女神をギャン泣きさせてゴブリンに転生させられた俺、なぜか死ぬたびにスキルをもらい、1時間前に死ぬに戻るという好待遇を受ける。どうやら神々のよからぬ陰謀に巻き込まれてしまったらしい
かなきち
第1話 初めまして、ゴブリンです
緑色の肌に、痩せこけた手足。
茶色の水たまりに映るのは、醜悪で、極悪なシワだらけの顔。
体躯は……ああ、これも酷い。異世界換算で100センチもない。
――やっちまった。
後悔とはまさに後にたたないものだ。超、実感。
俺はこの生物を良く知っている。
前世で傭兵をやっていたとき、駆け出しの時によくお世話になったものだ。
数こそ多いが、1体1体はまさに雑魚で、やつらの卑怯極まる手練手管に注意しておけば、何て事もない相手だった。
まさか、この俺がそんな生き物に転生してしまうとは。
――ゴブリン。
そう、まさに俺が転生したのは雑魚オブ雑魚魔物のゴブリンだったのだ。
(……なんでこうなった?)
いや、嘘だ。
立派に被害者面しようと身に覚えはたんまりとある。
話は生まれる前に遡る。
傭兵をやっていた俺は聖女の手酷い裏切りによって死んだ。
死んだ人間はどうなるか。
俺の場合は、白い白い部屋に通され、そこで女神に謁見を賜った。
なぜ、知ってるか? 二回目だからだ。
前々世でDQNの喧嘩に巻き込まれて死んだときも、この白い白い部屋に通され、女神に謁見を賜った。確か「転生の間」とか言ったかな。
前々世の俺は、現代日本をつつがなく生きる、ただの高校生だった。
そうして異世界に転生した俺はなんやかんやで傭兵団を率いるまでになり、聖女の裏切りによってその生涯を閉じたわけだ。享年35才だった。
女神は俺にまたしても転生を勧めてきた。
俺は、快諾しなかった。前世に未練があったからだ。
俺は聖女の裏切りの理由を知りたかったし、理由次第では報復もしたかった。
だが、俺がいくら熱弁を振るおうと、女神はついぞ首を縦に振ることはなかった。
復讐は何も産まない、すべてを忘れて来世を謳歌した方が良い。
……などなど、どっかで聞いたような正論ばかりを並べってきやがった。
ちなみに、素直に転生に応じていた場合は、どっかの王侯貴族の4男坊に転生し、何不自由なく生涯を過ごすことができたらしい。
もっとも、後の祭りだ。
女神の正論に苛立ちを募らせていった俺はついにぶち切れた。
――来世より先に今を救わない神に何の価値があるんだ!
俺は仲間の死により生前より女神に不満を持っていた。
埒の明かぬ女神にぶち切れ、今になってそれを噴出する形となった。
ミルテ、マチルダ、ゴッホ……。
怒りの濁流に乗って懐かしい顔がまぶたに浮かんだ。
ミルテは流れ矢を受けて死んだ。まだ14の小娘だった。
マチルダは飛竜に食い散らかされた。遺品は、彼女の左目だけだった。
ゴッツは情けを掛けた敵兵に殺された。先月、子供が生まれたばかりだった。
3人は敬虔な女神教の信徒だった。
ミルテは女神の教えに一ミリも背くことなく生き、マチルダは女神の敵を喜々として葬り、ゴッツは私財を投じて女神教の教会や神殿をいくつも建築した。
人生を賭けて女神に尽くしていたはずだ。……なのに!
ミルテの不運を見過ごし、マチルダを飛竜の餌にし、ゴッツの良心をあざ笑った。
生前の行いにより、彼らの死後は安泰だと女神はほざくが……到底、許せるものではない。
ミルテも、マチルダも、ゴッホも、まだまだ生きたかったはずだ。
彼らを生き返らせろ! もしくは時を戻してすべてをなかったことにしろ!
俺は、女神を感情のまま怒鳴りつけた。
……それが、不味かった。
「わだじだって、がれら、殺じだがったわけじゃ、なっ、い! 生ぎででほじがった! 死んでほじくながっ、た! でも、でもっ! 運命は変えられなくて――」
女神、ギャン泣きである。
とんでもなく可愛い女神の顔が悲しみに歪む様に、首を括りたくなるほどの罪悪感が襲ってきて、俺の怒りはどこかに消し飛んだ。
「わっ、悪かった……」
俺は間違っていないはずなのだが、つい謝ってしまう。
まあ迂闊だった、とは思う。
女神にも何か事情があったのかも知れないのに、それを知らずに、それを聞くこともせずに、頭ごなしに怒鳴りつけてしまったのだから。
「わがりまじたっ! あなだの願いはぎぎどどけます!」
「え、いや、ちょっと待て――」
果てしなく嫌な予感がした。
感情的になった女ほどろくなことをしない。前世の知識、いや経験則だ。
よもやよもやそれが女神にまで当てはまるとは夢にも思わなかったが。
「冷静に、冷静になろう!」
「あなだはがっでにふくじゅうでもなんでもずればいい! ただし――」
「悪かった! 謝るから!」
「――でぎるものならね!」
こうして、俺はゴブリンに転生させられたわけだ。
「どうすりゃ良いんだ……」
聖女が裏切った理由を調べたくとも、ゴブリンではどうしようもない。
そもそも街に入れない。門番に殺されるわ。
街に忍び込んだところで誰がゴブリンに協力してくれるものか。
貧しい家柄でもせめて人間だったらやりようがあるのだが……。
完全に詰んでるわ。
周りを見るとお仲間のゴブリンが、ひぃ、ふぅ、みぃ……、と4匹、俺を含めるとたった5匹の群らしい。
その4匹がしゃがみ込み、頭を突き合わせて何しているのか、と後ろから覗いてみると、……ひぃ! ゴブリン喰ってる!! 共食い!? しかも生で。最悪だ。
こんな連中とはお付き合いしたくない! こんな巣穴、さっさとおさらばしよう。
なに、俺の前世は傭兵だ。野で生きる術は知り尽くしているつもりだ。
ゴブリン喰うくらいだったら、野生動物でも捕って食べた方が何倍もましだ。
巣穴を出ると、緑豊かな景観が俺を出迎えた。
どうやら巣は森と隣接する山の斜面に出来た洞穴を有効活用したものらしい。
これなら野生動物が取れなくとも木の実で腹を満たすことが出来る。
意気揚々と森の中を進み――、
――は?
気づいたら俺はまたあの白い空間にいた。
「――は?」
目を赤く腫らした女神と目が合う。
今さらだが、とんでもない美人である。前々世の基準で例えるなら、体はグラビアモデル、顔は超人気アイドル、声は某有名声優と非の打ち所がない。
その上、上質な生地で作られた水色のドレスに、色とりどりの宝石をちりばめたティアラを身につけた、その姿は――転生2回目の俺でも例える言葉を知らない。
敢えて言うなら「女神」。まさにその言葉が一番しっくりくる。
「なんで?」
いや、こっちのセリフですがな。
「なんでもう死んでるの?」
「は? 死んだ?」
「5分しか経ってないわよ?」
ち~ん、とハンカチで鼻をかみながら言ってくる。
「俺、死んだ?」
とんと理解が追いつかず思わず片言で問い返してしまう。
「死んだわよ」
ぴこぉん、と空間に映像が浮かび上がる。
森の中をとぼとぼと歩くゴブリンが、次の瞬間、真横から来た何かに足を掠われ、空中で1回転半して地面に頭を打ち付け、それっきり動かなくなった。
「……俺?」
「面白みのない死に様ですね。血が一滴も流れていない」
「え、え~……」
俺のゴブリン生がたった五分で終わってしまった瞬間だった。
「まあいいですわ」
と、女神はどこからか一抱えもある……サイコロ? を取り出した。
「振ります?」
「え? え? なに?」
「初回ですからわたしが振りますね。何が出るかな♪ 何が出るかな~♪」
どっかで聞いたことのあるような歌を口ずさみながら女神はサイコロを放り投げる。サイコロは何度か転がった後、とある面を上にして止まった。
女神はその面を俺に見えるようにしてサイコロを拾い上げた。
「『ステータスup』! 略して『ステータスup』!」
略されてねーよ、とツッコむ余裕もない。
「次はダーツです」
「ダーツ?」
どこに、と俺が問う間もなく、丸い板状の物体が空から舞い降りた。
ダーツと聞いていたからか、見間違うことなくダーツの的に見えた。
ダーツは赤やら青やら黄色やらで何十等分にもカラフルに色分けされ、それぞれの色に「すばやさ+3」やら「かしこさ+5」やらの文字が書かれていた。
「投げます?」
「いやいや、まずは仕組みを説明してくれ」
「面倒ですねぇ~」
心底、面倒そうに言われた。
「ダーツを投げます。当たった所のスキルをプレゼントします。以上です。質問は?」
「俺、もう死んでるんですけど?」
「大丈夫です。何度でも生き返らせますから」
「――はぃ?」
「投げないならわたしが投げますね」
「ちょ――」
止める間もない。女神がダーツの矢を構えると、ダーツの的がくるくると回転を始めた。それに「やぁ~」と可愛らしいかけ声で女神がダーツの矢を投げる。
ダーツの矢は的の隅っこに刺さった。
「何が出たかな~?」
的は回転を止め、女神がダーツの矢を確かめに小走りで近づき、
「【すばやさ+2】……残念~♪」
さも楽しそうに言われた。
本来なら不謹慎だと怒るべきなのだろう。しかし俺の頭は状況理解に精一杯でツッコミを入れる余裕さえなかった。
「次はちゃんと惨たらしく死んでくださいね~♪」
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新作、始めました。楽しんでいただけたのなら幸いです。
転生、死に戻り、と設定が大混雑しているような小説ですが、10万文字以上は書き続けたいと思います。
つきましてはフォロワー&☆☆☆の評価をお願いします。
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