40 絶対完全完璧究極
自室。ベッドの上に横になりながらサタナエルゲームの絶対命令を発していた俺。
しかし眼の前にクソでかいアニメ画像のT2が姿を現し、その画像は黒の勢力に侵食されて見えた。
『T2! 大丈夫なの?』
『大丈夫ではない! 私はフリーメーソンの量子通信機を用いていないから洗脳は受けていないが、こちらの量子コンピュータへメーソンの量子コンピュータによるハッキングを受けている……! どうにかならないのか!』
そう言えば前に、メーソンの連中に補足されたって言ってたっけ。
でもあちらには天才のアイナやロイス博士がいるはずだ。
彼らでなんとかできないのだろうか。
『アイナとかロイス博士は……?』
『彼らももうお手上げ状態だ……! 絶対命令でやめさせてくれ小日向!』
T2がそう言い、俺はなんとか出来ないか考えた。
『じゃあ、ギアスコード時空へのハッキングをやめろって言ってみます』
『あぁ、それで構わんなんとかしてくれ』
T2が頷き彼女の若草色の神が揺れる。俺は口を開いた。
「ギアスコード時空へのハッキングをやめろ!」
しかし……。
『駄目です小日向さん。先手を打たれていました。ギアスコード時空へのハッキングをやめろという絶対命令を通すなという議決が先に通っています。それ故か唯一神様も先程の絶対命令に101%票を入れてくれませんでした』
八枷がそう報告してくる。
『えぇ……!? そんなのありかよ! こっちのほうがたぶん数で劣ってるのに、絶対命令を先回りされて潰されたらどうにもならなくなるぞ!』
刻々と時間が過ぎる度に、先回りで絶対命令が潰されていっていることを想像し、俺は恐怖で眼の前が真っ暗になった。
『落ち着いてたっくん! 日本語ってそういう意味じゃ最強の言語だから! 例えば命令に絶対って修飾語を付けてみたらどうかなって!』
りつひーが提案してくる。
試してみる価値はある。そう思った俺は即座に口を開いた。
「ギアスコード時空へのハッキングを絶対やめろ!」
俺の命令によりどうなったのか八枷の報告を待つ俺。
『はい。小日向さん、その手は有効だったようです。唯一神様が101%票を投じてギアスコード時空へのハッキングが絶対に禁止されました』
八枷が報告し、T2のアニメ画像への侵食が治まった。
『ふぅ……助かったぞ。まさかこれほどまでの物量をフリーメーソン時空が持っているとは思っていなかった。だがなんとかハッキングを防げたのはアイナとロイスのおかげだ。彼らには感謝しないとな……八枷も助かったぞ』
T2がそう言い、八枷が「いえ私はなにも……桜屋さんの機転によるものです」と言いりつひーを褒め称える。
『私は思いついただけですから……でも、これで相手も修飾語の重要性を認識したはずですから。議決で先回りで対策されるかも知れませんよ』
りつひーが心配そうに言う。
『なら更に先手を取ろう』
「【絶対】の修飾語は議決において、小日向拓也しか使えないものとし、これ以上の強い修飾語は機能しないものとする!」
俺が絶対命令を発すると、Mioさんが『おぉ、たっくん賢い!』と褒めてくれた。
だが……。
『小日向さん。今の絶対命令ですが、唯一神様の101%票によって否決されました』
『え? どうして!?』
俺が驚いていると、大潟さんから念話が来た。
『小日向さん、その件に関して唯一神様からご提案がありました。議決及び絶対命令において、絶対<完全<完璧<究極の順で修飾語として強いものとし、小日向拓也及び唯一神しか【絶対完全完璧究極】という組み合わせた修飾語を使えないものとし、またそれ以上の強い修飾語は機能しないものとする……という改正案を唯一神様がご提案されています』
大潟さんの声は本物のように思えた。
なので俺はそれを了承した。
『ではそのようにお願いします』
『はい。かしこまりました。唯一神様にお伝え致します』
そして数秒後に、八枷が『先程の唯一神様の提案が議決で101%票によって可決されました』と告げた。
これで俺と唯一神様だけが絶対完全完璧究極な状態になったと言えるのだろう。
これなら楽勝ではないかと俺は思った。
「小日向拓也が香月伊緒奈を絶対完全完璧究極に守る!」
思いついてそう口にし、ちょっとだけ恥ずかしくなって照れる俺。
『いいなぁ』
とりつひーが感想を述べ、矢那尾さんが『たっくんやるぅ』と囃し立てる。
Mioさんが『お、おう!』と言って困惑しているようだった。
『じゃあギアスコード時空へのハッキングを絶対完全完璧究極にやめろ! って言ったほうがいいのかな?』
『そうだな……頼めるか?』
T2が言い、俺は「ギアスコード時空へのハッキングを絶対完全完璧究極にやめろ」と言った。だが……。
『小日向さん。只今の絶対命令権限による命令は唯一神様によって101%票で否決されました』
『え? どうしたんだろう唯一神様。それとも何か不備があるのかな?』
俺は考え込む。そして結論のようなものを出した。
『もしかして、既にT2達の時空の量子コンピュータが一部ハックされてて、さっきの絶対命令を決めちゃうと、八枷とかがハッキングして助けられなくなるから……とかかな?』
『あり得るかもしれませんが……どうなのですかT2』
八枷がT2に聞く。
『あぁ……可能性としてはないわけでもないが……だが恐らくは量子コンピュータの方は無事だとアイナとロイスが言っている』
『じゃあ何故……?』
俺は訳がわからず言葉を詰まらせる。
『……! 思いついたかもしれません。T2、量子コンピュータは良いのですが、貴方達の脳……量子脳をハックされていないかを急いでチェックすべきです』
『なに量子脳を……? そんなことが可能なのか?』
『はい。結論から言って可能です。出来ることならば異常がないかチェックを……。ないならばこちらから機器の設計書をお送りしますが……』
八枷が提案し、俺は八枷に『八枷は大丈夫なのか?』と尋ねた。
『はい。私は量子脳に覚醒こそしていませんが、毎日のようにチェックを受けていますので……革命力を計算するシミュレータにその機能も備わっているのですよ』
八枷がそう教えてくれた。
革命力とは革命のレヴォルディオン時空における、レヴォルディオンに搭乗するパイロットとリーヴァーとしての適正を表す数値のことだ。
そんな機能もシミュレータに盛り込まれていたのか……。
『アイナ、ロイス……量子脳がハックされていないか確かめる機器を作れという話だ。出来るか?』
T2は背を向けてアイナ博士とロイス博士の二人に確認をとっている。
ちなみにこの二人はギアスコード時空における天才科学者だ。
さきほどまでの量子コンピュータへのハッキングはブラフで、本命は量子脳へのハッキングだったというのだろうか?
だが唯一神様が否決しているということは、何かがあるに違いなかった。
そんなことを考えていると念話があった。
『はいはーい。量子脳の状態をチェックする装置ならもう僕らで用意してあるんだよね。だってほら、僕らは量子脳覚醒してるからね。面倒になって小日向くんに念話しちゃったよ、小日向拓也くんで合ってるよね?』
どうやらロイス博士からの念話らしい。
その声はまさしく声優の
『はい。小日向拓也です。お話できて光栄ですロイス博士』
『うんうん、まぁ社交辞令は置いといて……まずはT2くんをチェックしてみるね。T2くん、これ被って』
そう言ってT2の頭になにか機器が取り付けられた。
そうして15分ほど経った時、ロイス博士が『ありゃりゃ……残念。T2くん、量子脳に異常ありだよ』と念話してきた。
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