異世界ダンジョン管理者 ~現代知識で築く新たな楽園~
日向
第1話.目覚めた先は異界の森
暗闇の中、ふと目を覚ました。
身体中を冷たい汗が流れ、息が荒くなっている。
見慣れない天井、かすかに鼻を突く草と土の匂い。
それに、耳元で微かに響く木々のざわめきと鳥のさえずり。
「ここは…… どこなんだ?」
記憶を辿ろうとするが、肝心な部分が霧のようにぼやけている。
唯一覚えているのは、会社での単調な日々と、電車の窓から見た夕暮れの景色だ。
それが最後の記憶だった。
ふと身体を起こすと、そこは森の中だった。
高くそびえる木々が天を覆い、隙間から差し込む陽光が地面に模様を描いている。
「どういうことだ……?」
そのとき、耳元で低い声が響いた。
「ようこそ、異界の旅人よ」
「!?」
慌てて声の方を振り向くと、そこには一人の男が立っていた。
青白い髪を肩まで伸ばし、目は深い紫色をしている。
背後には巨大な黒い翼が広がり、周囲の空気すら歪めているかのような威圧感が漂っていた。
「お前、誰だ!?」
「私はこの地の管理者―― そうだな、君たちの言葉で言えば‘魔王’と呼ばれる存在だ」
「魔王……? ふざけてるのか?」
「ふざけているように見えるかね?」
冷たい視線を投げかけられ、言葉を失った。
威圧感がさらに増し、冗談で言っているわけではないことが伝わってくる。
「なぜ俺をここに?」
「簡単な話だ。 君はある事情でこちらの世界に召喚された。 そして、この地に存在する‘ダンジョン’を管理し、発展させる役割を担うことになる」
「ダンジョン? それってゲームとかで出てくる…… あれか?」
「そうだ。 しかし、これはただの迷宮ではない。 この世界を支える重要な基盤だ。君にはその一つを任せよう」
「待て待て! なんで俺なんだよ? 他に適任がいるだろ?」
「それは君の特性が、この役目に適しているからだ」
「特性って、俺に何の才能があるって言うんだ?」
「君はかつての世界で、物事を冷静に分析し、効率的に進めることに長けていただろう。 それに、この世界においても潜在的な力を秘めている。 その力は未熟だが、成長すればこの地を変えることもできる」
「……まるで何かの主人公みたいな言い方だな」
「その自覚を持つことだ。 君の存在は、この地において特別な意味を持つのだからな」
深く考える間もなく、魔王は手を掲げた。
「まあ、説明はこれくらいにしよう。 詳しいことは現地で理解すればいい。 さあ、これを受け取れ」
彼の手元に紫色の宝石が浮かび上がった。
それは鈍い光を放ちながらゆっくりと回転している。
「これは……?」
「ダンジョンコアだ。 君が管理する拠点そのものと言っていい。 これを使って、自分のダンジョンを作り上げるのだ」
「急に言われても…… どうしろってんだよ?」
「心配はいらない。 君には自由がある。 この世界でどう生きるかは、君次第だ」
そう言い残し、魔王の姿は霧のように消えていった。
手元に残ったのは、先ほどの紫色の宝石だけだった。
「どうしろって言うんだよ、これ……」
呟いたところで、答えが返ってくるわけでもない。
しかし、この世界で生き抜くためには、与えられた役割を果たすしかないようだった。
「……まずは、やってみるしかないか」
かすかに胸の奥で湧き上がる不安を押し殺し、僕は一歩を踏み出した。
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