第4話

「…毒でも入ってるのかな~」



あたしは、その飴玉を怪しそうに見つめる。


そんなあたしを見て、由香里はクスリと笑った。



「それって、ひなが小学生に見えたからじゃないの?」


「…えっ!?またっ!?」



あたしは、口をポカンと開ける。



…実は、あたしが小学生に見間違われたことは、これが初めてではなかった。




中学生のときは、見間違われた経験しかない…。



高校生になってからは、ゲームセンターへの入場を制限されたし、夜の8時で警察官に補導されかけたこともしばしば…。



大学に入ってからは、由香里と買い物にくると、姉妹に間違われたりする。


だって由香里は、大人っぽいもん。



けど、そんなにあたしって…子どもっぽく見られるのかなぁ。




…あたしはよく、“童顔”だと言われる。



それが、あたしのコンプレックスでもある。



できることなら、由香里みたいな美人な顔立ちがよかった。



ここ数ヶ月は、見間違われるようなことはなかったんだけどな…。



だからもうないと思っていたら、まさか高校生に飴玉を渡されるなんてっ…。



どこのだれだか知らないけど、あたしの方が年上なんだからねっ!




「ひな、行こ!」



電車の中でのことを思い出して、またムカムカしていると、由香里があたしの手を引いた。



由香里の声に我に返り、あたしたちはたくさんのショップが入っているビルに入った。




「…これ、どうかな?」


「うん!由香里に似合ってる!!」



脚の長い由香里は、ミニスカやスキニーパンツがよく似合う。



あたしも、そのショップの洋服に目を通す。



「あっ、これかわいい!」



と引き抜いたのは、花柄のマキシ丈ワンピ。



でも…。



「…うん、やっぱダメか…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る