世捨て人


「あー、バイク早く戻って来ないかなー」


 朝日が部屋を照らし、ベッドに寝ていた裸の男はその独り言に目が覚め、素早く起き軍服を着る。


 窓を眺めタバコをふかしていた彼は、何故か顔を伏せる兵士に声を掛ける。


「おはようさん、もう行く?」

「はい、巡回があるので。ゆうべは……あの、ありがとうございました」

「隊長は今日来る?」

「契約が今日までなので、十四時に到着する予定です」

「そう。もう少ししたら君たちの所に行く」

「分かりました。隊員に伝えます」


 兵士はそそくさと下に降りていく。


 他の隊員はすでに起床し、乾燥したソーセージと黒パンを口にしている。

 朝食を共にし、庭先に立つ夜間巡回していた仲間の兵士と話をする。


「おはよう。交代する」

「で、どうだった?彼は」

「あ、ああ……。びっくりした」

「びっくり?」

「最初見た時は、いや、やっぱ男だし無理だと思ってたんだが……」

「良かっただろ?」

「そうなんだよ。女みたいな顔立ちだとは思ってはいたが、なんていうか、体臭か香水なのか、あの爽やかだけどムラっとする匂い?、女みたいに柔らかく艶やかな体の感触。催眠にかかるように体が……むぐっ」

「わかるわかる。食いながら話すな。何もそんなに詳しく話さなくていい」

「まあ、とにかくそういうわけだ。確かに魔性と呼ばれる意味が分かる。一体何人相手にしたんだか」

「さあね、何か事情があるらしいが、俺達が知るべき事じゃない」


 昼過ぎ。彼が何か大きい箱を持って降りくる。

 隊員達は庭に集まり一礼する。


「一週間お疲れ様ー。何か不審な事あった?」

「グレズリのミュータントは見かけましたが」

「自分は貴重な野生のキツネを見ました。ちょっと感動しました」

「そいつらは絶対違うんだよ。だって俺のバイクの手垢はどう見ても人なんだ。しかも生きてる人!シールドがない時に狙ったに違いない!」

「我々以外の人影はなかったです。それは確認済です」

「ふっ、なんだ、犯人は現れないのか」


 後ろから隊長のアーモンドが笑いながら現れる。

 その屈強で厳つい体格は隊長だと一目瞭然で分かる。


「サー!敬礼!」

「その様子だと、襲撃もなく、むしろ施しを受けてスッキリしたようだな」

「……」


 隊員は全員顔が赤くなる。


「まあ、金に代わる対価だから仕方ない。じゃ俺は後で……」

「しねえよ。麝香炊いたツボ押しマッサージで皆んなそのまま寝ちゃってただけだから。あとこれはサービスの食糧と酒だ。ほら持ってけ」

「お、サンキュー」

「ありがとうございます!」


 隊員が一斉にお礼する。


「じゃ引き上げるぞ」


 そう言い軍用車に乗ろうとした時、一台のトレーラー車が近くに止まった。


「ん?」

「なんだ?」

「クローバーのマークだ」


 彼らの前に現れたのは、クラブと少女だった。


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