悪役令嬢シルフィー・ド・バージリアンにこれ以上の贖罪は必要ない

@mochi_kona

ダニー編

謎の少女-①

 手の中に赤く光る魔石を一つ持って、冒険者ギルドの門をくぐった。テーブルに座っている同僚に声をかけられる。

「おうダニー。ドラグーンの討伐依頼はどうなった?その様子じゃずいぶん楽勝だったみたいだが」

「弱ってたんだよ。ちょっと胸が痛んだくらいだが……話は後でいいか。先にギルドに報告したいんだよ」

「どうせもう暫く時間がかかるぞ」

 同僚が親指で受付カウンターの方を指した。

 受付の前で少女が騒いでいる。

 少女は膝が出る丈の短いズボン、どこにでもあるような麻のシャツに顔を隠すようなフード付きのケープを羽織っていて、顔の横から金色の髪がはみ出しているのが見える。背丈は自分の腰の上ほど。高くも低くもない声できゃんきゃんと受付嬢と騒いでいる。

「だから!私は討伐依頼を受けるためにここに来たんだって言ってるのに!どうして受けちゃいけないって言うの!?」

「だから基本的に討伐依頼を受けられるのはEランク以上の人だけなんです!ボードにある依頼をここに持ってくる!ハンコを押せば依頼の受領は完了!Fのボードに討伐依頼がないんなら依頼はもちろん受けられません!」

「うぬぬ……!」

「…完了報告いいか?」

「あっダニーさん!言ってくださいよ!討伐はEからなんですって!」

「……」

 少女はフードの中でむくれている。

「……お嬢さん、魔物と戦いたいのかい」

「そうよ」

「……『依頼』がEからなだけで、戦うだけなら、別にその辺にいくらでもスライムだのゴブリンだのがうようよしてるぞ」

「……へえ!」

 少女はころっと態度を変えた。

「そうなの。それじゃあ貴方には悪いことをしたわ。このギルドカードがあれば城門の外に出られるのね?外に出たら魔物と戦っていいのね?」

「……え、ええもちろん。しかしFランクの方は基本的に、実力以上の相手とは戦わないようにと……」

「……どっちなの」

「え、ええと……」

「……まずは実力をつけろって事だよ、お嬢さん」

  声をかける。少女はこちらを見上げている。

「スライム程度なら子供でも勝てるんだから。まずはその辺と戦って、実力をつけるまでは危ないところには出向くなってことだよ。わかったか?」

「…わかったわ」

「えっああちょっとまだ説明が……シルフィーさん…シルフィーさ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!」

 あの少女はシルフィーという名前らしい。早々にギルドのカウンタードアを完全に押して開けてどっかに行ってしまった。受付嬢は腕を伸ばしたまま固まっている。

「……そんなに気にするほどか?」

「だって心配になりませんか!?」

 

「なんかあの子あのまま森の中だの洞窟の中だのダンジョンの中だの突っ走っていきそうじゃないですか!?Fランクなのに!さっき登録したばっかりの女の子なのに!」

「……」

 Fランクは、まあそりゃあ、死ぬ時は死んでしまうが。

「ダニーさんちょっと様子見てきてくださいよ。私心配で。お小遣いあげますから」

「…そんな金で動くような男じゃねえよ」

「冷血漢ーーーーッ!!!!」

「これドラグーンの魔石。換金しといてくれ」

 自分で行きます。

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