第9話 初ゴブリン
マシロと検証を始めて3日目。ロウ爺と正午まで訓練をし、午後からは中層に行って俺がマップでモンスターのいる位置まで先導し、マシロにモンスターを倒させるという既に型についた検証方法を試していた。
この3日間で倒したモンスターはスライム11匹、ジャンピングラビット14匹、スモールラット8匹だ。
スモールラットはジャンピングラビットよりも素早いがただ突っ込んでくるだけなので倒し方は変わらない。
俺の予想ではそろそろのはずだが……。
「わっふ」
マシロが普段と同じように猫パンチならぬウルフパンチをしてスモールラットを爪で切り付ける。スモールラットが消えたその時、
「お!きたきた」
脳内に軽快なファンファーレが響いた。
予想はしていたが、マシロが倒したモンスターの経験値で無事に俺のレベルが上がった。おそらく従魔が倒しても人が倒しても同じだけの経験値を共有することができるだろう。これで一番気になっていたことが解決できた。
何故経験値が共有されると予想していたのかと言うと、メタ的な思想だがゲームで経験値が別々だとするとプレイヤーからの苦情が殺到してすぐに修正されるだろうと考えていたからだ。
「よっし!マシロも付き合ってくれてありがとうな!」
「わっふ」
この3日間検証だけをしていたわけではなく、中層のマップ開拓もしていた。俺は今までフォレ森の外周をぐるぐる回り、少しずつ内側に探索範囲を広げていた。マップを見てみれば、フォレ森は円形状になっていて残すところは縁の中心部分。つまり深層だ。
「ゴブリンか……」
ゴブリン……ゲームによって当然強さは違う。あるゲームでは恐ろしい繁殖力で数を増やしていきあっという間に人間の国を滅ぼしたり、またあるゲームでは戦闘経験のない子どもでも1対1なら楽に倒せるほどの弱さだ。
なら「ジョウキ」は?この世界は?当然ゲーム時代とは違いがあるのかもしれないので、父にゴブリンの強さを聞いていた。
父曰く、普通のゴブリンなら人間の子どもほどの身長、腕力で速度に関しては人間の子供よりも遅いらしい。だが群れたら当然脅威になるし、ソルジャーゴブリンなど、似たような容姿で強さが違うゴブリンがいるので見かけたら気を付ける様に言われる。
念の為この世界のゴブリンのことを詳しく聞いたが、「ジョウキ」の9級モンスター、ゴブリンと違いはなかった。
実際ゲームでは推奨レベルは5だがプレイヤーがレベル1の時点でも倒せる。何故ならゴブリンを倒すための推奨SPD《スピード》は10、つまりプレイヤーの初期値だからだ。この推奨ステータスは攻略サイトなどに全モンスター分載っていて、プレイヤー達の血と汗の結晶だ。もう攻略サイトなどは見られないが大体は覚えている。前世の同志達には本当に感謝している。
今の俺は剣士レベル7でゴブリンなどゲーム時代に何千と倒している。負ける通りはない。
俺は今日から深層を探索する。
◯
深層に足を踏み入れたが別に今までとは空気が違うとか、圧があるとかそういうことはない。また少し体感だが木々の密度が上がった程度だ。深層というのもフォレ村の住人がわかりやすくするために作った造語だろう。マシロもピクニック気分で呑気に歩いている。
10分ほど歩き、奴はいた。
身長は俺と同じくらい。肌は緑で腰には汚い腰布を身につけている、無手のゴブリンが1匹、1体?いや、1ゴブか?単位はわからないが1匹にしておこう。
ゴブリンは俺に頭部を見せていて、まだこちらに気づいていない。鼻はあまり良くないのかもしれない。
「…」
不意打ちで頭に攻撃すれば一撃だろうが、これからずっと不意打ちで倒せるわけではない。最初は真正面から戦うことにする。許可を取るために小声でマシロに話しかける。
「俺が1人でやっていいか?」
「わふ」
「ありがとう。俺がヘマしたら援護してほしい」
少し離れたところにいたゴブリンだが、こちらの声が聞こえたのか、偶然振り向いたのかこちらに気付いて走り出した。
思っていたよりも俺は冷静だった。ロウ爺との訓練の成果を今ここで出すべく剣を構える。
「…おそいな」
ゴブリンは遅かった。ジャンピングラビットよりもスモールラットよりも。俺の全速力の半分もないだろう。走り方も不恰好で体の線も細い。
負ける気がしない。
「ハッ!」
相手は素手、こちらは剣。リーチが違う。ジャンピングラビットとは頭の高さが違うが、毎日飽きずに訓練していた剣でゴブリンの頭を正確に捉える。
「グギャッ」
クリティカルヒットだ。生命力が0になりバタンと倒れ、数秒後には光になり魔石だけが残っていた。
ジャンピングラビットを倒す前だったら動揺していたかもしれない。だが、今は違う。俺は俺の正義で魔物を倒すのだ。
「ふぅ…よし!」
「わふ!」
マシロも初ゴブリン討伐を褒めてくれる。
この世界に転生した時は、最初から最後まで1人で冒険をするつもりだったが、今はもう1人には戻れないだろう。
「あと1匹倒したら帰ろうか」
「わっふ」
「次は2人で戦ってみよう」
「わふ」
数分後ゴブリンを発見する。先程と同じようにゆっくりとこちらに走ってくるが、今度は1撃では倒さず、ゴブリンの胴体に1撃を入れる。
「ギャッ」
ゴブリンがノックバックしてよろけたところに、マシロが跳び、爪でゴブリンの顔に三本の傷痕を残す。
「グギャッ」
その一爪でゴブリンの体力はなくなり先程と同じように消える。
「ナイス!」
「わっ」
マシロとハイタッチをして今日の探索を終了する。
深層の範囲は割と狭いし、明後日にはフォレ森のマップが全て埋まるかもしれない。
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