第7話
「ま、あたしもこんなこと話すの柊真が初めてだけどね。話し相手ができて嬉しいよ」
斉藤センパイは心から楽しそうにそう言った。なんかこう、気まずい。女子がキャーキャー言うだけあって、センパイは美人だ。見た目だけじゃなくて、なんか雰囲気があるというか。ぜんぜん好きとかじゃないけど、そんな人と二人でこうして話しているとなんかこう……気まずい。
「いつからやってるんですか、こんなこと」
「中一の……二学期からだね。もう二年くらいか」
「え」
思っていたより長い。何でもないことのように口にしたセンパイの顔を、思わずまじまじ見てしまう。
「最初はアレだったけど、何度もやってると慣れるよね。わりと楽しくなってくるっていうか」
「楽しいんですか、アレ」
何もかもが異常な世界に、生理的にヤバさを感じる女の子の姿をした何か。悪夢の類でしかないと思うけど。
「ん、なんか良くない?なんかさ、その……正義の戦士って感じで」
そう言いながら、センパイはすいっと目を逸らした。口元が微妙にニヨニヨしている。
「ああ、世界のために戦う的な?」
「あ、うん。そうそう。そんな感じ」
まあ確かに、日曜日にやってるプリティな戦士的なものはあるかも。センパイ、そういうの好きなんだ。なんか意外。
「そういえばなんかドレス?着てましたね」
「あ、うん。その、どうだった?かな?」
センパイは妙にそわそわしていて、急に幼くなったみたいに見える。どうだった、と聞かれたら、そうだな……。
「なんか、かっこよかったです」
「だよね!?」
センパイがぐっと身を乗り出してきた。くっきりした瞳がキラキラ輝いている。
「やっぱさ、いいよね!変身して一見フリフリしたドレスで可愛い系だけど、戦うと超強いみたいの。いやー、柊真が話が分かる系でよかったー」
たぶんちょっと違うけど、センパイが楽しそうならいいか。おかげでセンパイに対する妙な緊張は解けた。
「アレって自分で選んだんですか?」
「いや?なんかね、決まってるらしい」
「あの姿は君を象ったものだ。自分で選んだとも言えるし、あれ以外の選択肢が無いとも言える」
「だってさ」
メフィがぬるっと会話に入ってきた。今はセンパイの腰掛けている踏み台の影から顔だけ覗かせている。そういう作品にありがちなマスコットキャラ的なものと考えると、メフィの存在も納得……できないな。やっぱり胡散臭い。上機嫌なセンパイは気にしてなさそうだけど、何か裏がありそうだ。
「あの、二年も戦ってるわけじゃないですか」
「うん」
「その、何かないんですか?クリア条件というか」
ああいうのって、長くて一年で終わると思ってた。いや一年はテレビの都合なんだけど、それにしても長すぎるんじゃないだろうか。
「うーん、ちょっとはっきりしないんだよね。メフィ、どうなの?」
「すべては君次第だよ、斉藤凛音。この世界は君の世界でもあるのだから」
「こんな感じでさ。私がどうにかする問題らしい」
「えーっと……」
何か騙されてるんでは。
真っ先にそう思ったけど、メフィの前でそう口にするのも気まずい。それにメフィの言い方だと、斉藤センパイに何か問題があることにならないか?
「それでさ、柊真にちょっとお願いがあるんだけど」
モヤるオレに構わず、センパイが両手を合わせた。
「メフィに聞いたらさ、柊真って半分契約してるみたいなもんなんでしょ?それならさ」
がしっとオレの手を掴み、センパイがぐっと顔を近付けてきた。思わず仰け反るオレに構わず、踏み台から突き落とす勢いで迫ってくる。
「一緒に戦わない?あたしと、二人で」
こうしてオレは、世界を救うために戦う追加戦士に勧誘されたのだった。
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