第22話 キャットファイト勃発


 瑠美の攻撃は、ものすごい速さで展開されていた。……にも拘らず──

 俺はその攻撃を目で捕らえ、把握することが出来ている。



 俺って、こんなに動体視力が良かったっけ……?


 思考スピードも速くなっているようで、そんなことを思う余裕すらあった。


 

 瑠美の操る鞭の先端が、俺に向かって一直線に伸びて来た。


 ────でも、このくらいの攻撃なら、掴んで止めることが出来そうだ。



 俺はその攻撃を、手で摘まもうとする。

 だが、その必要すらなくなった。



 

 ────ガキィィイイイイン!!!!!


 なんと、内山さんの腰の辺りからも、瑠美と同じような『黒い鞭』のようなものが伸びて、瑠美の攻撃を防いだのだ。


 最近の女子高生の間では、鞭が流行っているのだろうか────?

 


 いや、これは鞭なのか……?


 鞭にしては、おかしい──

 瑠美と内山さんの背中から伸びている『それ』は、不自然な状態で、空中に静止していた。


 グッ、ググッ────


 お互いの『鞭の様なもの』の先端で、押し合いをしている。



 どうなっているんだ、これは────


 訳が分からない。





「ちょっと、あなたは関係ないでしょ? 私と面太の間に、入ってこないでよ!」


「関係あります! 私は……面太君の『彼女』なんですから!!」



 瑠美と内山さんは、不思議な『鞭の様なもの』での押し合いに留まらず、口喧嘩まで始めてしまった。



 ────どうして、こうなったんだ?


 ……。


 ああ、俺がこの二人と、キスをしたからか……。



 原因は、俺にある。

 何とかして、二人の喧嘩を収めなくてはならない。


 でも、どうすれば────



 俺が途方に暮れていると、この修羅場にいた『もう一人』が、助け舟を出してくれた。


「────面太様、この二人の『尻尾の先端』を摘まんで下さい。それで、場は収まるはずです」


「……しっぽ?」


 この二人の背中から出ている、鞭のようなものか……。


 確かに『尻尾』と言われたら、そう見える。



 しっぽ、か……。

 これは、そういうオシャレアイテムなのだろう。


 けれど、この尻尾……すごく硬そうというか、先が尖っていて刃物のようで怖いんだが……。こんな物騒なものが、女子高生に流行っているのか……?



 正直、近づきたくないというか、触るのは怖い。しかし──

 この状況を作り出してしまったのは、間違いなく俺だ。


 場を収める責任は、俺にある。


 天ノ川さんのアドバイス通りに、俺は押し合っている二人の尻尾の先端に近づいて……その二つを、同時に摘まんだ。


 ギュッ────!!



「────ンキャッ!!」


「────キャウンッ!!」



 俺が尻尾の先端を摘まむと、争っていた二人の少女が、同時に素っ頓狂な声を上げて、床に座り込む。


 ────二人とも、力が急速に抜けたような感じだった。



 争っていた二人が脱力したことで、我が家に平穏が訪れる。

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