異世界転移民保護係の受付嬢

城間盛平

異世界転移民保護

 またか、とシャノンは小さくため息をついた。目の前には泣きじゃくる少女。少女を保護した農夫と思われる男性は、助けを求めるようにシャノンを見つめた。


 シャノンはもう一度息を吐くと、とびきりの笑顔を顔に貼りつけて言った。


「ようこそ!異世界転移民保護係へ!」


 シャノンの大きな声に、少女はビクリと身体を震わせて前を向いた。とても美しい少女だった。この辺りでは珍しい黒い髪に黒い瞳。見慣れない異国の服。たしか、セイフクといったか。


 顔をあげた少女に安心したのか、農夫の男性は少女に笑顔を向けた。


「嬢ちゃん。このネェちゃんに頼ったら間違えねぇから。じゃ、オラ畑に戻るけぇ」

「転移民の方を保護してくださりありがとうございます。さぁ、貴女もお礼を言って?」


 シャノンは農夫に深々とお辞儀をすると、少女にもうながした。


「あ、ありがとうございました!」


 少女は背筋を正してピョコンとお辞儀をした。素直な少女だ。シャノンはフッと笑みを浮かべた。



「私はシャノン。異世界転移民の保護係をしているわ」

「い、異世界?」


 少女はいぶかるようにシャノンを見た。シャノンは少女の反応にはとんちゃくせず、テキパキと先をうながす。


「ええ。貴女のような人がたまにやって来るの」

「!。私、早く帰らなきゃ!パパもママも、お姉ちゃんも心配してるから!」

「・・・。それは、おいおいね?貴女の名前は?」

「は、はい。私は、狩野亜紀です」

「アキ。綺麗な音ね。アキって呼んでいいかしら?」

「はい」

「じゃあ、私もシャノンって呼んで?」

「はい、シャノンさん」

「さん付けはよして」


 おどけたシャノンの口調に、アキは少し笑った。


 シャノンはアキに異世界転移民の事を教えた。異世界転移民とは、魔法で無理矢理異空間を開けて、呼び出されてしまった異世界人の事だ。


 国や国王など、意図して召喚されたならまだいい。中には巻き込まれ召喚という、やっかいなものに巻き込まれて、こっちの世界に来た者もいるのだ。


 アキはどちらだろうか。若く美しい少女だから、聖女と望まれて召喚されたのかもしれない。


 シャノンはアキに必要書類の記入をうながした。アキは異世界人だが、転移時に補正がかかっているため、この世界の文字をスラスラと書いた。


 自分の住所氏名年齢。家族構成。家族や知人に行方不明者はいないか。


 

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