第9話

魔物を逃がしてから、その後は順調に洞窟を進んでいき

ようやく最深部についた

けど、周りは真っ暗で何も見えない

何か奥で音がしてる気はしてるけど……

「ちょっとその電灯貸してくれ」


ワイスさんはそう言って

シンが持ってた懐中電灯の灯りを強くして

辺りを照らしてくれる


すると奥で、3m程の白い大きい狼みたいな魔物が

何かを食べているように見える

……よく見たら、私達が探していた花だ!


私は急いで駆け寄ろうとするが、狼はこっちに気づいて

耳を抑えたくなるほどの大きい咆哮をする

すると、私に噛み付こうとしてくる

「危ない!」とシンが間一髪、私を掴んで攻撃を避ける


「げげっ!こいつは最近、暴れん坊でよく他の魔物と大乱闘するウルルルフじゃないか!ここら付近じゃ見かけた事無かったけど…」


「どうするカモミ?あの魔物も殺さないつもり?」


「うん!どうにかして食べるのを止めさせなきゃ!」


「よし、俺が時間を稼ごう!ボタンはカモミを守りつつ策を練ってくれ!」


「わ、分かった!気をつけてねシン!」


シンは盾と槍を駆使しながら

魔物との攻撃を避けている

策、と言っても、あんなに大きい魔物が

腹を満たすほどの量の食べ物を出せるとも思えない


そんな事考えてると、魔物はシンの防御をもろともしない突進で

壁に弾き飛ばしてしまう

ボタンは慌ててシンの方に駆け寄るけど

魔物の勢いは落ちることを知らず、ワイスさんの方へ突進してくる


「ひえぇ〜!!!うちはまた死にたくないよぉ!!」


また。という言葉に少し引っかかったが

そんなの気にしてる暇はない!

私は咄嗟にワイスさんの前に立って

魔物が振りかぶった腕を両手で掴んで止める

正直、凄い衝撃で泣きそうになるが、何とか守れた


そのままふと、私は目線をあげると

魔物のお腹部分が赤くなっているのが見える


「ワイスさん!この…ウルルルフっていうのは…お腹が赤色ですか!?」


「えぇ!?た、確か全身白色だった気がするけど……なるほど!そういう事か!」


何かを理解したワイスさんは

バックの中から塗り薬を取り出す

その間にも魔物は私を押し潰そうとしてきて

腕の力が少しずつ緩くなっていく

ぐぬぬぬぬぬ……根性を魅せろ私ぃぃい(´•̥ ω •̥` *)


「あの魔物は傷を負って、あの花で治そうとしてたんだ!これを塗ればきっと良くなるはず!」


「じゃ、じゃあ、私が抑えてるので……早く…行ってあげてください」


「えぇ!うちがぁ!?むむむ無理に決まってるだろ!」


「貴方が治さなきゃ……!この子は……今でも痛がってるんです!」


「で、でも!怖いよ…君もうちも、そのまま押し潰されたら…」


「大丈夫!!!……私はぁ……絶対にぃぃ……この子を救うまでぇ…この手を離さない!!!」


私の言葉に、ワイスさんは

震えながらも少しずつ歩いていく


「ワイスさん!勇気を振り絞って!!!」


「勇気を……うぅぅぅ……ぬああぁ!!行けばいいんでしょぉぉぉぉ!!!!」


ワイスさんは自分を奮い立たせて走り出し

急いで魔物の治療を行う

それに気づいた魔物は、少しずつ、力を弱めてくれる

最後には、ゆっくりと私の手から離れ

大人しくなった


「カモミ!!大丈夫だった!?」


「ボタン……はぁ、はぁ…私は…大丈夫……ぜぇ、ぜぇ…それより…シンは……?」


「俺は軽傷だ……すまない、俺が不甲斐ないばかりに……」


「気に…しないで……」


どうにか息を整えてると

ようやくワイスさんの治療が完了した

ワイスさんが「もう大丈夫だぞぉ〜」と言ってあげると

ペロリとワイスさんの頬を舐めてくれる


「うひゃぁ!くすぐったいじゃないか!」とケラケラ笑い出す

良かった、ワイスさんは完全に恐怖が無くなってるし

魔物も、敵意が無くなったみたいだ

怪我をしてて、少しイライラしてただけみたい


これで花が採れる……とその場所を見ると

すでに全て食い荒らされた跡が見えた

え…………ない


「あちゃぁ、全部食べちゃったみたいだね。どうするカモミ?」


ボタンは辺りを探してくれてるけど…

もうないと諦めかけた時

洞窟の小さい穴から、コウモリの魔物と1つ目の魔物が出てきた

あれ?さっき会った子達だ、と思ってると

魔物二匹は、花を1輪だけ私に渡してくれた


「え、残り物くれるの!?ありがとう!」


「逃がしてくれたお礼って訳か……良かったなカモミ」


私が喜んでると、ウルルルフの方も

花が欲しかった、というのを理解したのか

クゥーンと小さく鳴いてくる

私は大丈夫、気にしてくれてありがとう、と撫でてあげる


「よし!材料も揃ったし、最後はうちの仕事だな!病人の所に戻ろう!」


【第9話 勇気】

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