第13話

舞は父親と駅近くのデパートに来ていた。

日曜日の午後である。

勿論、午前中の渋谷の路上ライブは済ませている。

「たまには買い物もいいだろう」

父親はいつもの白い割烹着ではなく、濃いグレーのシャツに黒色のパンツ姿で、髪は少し整えていて、少し若く見える。

「本当は彼氏と来たいよな。父さんじゃなくて」

「いないからね。父さんで我慢しとく」

舞はサラッと言い退けた。

「で?何が欲しいんだ?言ってただろう。夏のワンピースが欲しいって」

舞の目はブティックに並ぶマネキンが着ているワンピースやブラウスなどに向いている。

「うーん、そうね。私、白いレースのワンピが欲しい」

舞の足が一つのマネキンの前で止まった。

白いレースのワンピースを着ている。

首元が可愛くレースで縁取られて、袖はパフスリーブのデザイン、胸元から切り替えが付いていて可愛い。丈も膝が隠れるぐらいで、ミニではない。裾にも可愛くレースがあしらっていた。

「父さん、私、このワンピが欲しい」

「サイズが合うか着てみろよ」

「うん」

そして舞はワンピを片手に、試着室に入って行った。待つほどもなく、ワンピ姿の舞が出て来る。

「如何?」

いつものロゴTシャツにGパン姿の舞ではなく、可愛い女の子の舞になっていた。

「よく似合うよ。舞」

「じゃあ、私これ買うね」

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