22. 彼女の悲しみと嘆き

私は本当にその物語を聞きたいのです。スキャスラン王国の王女が、王軍の先鋒として魔族に立ち向かった物語を。生涯を戦場の将軍として生きた王女の物語を。


普通なら王宮の壁の中で、美しい装飾品に囲まれ、豪華絢爛な宝石で飾られて生きるはずの王家の姫。平和に守られ、皇后か女王になる運命を待ち、王子様が夢を叶えに来るのを待っている。


でも…アエラさんの友人、エステラ・ライトハート王女は違いました。


彼女は生涯を戦場の将軍として生きることを選んだのです。剣を掲げ、民を…そしてもちろん、王国を守るために。美しく豪華な装飾で飾られた壁の中で生きる代わりに、剣を振るうことを選んだのです。なんと優雅で…なんと壮麗なことでしょう。


そして彼女は、私の母と同じ名前…「エステラ」という名前だったのです。


でも結局、これは全て私の空想です。あるいは、想像と呼ぶ方が正確かもしれません。だからこそ、確かめたいのです。アエラさんの友人、エステラ・ライトハート王女は、一体どんな人生を送ったのかを。


私はアエラさんの瞳を、希望に満ちた眼差しで見つめました。壮大で、優雅で、英雄的な物語を聞けるかもしれないという希望を。アエラさんの友人の人生を描き出すような物語を。


私は口を開き、私のお腹を撫でるのに忙しいアエラさんに話しかけました。本当に子供扱いされてる…むむっ!


「アエラさん…」


彼女は私の方を向き、「なあに、エレナ!」と答えました。


「あの…その…アエラさんの友人について聞いてもいいですか?ほら、私の母と同じ名前の人です。」


アエラさんは私の言葉に優しく微笑みました。


「あら…もしかして、私の友達のエステラがどれほど素晴らしいか、気になっているのかしら?でも…ねえ…エレナ…よく聞いてね…」


話の途中で、アエラさんは突然、私の鼻を人差し指で軽くつつきました。からかうような笑みを浮かべて。


「もし私が彼女の話をしたら…あなたは彼女に恋してしまうかもしれないわよ!後で責任取ってなんて言わないでね?」


「そ、そんなことないです!話を聞いただけて恋に落ちるなんてありえません!それにエステラって女性の名前ですよね?それに…」


私は俯きながら続けました。私の次の言葉がアエラさんを悲しませるかもしれないと感じたからです。


「スキャスラン王国はもう滅んでしまったんですよね?もしかしたら…アエラさんの友人はもう…」


アエラさんの顔から笑顔が消え始めました。彼女はわずかに視線を落とし、足元の床をぼんやりと見つめていました。一瞬、アエラさんの笑い声が消えました。


「ふう…」


しばらくして、彼女は深呼吸をし、再び顔を上げました。そして私を見て言いました。


「そうね、エレナ、あなたの言う通り。もしかしたら私の友人は遠くに行ってしまったのかもしれないわ。遠く…私が届かない場所に。少なくとも、今はね。」


悲しみと切望に満ちた表情が、アエラさんの顔に刻まれていました。


「ねえ…エレナ…あなたは私と同じように感じたことがあるかしら?あなたのお母様のことを。深い後悔で押しつぶされそうな気持ち。時間が戻ればいいのにと願うような気持ち。彼女たちの美しい笑顔が輝いていた頃に戻りたいと。私の友人の…そしてあなたのお母様の…顔に…」


それは私にとって、とても辛い質問でした。「ええ…もちろん!」と答えたかった。私も時々、アエラさんが感じていることを感じていたからです。でも、そんな言葉はこの場にふさわしくありませんでした。アエラさんがとても悲しそうに見えている時に。


私は彼女に何と言えばいいのでしょうか?彼女の切望と、その美しい顔に鮮やかに描かれた悲しみを和らげるような言葉は、一体どんな言葉なのでしょうか?


私はしばらくの間、言葉を探してから、ようやく彼女の質問に答えました。


「アエラさん、正直に言うと、私もよく同じように感じます。母と一緒にいた頃に戻りたいと。一緒に走り、笑い、踊り、歌っていた頃に。母が食事の支度を手伝い、一緒に料理を作っていた頃に。夕食のために取っておいたデザートをこっそり食べた私を、母が追いかけてきた頃に。でも、アエラさん…」


私はアエラさんの目を見つめ、できる限り優しい微笑みを浮かべました。それが少しでも、彼女の心の不安を和らげることを願って。そして続けました。


「太陽神殿の大司祭、ダンテ神父様がいつも私にこう言っていました…


『愛する人の死は、とても辛いことです。ええ…そう感じるのは当然のことです。しかし、あまりにも悲しみや苦しみに暮れてはいけません。そのような行いは、私たちを残して逝ってしまった人たちに悲しみと苦しみを与えるだけです。彼らには彼らの居場所があり…私たちには、ここで生きるべき人生があります。だから、エレナ、悲しみに飲み込まれてはいけません。さもなくば、あなたを残して逝ったエステラが苦しみ、悲しみに溺れてしまうでしょう。夜明けの太陽の下で、明るく微笑みなさい。あなたのために…そして、あなたのお母様、エステラのために。』


…それは、私が絶望に沈み始めた時に、ダンテ神父様がいつも言ってくれた言葉です。そう言ってから、ダンテ神父様はいつも優しく私を抱きしめてくれました。私の泣き声と…私の孤独を癒すために。だから、アエラさん…少しだけ、私に近づいてくれませんか?」


アエラさんは少しだけ、私の方に体を傾けました。


「どうしたの?なぜ急にそんなことを言うの、エレナ?まだどこか痛むところがあるの?私の魔法で癒してあげるわ—」


私は彼女の言葉を遮り、お願い、あるいは命令のような言葉を口にしました。優しく彼女に話しかけました。


「アエラさん、もっと近くに来てください…はい…そうです…もっと近くに…捕まえた!」


私はアエラさんを抱きしめました。彼女の肌の柔らかさと、体の香りを感じました。


「エレナ、何をしているの?」


「アエラさんの…えっと…孤独と…心の悲しみを…追い払おうとしているんです。」


「エレナ…私はこんな風に扱われるには、少し年を取りすぎているんじゃないかしら?」


「愛情や優しさを求めるのに、年を取りすぎているなんてことはありません…私の母が、友達を慰める時にいつもそう言っていたんです…だから…しーっ、しーっ、しーっ…」


私は母が昔、私の涙を鎮めてくれたように、優しく彼女の背中を撫で、さすりました。


「エレナ…あなたは…」


アエラさんは何か言いかけましたが、やめました。そして黙って、私に抱きしめさせてくれました。そして…ゆっくりと、彼女の腕が私に回ってきました。強く、強く。


やがて、私の耳元で彼女のすすり泣く声が聞こえてきました。アエラさんの涙が、私の髪を濡らしていました。


「許して…エステラ…許して…お願い…許して…」


後悔と罪悪感に満ちた、彼女の脆い声が、泣き声を通して震えていました。アエラさんは私をさらに強く抱きしめました。彼女の体は…悲しみと…嘆きで震えていました。


この部屋で、そして私の腕の中で、アエラさんは涙と切望に溺れていました。


彼女の悲しみと嘆きの中で…




†********************************†


「読者の皆様、こんにちは…


今回は、私自身から皆様にご挨拶させていただきます。


作者として、今回の章のテーマとタイトルの変更についてお詫び申し上げます。当初は『聖剣の聖女、エステラ・ライトハート』というタイトルで告知しておりましたが、『彼女の悲しみと嘆き』に変更となりました。


理由は簡単です。エレナの視点から執筆していくうちに、突如としてアエラの感情が深く流れ込んでくるのを感じたのです。その結果、この章はアエラの悲しみと嘆きの物語へと変わってしまいました。


実を言うと、この章を書いている間、私は何度か涙を流しました。読者の皆様にも同じ感情を感じていただければ幸いです。


この章を、大切な人を亡くされた方々、今もなお痛みと悲しみに苦しんでいる方々に捧げます。皆様に以前のような笑顔が戻ることを願っています。そして、心の悲しみを和らげてくれる温かい抱擁で包んでくれる人がいることを願っています。


もし、なぜアエラが十代の少女の行動にこれほど心を動かされたのかと問われたなら、答えは簡単です。エレナがアエラを抱きしめ、優しく背中を撫でる仕草が、かつてエステラがアエラを慰めた時と全く同じだったからです。


つまり…


そうです!エレナはアエラの愛する友人、エステラ・ライトハートの娘なのです。


おっと…


ネタバレをし過ぎてしまうといけないので、この辺でやめておきます。それにしても、これは私が今まで書いた中で一番長い後書きです。そして、私の物語を熱心に読んでくださっている全ての読者の皆様に感謝申し上げます。


次回の『聖剣の聖女、エステラ・ライトハート』というタイトルに戻る次回のエピソードでお会いしましょう。」


マタカテラ

(著者)


*読者を楽しませる物語を創作するモチベーションが上がるよう、私の小説を応援してください。お願いします...*

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る