Bランク僧侶を希望しているのですが
第2話 お待ちかねのランク分け
広間の静けさを破るように、魔術師が声を張り上げた。
「これより、ランクとジョブを決定する!」
俺は最後列で腕を組みながら息をつく。
僧侶の枠は三人……クラスは三十人だから同じジョブは、たぶん十パーセントくらいに違いない。
——きっとそうだ。
俺の平穏な異世界生活はここで決まる。頼む、絶対に僧侶を引かせてくれ!
「最初の一人、
「Bランク! ジョブは剣士!」
拍手が広間に響く。宮下は一礼し、
よし、剣士なら問題ない。僧侶じゃない、僧侶じゃない……!
ふっ宮下よ! 剣士とはな。異世界人生ハードモード引いたな。
「次、
問題児の篠崎が壇上に立つと、クラス全体が少しざわついた。あいつの態度はいつも通り気だるげで、やる気の欠片も感じられない。
「Aランク! ジョブは忍者!」
篠崎はニヤリと笑い、壇上を降りる。
「ふっ天職だな」
まあ、篠崎っぽいけど、忍者なんて潜入調査に錯乱とか出来る事が多すぎて、絶対疲れるだろ。俺なら即パスだ。僧侶だけでいいんだ、僧侶だけで……!
「次、
リーダー格の高橋が壇上に上がると、クラスメイトたちの期待が膨らむ。悠斗は腕を組みながら冷静に見つめていた。
どうせSランクだろうけど、上位職とか引いちゃったら大変そうだな。責任と期待の地獄コース確定だし。
「Sランク! ジョブはパラディン!」
歓声が広間を満たす。高橋は誇らしげに拳を突き上げ、壇上を降りていく。
「俺がみんなを守ってやるからな!」
クラス中が「頼れるエース!」と褒め称える中、俺は軽く鼻で笑った。
プー(笑)!! お疲れ様。これからが本番だな。俺はそんなプレッシャー背負う気ゼロだけど。
「次、
ムードメーカーの結衣が壇上に上がり、無邪気に手を振る。その明るさに広間の緊張感が少し緩む中、悠斗はまたしても心の中で祈った。
頼む、僧侶だけはやめてくれ……!
「Aランク! ジョブは学者!」
「やったー!」結衣が明るい声で叫ぶと、クラスメイトたちも拍手を送る。
俺はその様子を眺めながら、内心では思い切り地団駄を踏んでいた。
学者だと!? いやいや、これ最高じゃん!
前線に出なくてもいいし、知識を披露してれば済むなんて、安全で楽な神職だろ。僧侶もいいけど、学者のほうが絶対いい……!くそ、羨ましい……!
「次、
千夏は俺の
「Sランク! ジョブは賢者!」
歓声が巻き起こる中、千夏は静かに一礼し、壇上を降りた。その時、俺の方をチラッと見て自慢気に目線を送ってきやがった。
その冷静かつ
千夏は賢者か……まあ一見すると優等生だしな。僧侶もいいけど、賢者はさらに上位っぽいし、戦闘も安全そうだな。でも、Sランクってだけでプレッシャーが重そうだし、やっぱり俺には僧侶が一番だな。
「次、
香織が壇上に向かう。その柔らかな微笑みと雰囲気は、僧侶のイメージそのものだ。悠斗はゴクリと息を呑む。
いや、ここで僧侶を取られたら……
「Bランク! ジョブは僧侶!」
場内がまたしても拍手に包まれる。香織は少し恥ずかしそうに頷いて壇上を降りていった。悠斗は顔を覆いたくなる衝動に駆られた。
くそーーーーー! 小野寺め! 俺が狙ってるの、それなんだよ僧侶! なんで先に取るんだよ!
「次、
クラスのいじめっ子で嫌われ者の清水が、堂々とした態度で壇上に向かう。自信満々の表情が広間にいる全員をイラつかせる中、悠斗は腕を組んで冷静に見ていた。
まあ、どうせBランクかCランクだろ。あいつはどうせ僧侶枠には関係ないし、どうでもいいけど――
「Eランク! ジョブは小悪党!」
水晶が赤黒く輝いた瞬間、広間が静まり返った。その後、クラスメイトたちの失笑が漏れ始める。
「えっ、Eランクってマジであるんだ……」「しかも小悪党って……どんなジョブだよ!」
「小悪党!?」「お似合いじゃん!」
清水は拳を握りしめて顔を真っ赤にしている。その姿を見ながら、俺は心の中で満面の笑みを浮かべた。
(プハァァッ(笑)!! 小悪党! すげーウケる! ざまぁみろ。これ以上ない天罰じゃん)
でも、すぐに俺は冷静に思い直した。
待てよ。このまま追放されたら、よくある復讐フラグが立つやつだ。
強くなって帰ってきて、俺まで巻き込まれる未来が見える……少しだけ庇って、俺を復讐リストから外させておこう。
その時、王様が怒声を上げた。
「Eランク!? 小悪党だと?! この国には必要ない! ただちに国外追放とする!」
(あーあ…やっぱり…つーか勝手に呼び出しておいて追放ってこいつら
清水は怒りに震えて王様を睨みつけたが、何も言い返せない様子だ。
俺は勇気を振り絞り、復讐回避ムーブを始める。
「待ってください! 清水だって何かしら役に立つかもしれないですよ……ほら、小悪党って……完全な悪党ではないですし、ずる賢さを生かして戦うとか……?」
(いや、自分で言ってて何言ってんだ俺!)
王様は冷たい眼差しでこちらを見て聞く耳を持たない。
「異論は認めない…追放は決定である」
俺は
「待ってください…!」
うん、でもここでストップだ。これ以上やるとやりすぎだからな。
清水は一瞬、俺の方をチラリと見た。その表情には怒りが残っていたが、俺に対する困惑も混じっているようだった。
よし、これでいい。これで俺は復讐対象リストから外れただろう。面倒は極力回避だ。
清水が追放され、広間の空気が落ち着きを取り戻す中、残り人数はついに3人。俺は心の中で僧侶枠の数を再確認する。
僧侶の枠はあと一つ残ってる(たぶん…)。これを引ければ平穏そのものだ。
だけど……待てよ、Aランクのタンクなんかが残ってる可能性があるんじゃないか?
敵からのヘイトを一身に集め、前線に立たされ身体張って仲間を守らなければならないあのタンクとか……それだけは絶対に避けたい!
「次、
壇上に向かう足が重い。水晶が光り始める中、俺は祈るような気持ちで呟いた。
頼む……Bランク僧侶でありますように……!平穏、それだけが俺の願いなんだ……!
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