犠牲
さしちがえても、ころす。
そんな思いの元、僕はミノタウロスに向かって剣を飛ばしていた。
僕の飛ばした剣がミノタウロスの首を切り裂き───代わりにそのハルバードが僕の体を切断しようとする。
「リールちゃんっ!」
そんな時だった。
僕の前へと唐突にレンが現れたのは。
「は、はぁー?」
それによって、起こると思っていた結果が変化する。
「がふっ!?」
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ……っ」
ハルバードが僕ではなくレンのことを切り裂き、自分が飛ばしていた剣が
「れ、レンッ!?」
想定通りに僕の剣がミノタウロスの首を切り裂き、それを受けて彼が死に絶えて倒れていく───そんなものは、もう既に僕の瞳へと映っていなかった。
僕はただ、地面に倒れたレンへと駆け寄り、もう助からないと一目でわかるような大怪我な彼女の前で膝をつく。
「な、なんでこんなことをっ!?」
意味が分からない。
どうやって。
僕は疑問を思い浮かべながら、彼女の体を抱き上げる。
「よ、……かった」
そんな中で、レンは僕の方へとそのまま手を伸ばしながら、笑顔と共に口を開く。
「レンッ」
そして、その次の瞬間にはレンはその上げていた腕を落とす。
そんなレンの瞳にはもう既に、光は宿っていなかった。
「……クソっ」
レンは、たった今、僕を庇い、僕の前で死んでいった。
今度は、僕が置いて行かれる番、ってか?……ふっざけんな。
「……僕が、死ぬだけでいいのに」
僕が死ねば解決する……ただそれだけで、誰もが余計な、苦しみなんてなくて済むのに。
なんで、こんなことを……。
「……」
やるせない。
そんな気持ちを抱え、僕はレンの亡骸を抱える。
……。
…………どれだけ、そうしていたかはもう忘れた。
「……行かな、きゃ」
その上で、僕は立ち上がる。
もう既に僕も結構な血は流している。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
それによる影響もあり、僕は息を切らして足を引きずりながらも、黒い影の魔物の方へと向かっていった。
この周回に、意味を与えるために。
もう二度、自分の前でレンを殺さぬために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます