第13話

勝負……?

私がサンゴと戦うってこと?


「お言葉ですがサンゴ様、お嬢様は戦いをした事が1度もありません。貴方の気持ちは分かりますが……」


「あんたは黙ってなさいメイド!この先、理性を失った魔物に襲われてもそんな事を言うの?」


リアは言葉に詰まる

確かに、デルちゃんみたいに

何も聞きいれてくれない魔物は出てくるだろう

……それでも


「私は傷つけない。和解出来るまで話を続けるよ」


「……とんだ甘ったれね……その考えが、行動が、ヒシンス城ではどんぐらいの規模の被害が出たのかしら?」


その言葉に、あの光景が頭の中でよぎる

鮮明に残ってる、デルちゃんの冷酷な瞳

次々に倒れていく兵士たち

破壊されていく家や城

何も出来なかった……悔しくないわけが無い


「あの王子がいないってことは、今も責任を感じて、鍛錬してるってことでしょう? それでもまだ、そんな甘い口を叩けるのかしら?」



ぐうの音も出ないほどサンゴの言う通り

この前の洞窟だって、シンが時間を稼いだり、私が攻撃を防がなきゃ

ウルルルフは皆を殺していただろう


「……分かった。私、やってみる」




シンやボタンたちも呼んで

少しひらけた森で戦うことになった

ちゃんと剣を持ったことなんて

パパが許してくれなかったけど……

サンゴを峰打ちで気絶させれば大丈夫…なはず


サンゴは背中に大きい弓を背負って、左手に杖を持っているのが見える

遠距離で責められるかもしれない、用心しなきゃ…


「それでは、両者とも、始めてください!」


リアの戦闘開始と共に

サンゴは杖を地面に突き、丸い円を周りにだす

戦闘初めてな私でも知っている。魔法陣というやつだ


その魔法陣から炎の弾を連発してくる

私はそれを走りながら避けて接近しようとするが

あと一歩で杖を使いながら空中へと飛んでいく

と、飛んでる!!?す、凄い……

って、感心してる場合じゃない!


一方観戦しているシン達は……


「火を放つ魔法か……かなり難易度高い魔法だと聞くが…」


「彼女は攻撃魔法を得意とするからな、肉弾戦しか出来ない相棒にとってはかなり難しい相手だろうなぁ」


「あの杖で空飛んでるんだね。器用だなぁ」


「空を飛ぶ魔法なんて、とんでもない魔力を秘めてないと浮くことすら出来ないからな〜低空飛行でも杖の力で補ってるのは流石と言えるね!」


「…………お嬢様……どうか……無理なさらずに」




「全然攻撃が届いてないじゃな〜い、なんなら地上だけで戦ってあげましょうか〜?」


「だ、大丈夫だもん!本気で来て!」


「……ふん、気に食わないやつね」


サンゴはイラついた顔をしながら

杖に跨り、私の周りを飛びながら弓矢を撃ってくる

私はその軌道を読んで避けることしか出来ない

どうにかしてサンゴを撃ち落とす方法があれば……


そうだ!と思い付き、私は剣で木を切り倒す

森の木なら、サンゴに届く!と木をぶん投げる

丁度、矢を弓に取り付けようとしたタイミングで

木に矢を弾くことに成功する

サンゴは「ちぃっ!」と舌打ちしたかと思えば

空から急降下して、私にキックを噛ましてくる


私がよろけている間にすぐに杖を使って空に飛び

魔法陣で火の玉を出して周りを爆発させる

煙で周りが見えなくなってしまい

サンゴの居場所が分からなくなってしまった



「確かに機転は効くみたいね……でもこれで…」


声のした方にすぐ振り返るが

空中でサンゴに構えられた弓矢の先は

私の頭を狙っていた


「チェックメイトよ!」


「そこまでです!!!」


矢を放たれる……と思った瞬間

リアのストップの声がかかった

サンゴは空中でクルリと身を翻(ひるがえ)して

私の後ろに着地する


「なによ、せっかくいい所なんだから、邪魔しないでくれる?」


「もういいでしょう!勝負はついたはずです!」


「大丈夫、カモミ?怪我してない?」

「ほれ相棒、痛め止めだけでも飲んどけ」

「ありがとうボタン、アイボー、私は大丈夫」



アイボーとボタンに心配されてる姿を見たサンゴは

「ふんっ」と呆れた様子でそっぽを向く


「あんたみたいな脳内お花畑じゃ、まだまだね」


「貴方……強いんだね」


「当たり前でしょ!あんたが弱すぎるの!……はあ、もういいわ。その剣は持てないからあんたに預けとくわ」


「えっ、でも」


「ただし!!!!……今度会った時、そんな体たらくじゃ、今度は殺すからね」


サンゴはそう言って

邪魔にならないよう遠くにおいていたバックを背負う

すると、「ん?」と急に中身を確認しだした


「………ない」


「え?」


「薬がない!!!!」


【第13話 戦いの覚悟】

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