時空を超えて
ゆき
第1話 目覚めたら、無かったはずの物が部屋に出現していた
六畳くらいの畳の部屋で、箪笥、机と椅子、本棚がある。
本棚には沢山の本が並んでいる。
ジャンルは様々で、子供向けの本が多い。
ここは私の部屋だ。
部屋の隅には段ボール箱がいくつも置いてあって、荷造りの途中。
引っ越しの予定があり、持って行く物と捨てる物を分けているところ。
「この本は捨てないで。全部持って行きたいから」
両親に向かって、私はそう言った。
自分で本棚から本を取り出して、少しずつ丁寧に段ボール箱に詰め始める。
かなり大量の本だけど、これは絶対に要る物だから。
目が覚めた。
ここは・・・アパートの一室で、私の部屋。
さっきのは夢?
めちゃくちゃリアルだったけど。
夢の中での私は、小学校高学年くらいだった。
夢で見た部屋も、確かに私がその頃住んでいた部屋だった。
子供の頃には親の転勤があって、何度か引っ越しがあった。
その記憶が蘇って夢に出てきたのかな。
夢の中では、その時の自分の年齢で考えて話してる感じだったけど。
今の私は、もうすぐ45歳になる。
職場はショッピングモールで、勤続年数は6年数ヶ月。
このアパートに住み始めたのも、ちょうどその頃から。
20歳の時に一度結婚したけれど長くは続かなかった。
離婚後は息子を連れて田舎に帰り、近くで色々なバイトをしながら子育てに忙しかった。
両親が居てくれたから助かったけど。
息子が高校を卒業して就職した数年前、それをきっかけに私も街に出て仕事を探し一人暮らしを始めた。
今の日常には、そこそこ満足している。
だけど、たまに過去を振り返った時、思うことがあった。
もしあの時、違う選択をしていたら、全く違う人生だったのかもしれない。
別に今が不満だとか、過去の選択を後悔しているとかでは無いけど。
今とは違う世界線というのか・・・そんなものを見てみたい好奇心は常にあった。
さっきの夢は随分リアルだったし、あの年齢の自分としてそこに居た感じだったけど・・・
それでも夢は夢で、現実は、この部屋に住んでいる今の年齢の私・・・だよね?
何だか一瞬、どっちが夢だか分からないような感覚になっていた。
ベッドの上で体を起こして、大きく伸びをする。
時計を見るとまだ朝の7時だ。
今日は休みだから、別に早く起きなくていい。
寝ていても差し支えない時間だけど・・・天気もいいし、せっかくの休みを寝て過ごすのももったいないから起きるか。
私は立ち上がって布団を軽く整え、着替えをしようとクローゼットの方を向いた。
そしてそこで、衝撃的な光景を見た。
え?!こんなに本がいっぱいあったっけ?
絶対に無かった。
壁いっぱいに並べられた本棚には、本がぎっしりと詰まっている。
大体ここには、本棚すら無かったはず。
ミニマリストを目指している私は、持ち物はかなり少ない。
本を読みたければ電子書籍で読むし、紙の本なんてほとんど持っていない。
もう一度、ゆっくりと部屋の中を見渡してみる。
間違いなく私の住んでいるアパートの一室だ。
ドアや窓の位置も、ベッドや棚の位置も、布団も、カーテンやカーペットの色も、普段見慣れたものに違いない。
ただ、空いていた壁面全部に本棚が設置されていて、本がぎっしり詰まっている。
そこだけが違う。
昨日寝る前には、絶対にこんなものは無かった。
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