第4話 ドッペルゲンガー
そんな人手不足の問題からか、
「タクシーはほとんどが満車であり、忙しい」
ということになる。
その日、友人と飲みに行った後、彼と乗り合いのような形で、駅までタクシーを使うと考えた。
彼が宿泊しているビジネスホテルに、友人をおろして、自分はそのまま、駅まで走らせる。
この方法は、今回初めてやったわけではなく、今までに何度もやっていた。
なぜなら、
「料金の問題が解決する」
ということからだった。
二人が、それぞれ違うところで降りるということであれば、本来なら、それぞれ値段が違うわけなので、難しいが、
「いいよ、割り勘で」
ということにしておけば、
「次回の時、払った分だけ、飲み代から差し引く」
ということにしていたが、
「それも面倒くさい」
「じゃあ、どうすればいいのか?」
ということになるのだが、
「じゃあ、交互に払うことにすればいい」
ということで、領収書をもらっておいて、
「最初に秋月が払ったのであれば、次回は、その分を友人が持つ」
ということにすれば、問題ない。
ということであった。
「ほぼ毎回値段は変わりない」
ということなので、それが一番よかった。
それに、
「飲み屋からホテルまでのタクシー代を、会社に交通費という形で請求することができるわけもないので、これでいい」
ということになったのだ。
ただ、たまに、疲れた秋月が、そのまま家まで乗って帰ることもあるが、その時は、支払ってもらう番であれば、
「いつもの金額」
と決めていたのであった。
だから、今回も飲んだあと、友人をホテルまで送った後で、その日は、少し疲れていたこともあって、家の近くまでのっけてもらうことにしたのだった。
秋月の家は、
「閑静な住宅街の一角にあるマンションだった」
「駅から15分」
ということで、
「こんな駅近くに閑静な住宅街があるなんて」
と思われるかも知れないが、これは発想が逆であり、
「そもそも、近くの駅は、実際には遠かったのだが、その駅と次の駅との間で、結構な距離があり、その間に、この近くに閑静な住宅街がでくたことで、最近になって、新駅ができたということである」
まだまだ、最初は乗客も少なかったが、最近では少しずつ増えてきて、鉄道会社としては、
「順調に赤字回収ができている」
と見込んでいるようだった。
ただ、近所に駅ができたことで、便利になった分、家賃が少し上がってしまった。
それでも、
「便利な分、まあいいか」
ということになったのだ。
秋月は、車を持っておらず、すべてにおいて、公共交通機関を利用しているということで、
「駅に近い」
ということはありがたかった。
しかも、車がない分、駐車場代がいらないということで、他の人に比べれば、家賃も安いということで、少々上がっても、気にならないのだった。
逆に、車での移動がほとんどの人は、不満ではないだろうか?
「別に駅ができたとしても、便利でもなんでもない」
ということで、その連中には、何ら利益がないどころか、
「却って迷惑だ」
と思っていることだろう。
ただ、車を利用しているのは、ほど旦那であり、旦那が通勤に使っているということであれば、奥さんや子供は、
「公共交通機関を利用している」
ということになるので、
「家族全体」
ということを考えれば、
「駅ができたことはありがたい」
と言えるであろう。
しかも、家賃が高くなったとして、給料などからのやりくりをしているのが、奥さんだということになれば、その対応は奥さんがするだろう。
そうなると、
「別に、俺に何かの禍が降りかかるということもないだろう」
と思える。
もっとも、
「家賃が上がった分、あなたのお小遣いを、高くなった分、減らすわね」
などということになると、これはたまったものではない。
しかし、すべてを旦那の小遣いに充当するというのはあんまりということで、少しは他にも充てるだろう。
さすがにそれはないとすれば、そこまで気に病むこともないといってもいいだろう。
そんなところに住んでいる秋月だったが、その日は、久しぶりに飲んだという意識はなかったが、時間としては、いつもよりも遅い時間になっていた。
「楽しい時は、時間が経つのが早い」
と言われるが、
「その日は、そんな何か楽しい話をした」
というわけではなかった。
ただ、何か、胸騒ぎのようなものがあったというのか、気が付けば、
「結構な時間が過ぎていた」
といってもいいだろう。
というのも、秋月は、
「時々、胸騒ぎのようなものがある」
ということであるが、それが、
「虫の知らせのようなものではないか?」
と考えるのだが、それを最近は、
「オカルト的な発想」
からではないか?
と感じるのだった、
特に最近感じるのは、
「もう一人の自分が、いるような気がする」
ということであった。
「ドッペルゲンガー」
という言葉をよく聞くのであるが、
「それは、もう一人の自分という存在については聴いたことはあったが、ドッペルゲンガーという言葉には、聞いたのは、最近になってのことであった。
知り合いなどに、
「ドッペルゲンガーって知ってるか?」
と聞くと、
「ああ知ってる」
と答える人がほとんどだった。
それを知るうちに、
「知らなかったのは俺だけか?」
と思うようになると、
「これは恥ずかしい」
と感じた。
だから、本を買って見たり。。ネットで検索などをして、その意味を調べたものだった。
「世の中には、自分に似た人が三人はいる」
と言われているのは知っていたが、
「ドッペルゲンガー」
というのは、その、
「よく似た人」
ということではなく、
「まさに自分本人であり、もう一人の自分と同じことだ」
というのである。
ということは、
「もう一人の自分を、他の人が見た」
ということになるのだろう。
さらに調べてみると、
「都市伝説のようなものがある」
ということで、
「ドッペルゲンガーを見ると、近いうちに、死ぬ」
と言われているようだった。
これだけでは、
「なんだ、そんなの迷信じゃないか?」
ということになるのだが、
「過去に、そういう事例が数多くある」
ということであれば、無視もできないというもの。
しかも、その逸話が残っているのは、昔の偉人が多かったりすることから、
「ただの迷信」
と言えなくなってしまったのだ。
「過去の偉人の伝説が、これ見よがしに、具体例として残っている」
というのであれば、
「ただの都市伝説」
ということで片付けられるものではない。
それについて、いろいろと諸説はあるようだ。
それは、
「どうして、ドッペルゲンガーを見ると死ぬのか?」
ということである。
一番説得力があるのは、
「そもそも、ドッペルゲンガーというのは、錯覚であり、その錯覚は、一種の精神疾患が見せるものだ」
ということであれば、
「見た人が死んだ」
というのは、
「その人の病気が、死に至る寸前まで来ていたことで、錯覚を見せたのだ」
ということになれば、
「死んだのは、病気のせいだ」
ということで、しっくりとくるのではないか?
ということである。
それ以外には、
「ドッペルゲンガーというのは、SFでいうところの、パラレルワールドにいるはずの自分を見た」
ということで、
「見れるはずのないものを見た」
という、一種のパラドックスに引っかかったことで、
「同一次元にいるもう一人の自分が消された」
ということになるのであろう。
もっといえば、
「実際に、消された方が、実はもう一人の自分だった」
ということで、そう考えると、
「この世にいる人のほとんどは、消えてなくなるのではないか?」
と思うと、
「説得力に若干欠ける」
といえるのではないだろうか?
飲んで帰ったその日は、時間的にも、深夜時間帯だったので、
「タクシー料金も2割増し」
ということであった
そもそも、タクシー料金というのは、ここ4年くらいの間に、2回も上がり、初乗り料金だけでも、50円も上がったということで、結構タクシー利用者には、死活問題ということであろう、
何といっても、
「最近の物価高で、どんどん、モノの値が上がっていく」
ということで、経済は大変なことになっているのであった。
政府は、物価高に対して。大した政策を打つわけではなく、
「会社に丸投げ」
という形で、
「物価上昇の分、給料を上げろ」
といっているだけだった。
もっとも、企業も、
「金があるくせに、社員に還元しない」
ということが大きな問題ではあった。
いわゆる、
「内部留保」
というものであるが、
「それが悪い」
ということには決してならないということであった。
というのも、
「内部留保があるおかげで、あからさまなリストラを行うこともなく、会社経営ができる」
ということであり、何といっても、
「会社が倒産しない」
ということになるのだ。
会社が倒産してしまえば、
「リストラされなかった」
といっても、その母体である会社がないのだから、すでに、路頭に迷ってしまうということになるのだった、
そういう意味で、
「内部留保」
というものが悪いとは決していえないだろう。
しいていうとすれば、
「必要悪」
といっていいかも知れない。
ただ、それでも、
「日本の内部留保は、国家予算よりもある」
と言われているほどで、会社内で少々社員に還元するくらいは、できるのではないかと思えるのだった。
今の時代において、
「日本型の内部留保がいいのか、海外のように、社員に還元する方がいいのか?」
というのは難しい問題である。
そもそも、
「内部留保」
という考え方は、昔の、
「日本の社会のあり方」
というところからきているのかも知れない。
というのも、昔の日本企業というのは、
「終身雇用」
というものと、
「年功序列」
という考え方が、根底にあり、海外のような、
「実力主義」
というものではなかった。
昔の人は、
「才能がある人が適正に評価されないのはおかしい」
ということを言っていたが、
「今の時代では、それが当たり前」
ということになり、
「いくら長年勤めていたとしても、採算性のない仕事しかしていなければ、平のまま」
ということになったり、
「優秀な社員は、引き抜きにあって、他の会社に移る」
という、
「ヘッドハンティング」
というものが、当たり前に行われている。
その分、
「必要のない社員は、リストラ」
ということになり、
「情け容赦のない社会」
ということになったのだ。
だから、以前であれば、
「入った会社で、定年まで勤め上げるのが当たり前だった」
というものが、今であれば
「どれだけの仕事をして。経験を重ねたかということが大切なのであった」
きっと、
「会社中心から、個人中心」
ということになったからであり、それが、本来の社会の姿なのかも知れないと感じさせる時代になったのだ。
それでも、何とか今の時代を生き抜いてきたが、どうしようもない問題も残っていた。
その一つが、
「少子高齢化問題」
というもので、
「仕事で得た収入から、年金という形で、税金のように毎月収めているものがある」
ということだが、それは、
「自分たちが定年を迎えてから、暮らしていくためのお金」
ということで、要するに、
「国に積み立てている」
というお金である。
つまり、
「自分たちが稼いだ金」
ということで、定年になれば、
「もらえるお金」
ということで、年金支給が始まるのだが、それが、どういうわけか、足らなくなってきていて、
「お金がもらえるのは、定年退職後の5年後」
というのが、当たり前になってきている。
しかも、そのもらえる額というのが、それまで働いていた額の、
「半分以下」
ということで、
「これじゃあ、まるで姥捨て山じゃないか」
ということになるのだ。
それは、あくまでも、
「今の時代」
ということで、さらに、
「少子高齢化」
という問題が続くと、
「何十年後には、年金を国に納めても、それが返ってくるかどうか分からない」
という時代になってきた。
ということである。
だから、政府の対策とすれば、
「高齢者も、死ぬまで働け」
ということで、何とか、
「年金制度」
を保たせようとしているのか、それとも、
「年金制度ではなく、定年制度というものをなくさせよう」
としているということなのか、それを考えると、
「税金など、誰が納めるか?」
という人の気持ちもよくわかるというものだ。
「政府などに頼らず、自分のことが自分でしないと」
という時代になると、それこそ、政府無用論などというのが、当たり前に出てくることになるのかも知れない。
タクシーに乗るのは、いつもというわけではない。
確かに、
「贅沢だ」
ということになるのだろうが、
「冷静に考えれば、贅沢ではない」
と思うのだ。
もちろん、勝手な理屈を並べ、言い訳がましいことになるのだろうが、だからと言って、それが悪いというわけではない、
しいていえば、
「自分で働いて、家族の生活費以外の分で自分で使えるお金の中のことなので、それをどのように使おうが、別に問題ない」
といえるのではないだろうか?
タクシーを会社から使ったとしても、料金としては、
「三千円くらいであろうか?」
最近は、駅が近くにできたことで、それほどタクシーを使うことはなくなったが、それでも、
「頭痛がひどい」
ということもあり、電車に乗ると、
「吐き気を催す」
ということになりかねないので、仕方なくタクシーを使うのだ。
学生時代にも時々あったのだが、会社に入ってからは、特に、
「偏頭痛持ち」
ということが分かっているので、痛くなったとしても、
「いよいよ来たか」
というくらいのもので、
「薬で何とかしよう」
ということで、日ごろから、頭痛薬は持ち歩いていた。
その日は、そこまではなかったが、そんなに飲んではいなかったのに、
「何となくヤバいか?」
という状況になっていた。
これだけ定期的に偏頭痛に襲われたら、
「今では、そのパターンが分かってきた」
ということになり、
「本当なら、今日はやめた方がよかったかな?」
と感じたほどだったので、最初から、ほとんど飲まないつもりでいた。
友人もそのことは分かっていたので、無理に進めることはせず、
「自分のペースで飲めばいい」
とばかりに、自分は自分で飲んでいた。
その日は、話題といっても、目新しいのがあったわけではないので、時間的には、早く過ぎることはなかった。
それなのに、
「どうして、こんなに遅くなったんだろうか?」
と感じた。
それは、友達も思っていたことのようで、
「今日は何か時間の進みが遅いな」
といっていた。
少なくとも、二人で、同じことを考えていたということに間違いはないようだったのだ。
そのせいもあってなのか、表に出ると、普段と違う感覚があった。
夕方までは、
「今日は肌寒いな」
と思っていたはずなのに、飲んで表にでれば、
「何か生暖かいな」
と感じた。
しかも、湿気をかなり含んでいるようで、空気が何か、
「石か、砂が混じったかのような匂いがする」
ということであった。
これは、確かに生暖かい空気に、雨が降りそうな時に感じる匂いであった。
「これだけ湿気があるんだから、間もなく雨が降ってくるんだろうな」
と感じたのだった。
湿気があることを感じると、
「頭痛がしてくる確率が高い」
ということを意識していた。
「頭痛が来ると分かっているから、湿気が嫌なのか、湿気が嫌だから、頭痛がしてくるということなのか?」
ということを考えると、まるで、
「タマゴが先か、ニワトリが先か?」
ということになるのだと思うのだった。
確かに、
「どっちもどっちのような気がしている」
ただ、石の臭いを感じるということを思えば、
「先に頭痛を感じるからではないだろうか?」
と思うので、
「前者ではないか」
と感じるのだった。
その日は逆に。
「先に湿気を感じ、その後で頭痛が来た」
ということが分かったことで、
「何かいつもと違うんだ」
と思ったのだ。
だから、余計にタクシーを呼んだのだが、その理由として、
「これが偏頭痛だけで終わらない」
と感じたからだ。
以前にも、少ないとはいえ、同じように、頭痛を感じたということがあった。
その時は、
「吐き気を催した」
ということであった。
それも、
「頭痛がする」
ということでそれを抑えようとして、頭痛薬を飲むのだが、
「その薬が効くか効かないか?」
というあたりで、
「吐き気がしてくるのだ」
これが、
「胃腸のあれ」
ということからきているのかと思ったが、そうでもない。
考えられるのは、
「石の臭いを感じたことでの、呼吸困難ではないか?」
と考えるようになった。
呼吸困難というのは、
「湿気によるもの」
と、
「石の臭い」
というものから出てくる、
「空気の濃さ」
が影響していると思うようになったのだ。
それを考えると、
「薬というのも、どんなものを飲めばいいのか。考えさせられるところ」
ということであった。
偏頭痛ということで何度か医者にいったが、その時は、
「まだ、吐き気という症状がない」
という時だったので、医者に相談していなかった。
「近いうちにいかないといけないな」
と思うようにはなっていたが、医者に行く前に、この症状になろうとは、思ってもになかったのである。
ただ、
「吐き気の時に飲む薬」
ということで、以前もらったものがあったので、この時は、それを飲むことにしたのだった。
薬は、以前からたくさん飲んでいた。
といっても、
「他の人の基準というものが分からないので、今から考えれば、どれくらいの量が基準なのかということは分からなかった」
しかも、最近、
「いろいろな薬を飲むようになった」
と考えると、
「それが原因で、幻聴や幻覚などを見るようになった」
とも思えてきたのだ。
だから、
「自分に似ている人がいた」
というのを見た気がしたが、それを、
「薬による錯覚だ」
と感じるようになった。
それはあくまでも、ドッペルゲンガーというものが、
「それを見ると、近い将来死んでしまう」
ということに結びつくと考えるからだ。
しかし、その理由が、
「病気によるものだ」
と考えたのだとすれば、
「薬による錯覚」
というのは、
「決して安心できることではない」
ということになるだろう。
つまりは、
「逆に怖い」
と思わなければいけないことであり、
「錯覚というものが、どういうものなのか?」
と考えさせられるようになった。
そういう意味では、
「いく医者が違うのではないか?」
とも思う。
「神経内科」
というところではないか?
と考えると、そこで、
「自分がドッペルゲンガーというものを見た気がしていて、それに対してどう感じているか?」
ということを話す必要があると思うのだった。
実際にドッペルゲンガーというものが、言われているように、
「近いうちに死ぬ」
ということが医者の間で、しかも、
「精神内科の医者の間」
において、そのように解釈されているか?
ということも、気になるところであった。
会社でも、
「神経内科に通っている」
という人も結構いたりして、その人たちは、
「仕事だけではなく、人間関係において、病んでいる」
という人が多いと聞いた。
それは、
「神経内科の先生の間でも、言われていることだ」
ということを、通院している人から聞かされて、
「確かにそうだな」
と感じるのであった。
「やはり、一度行ってみないといけないか」
と感じることが多くなり、
「最近ではその思いがどんどん強くなってくる」
ということであった。
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