第49話 天使の宣告、悪魔の決断


 ヴィィィィン──────!


 高音が空間を裂くように響き、鼓膜が軋んだ。



 先生は先程と同程度のエネルギーを、ナイフに込めて私に向ける。


「その状態で、もう一度、これに耐えられるかしら?」



 ────耐えられるわけないでしょ!!


 そんなの喰らえば、一瞬で消し炭だ。


 何とかして、先生の気を逸らさないと……。



「ちょっと待って下さい。────昨日、二軒隣の斎藤さんのお家で、子猫が生まれたんです。その子の話を聞きたくないですか?」



 私は時間稼ぎを試みるが──



「────興味ないわね」


 天使の攻撃は私に向けて、容赦なく放たれた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ────ドゴッ!! ゴッ! ゴッ! ゴッ!



 俺はオーラを込めた拳で、森山の顔面を連打した。。

 殴る度に、コイツに内包されていた『天界のエネルギー』が、消失していくのが分かる。



 ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!


 森山の体内から、天界エネルギーが消えるまで殴り終えると、俺は掴んでいた森山の胸ぐらを離し、解放する。


 ────さて、コイツをどうするか……。


 もうエネルギーは無くなったので、取り敢えず、無害化に成功したと言えるが、再び力を蓄えて、襲ってこないとも限らない。



「それに関しては、心配いらないかと……」


 俺が森山の『始末』に悩んでいると、リリスがアドバイスをしてくれる。


「エネルギーを与えられて洗脳されていた『天使の使途』は、与えられた力を使い果たすと、操り人形だった時の記憶は、ごっそりと無くなります。────天界エネルギーがゼロのこの男に、再び力を与えて操るのは効率が悪いので、もう一度力を与えられて、私達に敵対する危険は、限りなく低いと思われます」


「ふむ、そうか────」


 じゃあ、放っておいても良いな。


 現在、俺たちは見知らぬ県の、見知らぬビルの屋上にいる。


 ここにコイツを放置することになるが、まあ、天界の操り人形として、俺達を襲った罰だということにしておこう。



 それよりも、気がかりなのは瑠美だ。


 森山の話では、天使カミーユとやらが、彼女の事を襲う手筈になっているらしい。


 俺の従魔を各個撃破して、俺の力を削いでいく作戦のようだ。



 瑠美はもう襲撃されているかもしれない。


 急いでここから、学校へと戻らなければならない。




 とはいえ、どんなに急いでも、30分以上は時間が掛かってしまうだろう。


 荒涼とした屋上に風が吹き、冷たい空気が肌を刺す。

 俺は瑠美の元へと、今すぐ駆けつけられそうな能力を模索する。


 最初に考えたのは『瞬間移動』だが、これは上手く行かなかった。


 何でもありかのように思われた『オーラ』という力だが、適性や力を操る習熟度で、出来ないこともあるみたいだ。

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