度も出たことがないのでわからないが。
「母さん!俺アロンと遊んでるよ!」
「ええ、わかったわ」
母に括り付けられていたアロンが解放される。アロンの手を繋ぎ、庭に向かう。
「庭で遊んでくる!」
家も広ければ庭も広く畑も広いのだ。アロンを連れて広い庭に出る。庭の木の根元に行き、籠から手のひらサイズのボールを取ってくる。(父さんがくれたボール)
「じゃーアロン、マシロ!いくよ〜」
「うん」
「わふ」
「そーれ」
子どもの肩力とは思えぬほど強い肩で、ボールを遠くに飛ばす。これも女神様の加護(ステータス)のおかげだ。
マシロとアロンが一斉にボールに向かって走り出す。当然と言えば当然だが、マシロの方が速い。
だがアロンも3歳にしては足が速い。マシロがボールを咥えて戻ってくると、アロンも後ろから付いていくる。
「よーし、よしマシロもアロンも偉いな〜」
子どもは褒めて伸ばすものだと思うのでどっちも褒めると、どちらも幸せそうに、ニコニコと笑う。
その後も、サッカーボールのようなボールで遊んだり、キャッチボールなどをしている間に夕飯の時間になっていた。
2人と遊んでいると、やることがなくなってしまった事への悩みも吹き飛び、頭の整理ができた気がする。
俺の今世の人生のモットーはこの世界を思う存分楽しむことだ。
マッピングもレベル上げも楽しくてやっているのだ。効率を追い求めすぎてつまらないのなら本末転倒だ。明日からはロウ爺との修行とこの世界についての勉強をしよう。
「みんな〜ご飯よ〜」
「はーい!」
ご飯の時間だ。異世界の平民のご飯と言えば、硬いパンに小さいベーコンが入った薄味のスープを想像するかもしれないが、全然違う。
まぁ他の家庭を知らないので我が家の生活水準などよくわからないというのが本音だが…この世界は「ジョウキ」を元に作られている。パン、米、麺、前世の日本の料理は一般に浸透しているのだ。ちなみに我が家の晩御飯は大抵お米だ。朝はパン。
家族が全員揃ったところで手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
「わふ」
いただきますという挨拶も当然ある。始めてジャンピングラビットを倒した時からは以前よりも心を込めている。
今晩の献立は、みんな大好き唐揚げだ。口いっぱいにご飯と肉を頬張っていると、父から声をかけられる。
「アランは冒険者になりたいのだったな……」
「……?うん!」
「じゃあ明日ギルドに登録しにいくか?」
「え、いいの?」
「ああ、明日はちょうど10級冒険者試験がある。」
フォレ森を制覇して、暇になったタイミングでのこの提案。まさに渡りに船だった。でも年齢制限とかないのか?ゲームでは15歳から始まり、当然のようにギルドに登録できたのでそこらへんのことがよくわからない。
「魔石も溜まっているだろ?」
「……え」
隠れて森に行ってるのバレた!?な、なぜだ…証拠など何も残していないはず……
「ご、ごめんなさい!……でも、なんで分かったの……?」
「別に叱るつもりはない……俺も子どもの時は親に隠れて森に行っていた。アレンの考えていることなどわかる。」
なるほど……まだまだ両親には勝てないな……
「それに、冒険者ギルドは世界各国にある。女神様が創立した組織だと言われている。登録するなら早いに越したことはない」
え、冒険者ギルドって女神様が建てたのか……?俺の知らないことばかりだな。
「明日の早朝からこの村から一番近い町、リヴァルに向かおう」
「うん!」
明日、俺は人生で初めて町に行くことになる。
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