第11話 源ちゃんのお悩み?
「――ねえ、
「…………え?」
それから、二週間ほど経て。
柔らかな風が
ところで……二週間とは言ったものの、それはあくまで私の体感――この世界においては、例の如く
まあ、その辺りの不服は
「……その、
すると、ややあって逡巡の窺える口調で答える源ちゃん。妻というのは、左大臣の姫君たる
「……なるほど」
そう、ポツリと呟く。別段、驚くことじゃない。むしろ、本作通りと言っていい。……まあ、言わば政略結婚だしね。すんなり上手くいく方が珍しいだろう。お
「……心配ないよ、源ちゃん。今は、少し心の距離があるかもしれないけど……でも、いつかちゃんと想い合える日が来るから。だから、これからも辛抱強く彼女のことを見ていてあげてほしいな」
「……女御、さま……」
御簾越しに、ポツリとそんな呟きが届く。きっと思いも寄らず、また俄には信じ難い返答だったことだろう。
だけど、私としてはただ希望的観測を述べているつもりもなく。繰り返しになるけど、お世辞にも二人は上手くいっているとは言い難い。
だけど……私の記憶だと、彼女の――葵の上の懐妊を機に、彼女に対する源ちゃんの愛情は確かなものになっていったはず。悲しいことに、彼女は彼の愛人――
あ、ちなみにこの何とも恐ろしい話の経緯だけど……こう、六条さんの生霊が彼女へ乗り移って、こう……うん、やっぱり止めよ。なんか、馬鹿みたいな説明になりそうだし。
ともあれ、そういうわけで――もし、あのまま葵の上が生きていたら……ん、そういうことなら――
「……ねえ、源ちゃん。一応、聞いておきたいんだけどさ……今、
「…………へっ?」
……うん、この聞き方で良かったのだろうか。……いや、それ以前に
だけど、私とて何も好奇心でこんな野暮な詮索をしているわけではない。これでも、私なりに彼のためを想ってのこと。返答次第では、事前に何かしら手を打てる可能性もあ――
「……えっと、その、少々申し上げづらいのですが……その、最近、六条さまのお所へ――」
…………うん、遅かったか。
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