4度目の死に戻り
また、死んで戻ってきた。
でも、前回の生には大きな意味があった。鵺と戦い、相手の強さを知った。
そして、あの蜘蛛の姿を見た。
自分のことを身を呈して庇い、命を失っていた……一度は己のことを殺した蜘蛛の姿を。
「……」
「くるくるくる」
何度も経験した死に戻り先。
自分の耳に聞こえてくる蜘蛛の鳴き声。
それに反応して僕は蜘蛛の方に視線を向け、そのまま鑑定のスキルを発動させる。
◆◆◆◆◆
名前:なし
種族:ポイズンスパイダー
レベル:4/10
ランク:E
称号:
攻撃力:19
防御力:14
魔法力:11
俊敏性:18
ハイスキル:
『知性』『超感覚』『猛毒』『麻痺毒』『切断』
スキル:
『自己回復』『蜘蛛の巣』
◆◆◆◆◆
称号とかは特になし、か。
最初、僕は目の前にいる蜘蛛が転生者などではないかと疑っていた。僕と同じように称号とか、謎のスキル。固有スキルなんかがあるのではないかと思っていた。
ただ、思うのはハイスキル『知性』だ。
この知性のスキル……それによって、僕が漁夫の利の為に熊を倒し、結果的にあの蜘蛛を助けた時のことを恩だと感じたのではないだろうか?
だから……初めて僕のことを殺したこの蜘蛛は、今、自分の敵ではない。
「……君は」
間違いなく、あの場において、目の前の蜘蛛は僕の味方をしていた。
いや、そうじゃない。
僕がここで目覚めてから、一度も蜘蛛は僕の敵となっていない。ずっと、僕の味方で居続けていた。
「くるくるくる」
「ストップ」
前のように自分へと背を向け、何処かへと行ってしまおうとする蜘蛛のことを僕は自分の肉球で止める。
「くる?」
「なぁ、話があるんだ」
僕の言葉は、きっと種族の違う蜘蛛には通じていないだろう。
それでも、僕はこの蜘蛛の知性を信じ、身振り手振りで自分の伝えたいことを伝えていった。
■■■■■
全て伝わった。
そう信じることにした。それ以外、僕にできるようなことは何も出来なかったから。
「行くよ」
「くるくるくる」
そんな僕は蜘蛛と共に、大木から降りていく。
「行ける?」
「くるー」
「よし、じゃあ、行くぞー!」
「くるーッ!!」
大木から降り、ある作業を終えたところで僕と蜘蛛は走り出す。
鵺と会った方向とは真逆に全力疾走だ。
最善はこのまま、鵺に会うことなく逃亡し切ることだ。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!」
だが、そうは問屋が卸してくれなかった。
走っている自分たちの後ろの地面が盛り上がり、そこから鵺が現れる。
最悪の敵、鵺だ。
「お願い!」
「くるーっ!」
全力疾走で追いかけ、こちらとの距離をグングンと詰めてくる鵺。
それに対し、蜘蛛が糸を吐き、トラップを作ることで対抗する。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!?」
鵺は自分たちの希望的観測に応え、糸に絡まって悲鳴をあげている。
「……ッ!」
だが、鵺が希望的観測に答えたのは一瞬で、直ぐに拘束から抜け出してしまう。
まぁ、あれで終わってくれるわけもないよね。
「さぁ!決死の逃亡劇を始めようか!」
「くるー!」
二人で協力したところで、勝てるはずもない。
ただ、全力逃亡ならその限りでは無いはず。
その可能性を信じ、僕は蜘蛛と共に動き出した。
■■■■■
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