「名推理? いいえ、名リアクションです。」 事件は現場で起きている――津田さんも現場で迷っています。

湊 マチ

第1話 山奥のペンションに到着する津田

薄暗い山道をバスが揺れながら進む。窓の外には霧が立ち込め、数メートル先も見えないほどだ。

「いや、これロケやんな? ほんまにロケやんな?」

津田篤宏は、隣に座るディレクターに確認するように問いかけた。しかし、ディレクターは笑うだけで何も答えない。その笑顔が逆に不気味だ。


「なんやねんこれ! 俺、今日バラエティのはずやろ? 山奥で何するねん!」

そう文句を言いながらも、津田は車内の雰囲気がやけにシリアスなのが気になっていた。カメラマンやスタッフもほとんど喋らない。


バスが停まったのは、小さな駐車スペースだった。目の前には古びたペンションが佇んでいる。外壁はところどころ剥がれ、雨に打たれて色褪せた木造の建物だ。看板には「ペンション白樺」と書かれている。

「うわ、絶対出るやんこんなとこ!」津田が叫ぶと、スタッフの一人がくすりと笑った。


ペンションの中に入ると、室内は思いのほか綺麗に整えられていた。ロビーには暖炉があり、その上には古い絵画が飾られている。しかし、窓の外には濃い霧が立ち込め、不気味さは消えない。

「はい津田さん、ここから探偵役です!」ディレクターが急に宣言した。

「は!? 探偵? いやいや、俺ただの芸人やで! なんでやねん!」


スタッフから説明されるうちに、津田は「連続殺人事件が起きている」という設定で調査を進める役割だと理解する。


「いや、殺人事件って……殺人が関係してるんすかね?」

場が凍りつくような天然発言をしたあと、津田は気を取り直して聞き込みを開始することになった。


ロビーでの聞き込み

登場人物は、ペンションに滞在している5人の宿泊客だ。

1.静かに本を読んでいる中年の男性(大学教授らしい)

2.落ち着きのない若いカップル

3.一人でカウンターに座る女性(妙に冷静)

4.ペンションのオーナー夫婦(やたらと挙動不審)


津田はオーナーに質問をする。

「最近、変なこととかありました?」

オーナーはしばらく考えたあと、やや動揺しながら言う。

「そうですね……昨夜、暖炉の火が急に消えたりしました。それと、屋根裏部屋から物音が聞こえるんです。」


「うわ、それ絶対幽霊やん!」津田が騒ぐと、宿泊客たちは一斉に振り向いた。


不穏な空気と最初の事件

聞き込みを進める中、津田が調査に乗り気になったころ、突然奥の部屋から悲鳴が上がる。

「ぎゃあああああ!」


津田は驚き、スタッフを見る。

「これ、演技とかじゃないよな? いや、俺もう帰っていい?」

そう言いながらもしぶしぶ悲鳴のあった部屋に向かう。


部屋の中には、血まみれで倒れる宿泊客の一人――若い男性。

津田は震えながらも叫ぶ。

「これ、犯人絶対この中におるやん! 俺、探偵とかムリやって!!」


しかしスタッフから「お願いします、解決してください!」と言われ、津田は仕方なく調査を続けることにした。

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