じんおわ‼

ジョセフ武園

じんおわ1人目 葛城誠

葛城誠は20の誕生日を前に、冷や汗と腹痛に追いやられていた。


何度も何度も財布を見てはそこに書かれている数字を睨み、唇を噛んだ。


彼の誕生日は今月の28日

その前日27日は、貸付ローンの返済日である。


彼は今、把握すらしていないそのローンの総額。

その氷山の一角「リボ払い」その返済額が。

自分の収支の数字を上回っているのだ。


彼は高卒から近所のスーパーの精肉部門に就職した。

月160時間で、大体手取り16万弱。


勤務場は主に男性主体で運動会系なコミュニケーションで溢れていた。

初めての給料日、上司に連れて行かれたのはパチンコ店だった。


初めてのその場は非常に音が大きく不快で、彼にとって良いものではなく。

ルールも解らず3万円を失って、ただただ嫌な思いをした。

それはきっと幸運だった。何故ならば彼がパチンコ店に行く事は二度とない理由となったからだ。


しかし、不運も同時に在った。

その上司は三万円を失った彼を慰める意味である提案をした。

「カードを作っておけば、のちのち便利だぞ」

それは、クレジットカードと、キャッシュの貸付カードだった。

それを上司に教わったポイントサイトで言われた通りに作成すると、あっという間に一万円のポイントを得た。

しかも、それはとても簡単で。

彼は次々と計5枚のクレジットカードと、2件のキャッシュ貸付カードを作った。

あっという間に失った3万を遥かに超えて、7万近くのポイントを彼は得た。


そんな時、ポイントサイトから高還元の紹介が入った。

それは「公営ギャンブルが行えるアプリ」の紹介だった。


登録するだけで3000円分のポイント。更にギャンブルに投票できるポイントが1000円貰えるらしい。

先の上司に訊いてみると、上司も既に使っているらしくて、上司の紹介を通すと、更に2000円分の投票ポイントが貰えるらしい。


実は以前より、競馬をモチーフにしたゲームアプリをしていた彼は、興味本位でそれをダウンロードして見る事にした。


それが彼が就職して2回目の給料日の頃だった。


そして、約1年後の現在。

あの時作ったカードは全て限度額。普通はクレジット関連のカードは年収と紐づけられて限度額が決まるのだが、それはカード作成時に「貸付」があるかどうかだけで決まる。大体年収の30%。つまり彼の場合はボーナス含め約220万円の30%、約70万。

それが7枚の限度額。つまり490万が彼の現在の借金ローンだが

正式にはここに「年利18%」が圧し掛かる。490万の年利18%は年約91万。月に利息だけで約7万が利息。つまり罰金として彼は支払っている。


年利18%の場合、一気に返さないと、彼の年収では最早返済は不可能となる。


そして、彼はあろう事かそれを、それの原因となった公営ギャンブルで返そうと毎月毎月カードのショッピング枠で勝負し続けたのだ。


公営ギャンブルアプリの怖ろしい所は、スマホさえあれば、一分で万単位からでも勝負を出来てしまう所にある。

仕事中でも、真夜中の帰り道でも。

いつでも出来てしまうのだ。



彼はとうとう、両親に相談する事にした。


母は泣き、怒鳴り。

父はただ静かに

「これからどうするのか? 」と尋ねた。


二度とギャンブルはせずに毎月給料から肩代わりしてくれた両親にお金を返す事を約束した。



そして――その二年後

彼は、22歳になり、少しだけ給料も増えた。

通帳には、いつも給料日の翌日には端数以外の数字が引き落とされている。


彼はそれを眺めて。

また、冷や汗をかいていた。


その日は――

26日だった。



《葛城誠の分岐点》


先ず、彼が起こしてしまった大きな失敗は

カードの限度額まで行ってしまった事。だが、これはギャンブルにより使用している間は止めるのが非常に困難であり、更に自由に使える月収入があったのも彼の危機感を土壇場まで伸ばしてしまった事による。


現在の一般家庭、それも彼の両親の初老年齢の場合、490万の肩代わりはかなりの予想外の支出となる。

しかし、彼の両親は彼を信じ、そして愛していた為、返済の他に制限を与えなかった。この時にするべきは

カードの整理。そして限度額の引き下げである。


先の話に出てきたが、年収の30%までしか借りれないのはあくまでキャッシング枠であり、ショッピング枠であれば、年収非課税(年収108万以下)でも50万以上の高額な枠を手続きなしに行えてしまい、さらに利用がなければそれを数枚作れるという罠の様なシステムが存在する。

それを両親から抑えておくべきだった。


そして、一番在り得るが、起きてしまえば初回より遥かにマズい事になる。再発に上記は繋がる。

この時は、もうギャンブル中毒などの言葉で片づけてしまいがちだが、破滅に向かうその理由と向き合うのが唯一の自制方法であると思われる。

彼の場合は、給料の殆どを両親の借金への返済に充てていた。それは正解だが、それを家族や他者に話せる状況があれば最悪は回避できたのかもしれない。

債務者が再度借金をするのは「返済中」がもっとも多いのだ。



最後に、彼の場合はこれからどうすればいいのか。

最良のケースは、一回目同様、両親に一括で返済してもらい、その後無利子で返済に当たる事だ。そして今度は上記にのっとり、カードの上限を大幅に制限して、再発は防ぐ。しかし、計算すると彼が1カ月に10万返済していたとしても、一回目の返済もまだ140万程度~であると考えると。二回目の肩代わりを足すと800万を超える。これは、一般家庭では、貯蓄額の3割を超えるのは明らかで、負担がかなり大きい。

したくても出来ない場合は多いにある。


その場合、第二選択は法律事務所による債務整理である。

これは、5年間カードが使用不可になるのが一番のデメリットであり、ローンなどが今後通らなくなる恐れがある。

しかし、事務所が肩代わりして、利息を少々下げて返済プランを立ててもらえるので返済の可能性は高い。しかし、相当の時間を捧げる事になり。返済のために生きる事になる。それに耐えるフィジカルとメンタルを必要とする。



一応記す最悪のパターンは

誰にも相談できず、返済日も滞り

副収入を探すパターンである。


2023年にニュースでも騒がせた闇バイト。それが急速に増えた背景に、この公営ギャンブルアプリとクレジットカード利用は明らかだ。これにより、今回の葛城の様に返済に困った若者が誘導されている。


これは2025年の国会では水面下でその問題が議論されており、ゆくゆくは現金以外では今後利用ができなくなる可能性もあるが。

貴重な国家予算の一部である公営ギャンブルをどう裁くのかは不明である。


もし、今彼と同じ様にカードのショッピング枠を種銭としてギャンブル勝負している人は今一度立ち止まり。途中で引きかえせるのなら、それを選択してほしい。

ギャンブルを止める方法は、途中で辞める。これしかないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る