幼馴染みは(多分)転生者
武宮
第1話 幼馴染みと入学式
私の幼馴染み曰く、『高校生とは主役の属性』 らしい。現代が舞台のアニメや漫画なら結構な数の作品の主役は高校生とかなんとか。
『今はコンテンツも増えて会社が舞台だったり、異世界に行ったり転生するにしても大人だったりも増えたけどね。でもやっぱり世の若者の主役属性といえば高校生だよ!』
その時の私は "それアンタの見てるやつがそういう作品ばっかなだけじゃない?" とは思ったけど、それは心に閉まったまま『へー』とだけ返してその発言を流した記憶がある。
さて、そんな感じの事を中学卒業間近の頃から楽しそうに、そして毎日のように語っていた私の幼馴染みこと、
「~♪」
入学式を終えて高校生の証たる制服に身を包み、鼻歌なんて歌いながら時折くるくると回ったりもして私と共に帰路に着いていた。
凄く上機嫌で楽しそうだが、彼女は同世代の中でも低身長な方なのもあって、高校生というよりも中学生なりたての子供にしか見えない振る舞いだ。
「…あゆ、危ないから止めなって」
「車には気を付けてるから大丈夫!」
「いやさっき転び掛けたじゃん」
「その時はまた銀ちゃんが受け止めて!」
はぁ。なんてこれ見よがしにため息をついてもこの幼馴染みはどこ吹く風だ。
前からこれからの高校生活を楽しげに語っていた頃から思ってはいたけど、何がそんなに楽しいのか私にはさっぱり理解できない。
「はいストップ、これ以上はおばさんか先輩に言い付けるからね」
「うおっと…むぅ」
強制的に両肩を掴んでくるくるを停止させると、幼馴染みからの抗議の視線が飛んでくる。
さながらそれはゲームを横から止められた子供そのものだ……これでコイツは自分の事を転生者だと
そう、この幼馴染みこと佐倉歩莉曰く…彼女は前世の記憶を持つ転生者……らしい。この、先ほどから【THE ガチンチョ】 みたいな振る舞いをするコイツが、である。
「…あゆ、アンタ自分の事『転生者だー』って私には言ってるよね」
「そうだね」
「じゃあ聞くけど前世と合わせて何年生きてる?後前世の性別は?」
「少なくとも三十は越えたね!前の性別は男!」
「うわ」
キッツ、とまでは言わなかった自分を褒めたい。
「クーン…」
『うわ』で抑えたものの、それだけでも私がどう感じたのかは伝わったらしい、私の反応を見るや否や、あゆは肩を掴まれたまま少し大人しくなった。
恥ずかしくなる位ならもう少し精神年齢相応に落ち着けば良いものを、と思うんだけど。まあ大人しくなったし結果オーライで良いか。
「全く、見た目は兎も角中身は良い大人の癖にアホらし…」
「…銀ちゃん、人間歳を重ねれば大人になれるなんて間違いだよ。むしろ色々な重責から外れた時こそタガが外れやすくてだね…」
「どんな理由であれ外でクルクル躍りなから帰るのは危ないでしょうが」
「むぅ、マジ正論」
ようやく納得した様子を見せたので彼女の拘束を解放してやる。
全く、もう一人の幼馴染みや他の友達が居ればもう少し普通なのに、私と二人きりになると遠慮がなくなるから困り者だ。
「ほんと、何がそんなに楽しいんだか。こっちは長いお休みが終わってダルさMAXだって言うのに」
「お、銀ちゃんはこれからの生活が憂鬱かい?だったら私が楽しくなる高校生活を想像させて…」
「それはいい、今まで散々聞かされたし。というかアンタの語る高校生活の源って人から聞いたかマンガやアニメじゃん、アテになんない」
私の発言に「痛いところを…」と溢して今度こそ大人しくなるあゆ。
少し言い過ぎたか?とも思ったけど、こっちだって中学から高校に上がった直後なのだ、どうしてもその後の進路を意識してしまうわけで、一度経験した…かはよく知らないが、特殊な事情のあゆと違って未知の将来に不安を感じるのが普通だろう。
「…銀ちゃん、もう銀ちゃん家の前だよ」
「あ、ほんとだ」
なんて、少し考え事をしていたら既に私の家の目の前だった。
やれやれ、今日の子守りはこれで終わりか、部屋に戻ったらゆっくりゲームでもするとしよう。
「じゃあねあゆ。また明日」
「…あ、待って銀ちゃん!」
「…なに?」
なんだと言うのかこのアホ娘は、"今日はもう完全に一人用のゲームの気分だから遊んでやらんぞ" そんな気持ちを込めて幼馴染みに視線を向ける。
すると、彼女はそんな私に対してにこやかに近付いてきた。
「はいこれ」
「なにそれ?…のど飴?」
「うん、中学はお菓子を持ってけなかったからね、これから堂々と持ってけるよ!」
「…今日午前終わりなのにもうお菓子を持ってってどうすんの」
「えー?でも美味しいよ?これ」
なんて言いながら、私の手に個包装された飴を強引に握らせてくる。
「…これ龍角散じゃん、私スースーするのあんま好きじゃないんだけど」
「ブルーベリー味だからそこまでスースーしないし美味しいよ?美味しい物でも食べてれば気も紛れると思うし…それじゃ!」
「あ、ちょっと!」
「じゃあね銀ちゃん!明日からも宜しくね~!」
私が完全に飴を受け取った事を確認するとあゆはダッシュで帰ってしまった。
…正直、あゆの家は私の家から5分掛かるか掛からないかレベルの近所だ。どうしてもこの飴が嫌なら今から追い掛けて突き返すことも出来る。…出来るけど、まあ…
「励ますのに飴玉とか、大阪のおばちゃんかっての」
折角の奇妙な幼馴染みからの贈り物だ、貰ってやるとしよう、返すのもめんどくさいし。そう思った私は封を開けて飴玉を口の中に放り込む。
「…結構旨いかも」
まあ、あんな変で騒がしい奴ではあるけど。それでもアイツが居れば何だかんだ明日からの高校生活も楽しいものになるだろう、すくなくとも退屈はしないか。
私はあゆの言う通りに憂鬱が少し紛れた事を少し癪に感じつつも、玄関を開けて帰宅するのだった。
✳✳✳
まともな小説を初めて書きました。
こういうところに作品を投稿するのも初めてなので至らぬところ等あると思いますが宜しくお願いします。
書き貯めた分を一日一回更新して、ストックが無くなったら一週間に一回更新を目指して頑張りたいと思います。
忘れてたらごめんなさいね
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