第4話:都心での地震発生――生存のための第一歩

 東京のような大都市で大地震が発生した場合、どのように行動すれば生存確率を上げられるでしょうか?


 地震の規模や発生時の状況によって被害のパターンは異なりますが、共通して言えるのは 「冷静に動くこと」です。


 都心部では高層ビルが林立し、地下鉄や商業施設が密集しているため、建物の倒壊やガラスの飛散、停電や火災など、多くのリスクが存在します。


 本話では、都心で地震に遭遇した際にどのような危険があるのかを知り、初動で何をすべきかについて解説します。



 1. 都心部特有のリスクとは?


 都市部では、地方とは異なるリスクが存在します。以下のような環境によって、被災後の状況は大きく変わります。


 ① 高層ビルの揺れとガラスの飛散


 耐震構造のビルは倒壊こそしにくいものの、長周期地震動の影響で高層階ほど大きく揺れます。


 この揺れは数分間続くこともあり、オフィス内の家具や機器が転倒しやすくなります。 また何度も襲ってくることもあります。


 また、地震の衝撃で窓ガラスが割れると、ビルの外に破片が落下し、通行人に重大な危険を及ぼします。


 高層ビルに囲まれた場所では、すぐに離れることが難しいため、頭部を保護し、建物の軒下や安全な場所へ素早く移動することが重要です。


 ② 火災の発生と火災旋風


 1923年の関東大震災では、地震発生後の火災が被害を拡大しました。


 特に都心部の木造住宅密集地域では 火災旋風が発生し、多くの人々が逃げ場を失いました。


 現代の都市部でも火災の危険は依然として高いため、避難時には 風向きと火の手を確認し、風下には逃げないことが鉄則です。


 駅や大型商業施設では防火扉やスプリンクラーが作動しますが、煙が充満する可能性があるため、低い姿勢で移動し、できるだけ屋外へ脱出することが望ましいです。


 ③ 地下鉄・地下街のリスク


 地下鉄や地下街は 揺れによる建物倒壊のリスクが低いものの、停電や火災、浸水が発生すると脱出が困難になります。


 地震の揺れを感じたら、

 ✅ ホームにいる場合は柱の近くに移動する(転倒や物の落下を防ぐ)

 ✅ 車内では、手すりをしっかりつかみ、動かず待つ

 ✅ 火災発生時は煙を避けて低姿勢で移動する


 地下鉄の駅は 防火扉や排煙設備を備えているため、むやみにパニックにならず、冷静に状況を判断することが大切です。


 駅員などの指示に従うことが一番安全な判断です。


 ④ 帰宅困難者の問題


 首都直下地震では、約500万人が帰宅困難者になると想定されています。


 駅が閉鎖され、バスやタクシーも運行停止になる中、多くの人が徒歩で帰宅を試みることになります。


 しかし、都心の道路は混雑しやすく、災害時には 歩道も人で溢れ、まともに移動できなくなる可能性があります。


 これに備え、

 ✅ 徒歩で帰宅せず、一時滞在できる場所を探す

 ✅ 会社や商業施設にある防災備蓄を利用する。

 ✅ スニーカーを用意しておく。かさばらない栄養食を常備する。

 ✅ 家族と事前に「安否確認方法」を決めておく(災害用伝言ダイヤル171など)


 を意識しておくことが重要です。



 2. 最初の1時間で生存率を上げる行動


 地震発生直後は 周囲が混乱し、情報が錯綜する時間です。この時、落ち着いて適切な行動をとることで、生存率を大きく高めることができます。


 ① まずは身の安全を確保する


 建物内にいる場合

 ✅ 机の下に隠れ、揺れが収まるまで待つ

 ✅ ガラスや大型家具から離れる

 ✅ ドアを開けて避難ルートを確保する


 屋外にいる場合

 ✅ ビルの近くから少しでも離れる(可能なら広場や公園へ)

 ✅ 落下物がないか頭上を確認し、頭を保護する

 ✅ 電柱や看板のそばには近づかない


 ② ライフラインの確認と準備


 地震後、電気・水道・ガスなどのライフラインが停止する可能性があります。


 特に 通電火災のリスクを防ぐため、ブレーカーを落としておくことが大切です。火災は通電後の発火は思うよりも多いです。


 また、携帯電話の回線が混雑しやすいため、

 ✅ Wi-Fiスポット(00000JAPANなど)の利用

 ✅ SNSやアプリ(Yahoo防災速報、NHKニュース防災)で情報収集

 ✅ 家族との連絡は「災害用伝言ダイヤル171」やLINEの安否確認機能を使用


 を活用すると良いでしょう。


 ③ 避難場所の選択


 都心には、一般には知られていない避難可能な施設も存在します。

 ✅ 防災公園(水やトイレが備蓄されている)

 ✅ 企業や商業施設の一時避難場所(一部のビルは防災協定を結んでいる)

 ✅ 地下鉄駅構内の安全ゾーン(浸水リスクがない場合は一時避難も可)


 こうした場所を事前に把握しておくことで、無駄な移動を減らし、安全を確保できます。



 3. まとめ


 都心で大地震に遭遇した場合、

 ✅ 高層ビルのガラス落下や火災旋風に注意し、安全な場所に移動する

 ✅ 地下鉄や商業施設では駅員の指示を待ち、慌てず行動する

 ✅ 帰宅困難者になった場合は、一時避難できる施設を利用する

 ✅ SNSや防災アプリで正確な情報を得る


 これらの行動が、パニックを防ぎ、生存率を高めるカギとなります。


 次回、第4話では「被災後の72時間、都心でどう生き延びるか?」について詳しく解説します。



 コラム

 災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言板(web171)は、災害の発生により被災地への通信が増加し、つながりにくい状況になった際に、電話やインターネットを利用して被災地の方の安否確認を行う伝言板です。

 災害時のスムーズな安否確認の手段として覚えておいてください。


 ※日頃から、家族・親戚・友人間で安否確認のために伝言を確認し合うための「キーとなる電話番号」を確認しておくことが大切です。


 使い方の動画はこちらです。


 https://www.ntt-east.co.jp/saigai/movie/index.html

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る