第十話
悠斗は、告白を経てさらに複雑な感情に包まれていた。悠斗は自分の気持ちを伝えられた安堵感と、唯菜の答えを待つ不安に揺れていた。
一方、唯菜は悠斗のまっすぐな想いに応えたい気持ちと、自分の立場や将来への不安が交錯していた。
そんな二人の様子は、健人と沙織の目にも明らかだった。
ある日、部活の合間に健人は悠斗を廊下に呼び出した。少し離れた自動販売機の前で、健人は悠斗に向き直る。
「お前、また何か抱え込んでるだろ。」
悠斗は驚いたように健人を見上げた。
「そんなこと…。」
「嘘つけよ。お前の表情見れば一発で分かるっつーの。」
健人の声はいつもより少し低く、真剣だった。悠斗は小さくため息をつき、ポケットに手を入れながら答える。
「先輩に告白したんだ。でも、まだ返事がもらえてなくて…。」
「なるほどな。」
健人は少し考え込むように頷き、それから悠斗の肩を軽く叩いた。
「ま、先輩も迷ってるんだろ。お前がどれだけ本気か、ちゃんと伝わってるかどうか、もう少しアピールしてみたらどうだ?」
「アピール…?」
「そう。お前が本当に大事に思ってるってことを、もっと行動で示せばいいんじゃねえの?」
その言葉に、悠斗はハッとさせられた。言葉だけではなく、自分の気持ちを行動で表すこと。それが、唯菜に安心感を与えるのではないかと思えた。
「ありがとう、健人。なんか、少しだけ気が楽になったよ。」
「おう、応援してるからな。」
健人の励ましに、悠斗は小さく微笑みながら頷いた。
一方、唯菜は沙織に相談を持ちかけていた。部室の片隅で、二人は静かに話し込んでいる。
「沙織ちゃん、どうしよう。悠斗君に返事をしたいんだけど、なんだか勇気が出なくて…。」
唯菜の言葉に、沙織は優しく微笑みながら頷いた。
「唯菜先輩、怖がる必要なんてないですよ。悠斗君、先輩のこと本当に大切に思ってるの、みんな分かってますから。」
「でも、私なんかが悠斗君に釣り合うのかなって思っちゃって。」
「そんなこと考える必要ないです。」
沙織の言葉には迷いがなかった。
「先輩がどう思ってるかを、悠斗君も知りたいと思ってるはずです。先輩の素直な気持ちを伝えるだけで、十分だと思いますよ。」
その言葉に、唯菜は少しだけ心が軽くなった気がした。
「ありがとう、沙織ちゃん。私…頑張ってみる。」
「はい、応援してます!」
沙織の明るい笑顔に、唯菜は背中を押されるような気持ちになった。
その日の帰り道、唯菜は意を決して悠斗を呼び止めた。学校の門を出たところで、彼女は静かに言った。
「悠斗君、少し話があるの。」
悠斗は少し驚いたようだったが、すぐに真剣な表情で頷いた。
「はい、何ですか?」
唯菜は深呼吸をし、静かに言葉を紡ぎ始めた。
「私ね、ずっと迷ってた。でも、やっぱり…悠斗君のことが好き。」
その言葉は、静かな夜の空気に溶け込むように響いた。悠斗の目が大きく見開かれ、次の言葉を待つように唯菜を見つめる。
「だから、私で良ければ…これからも一緒にいてほしい。」
彼女の言葉に、悠斗の胸は一気に高鳴った。二人の間に漂う緊張は、これまでのぎこちなさを一瞬で打ち破ったかのようだった。
ついに、お互いの気持ちを確かめ合う時が訪れた。二人の関係は、新たな一歩を踏み出そうとしていた。
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