薔薇色の花嫁 高層ウェディングホテル最上階における悲劇の死んでない殺人事件
初美陽一@10月18日に書籍発売です
オープニング 探偵「犯人は、この中にいる――!」――三人の容疑者は、その時。
「花嫁さんが―――血まみれで、死んでいる―――」
高層から絶景が見渡せると評判の、ウェディングホテル。
その最上階にある、ウェディングドレス専用の大きな
――花嫁が、口から大量の血を流して、倒れている――
――元は純白のドレスを、鮮烈なまでの赤に染めて――
口紅より生々しい色合いの鮮血、そのおびただしい量を見るに、絶命していることは間違いないだろう。
第一発見者の男性は、このホテルを任されている
つまり部屋には現在、3名おり――支配人が青ざめながら呟いた。
「こ、これは一体、どうしてっ……お客さまから目を離していたのは、ほんの一瞬なのに……ハッ!? なぜウェディングドレスを……本日はご試着の予定は、無かったはず……っ、とにかく今は、安否の確認を――」
『――――被害者に近づかないでください!』
「!? なっ……どちら様でございますか!?」
不意に室内に響いてきた声に、支配人が丁寧にお尋ねしながら勢いよく振り返る。
他の男女も含め、室内の三名全員の視線が集まった先には――女子制服を着た、一人の少女が。注目されながらも、少女は物怖じもせず言い放った。
「ボクは〝
「……えっ!? いや、ちょ、待ってください……殺人事件で、しかも密室って……この部屋に鍵はかかっていませんでしたし、全然、密室なんかじゃ――」
「いいえ支配人さん。この部屋ではなく……このフロア全体の話です。最上階のこのフロアは、隣の式場が大部分を占めますが、そちらこそ鍵が掛かっていて立ち入りできず……残るはエレベーターホールに繋がる通路と、この控室のみ。小さな密室ではなく、大きな密室とお考え下さい」
高校生探偵・サエが言うと、そこで異議を唱えたのは、元からいた三人の中では唯一の女性――大人びたスーツ姿の彼女が、手を挙げて問う。
「あの……あっ、申し遅れました。私、〝
「いえ、残念ながら――ボクは、その非常階段から来たのです。エレベーターという密室が信用できない
「ここ三十九階なんですけど?」
「ふふっ、ご心配なさらず……何も一階から駆けあがってきた訳ではありません。ボクの宿泊部屋は四階なので」
「そんな違いないと思いますけど。神〇ビルかよ」
「〇羅ビルほどではないです。まあとにかく、非常階段で最上階のここへ至るまで、誰ともすれ違わなかった。エレベーターが使われていた様子もない……ゆえに密室と見て間違いない、ということです。……ところで銀山さん、でしたか……随分とホテルの構造にお詳しいのですね? 非常階段の位置も正確にご存知で……」
「! あ、いえその、そっ……れくらい、普通です。変なことはない、と思いますけど……」
「……そうですか。ふむ……」
何やら怪しんでいる様子の高校生探偵・サエだが、とにかく、と対応を進めるべく支配人に声をかける。
「……何はともあれ、被害者のご遺体も、このままにはしておけませんし……現場検証も必要です。支配人さん、今すぐ警察を――」
「……へっ!? け、警察ですか!? い、いえそれは、ちょっと……」
「おや。……警察を呼んで、何か不都合でも? 殺人事件が起こっていれば、通報など当然のこと、と思いますが……支配人の、
「!? な、な、なぜわたくしなんぞの名前を……!?」
「いえ、大したことではありません……趣味の一環ですよ。泊まるホテルの従業員は、公表されている限りは全て覚えるようにしています……無論、このホテルもね」
「ひいっ!? 趣味が怖い……!」
「ふふっ……恐縮です」
恐縮するところが正しいのか定かではないが、さてもう一人――女性容疑者・銀山千夏の隣にいた男性の様子が、妙だ。
「っ、っ……はあ、はあっ……は、う、あああっ……」
「……銀山さんの、お連れの男性さん……どうか致しましたか? 随分と落ち着かないご様子ですが……」
「っヒイッ!? い、いえっ、何でも……お、お、おれは何もやってませっ……あっいえ!? 違います、おれは犯人じゃな……ハア、ハア、ちがっ……!」
「ふむ。……まあ結論を焦らず。ただ、そうですね……確実に分かることが、一つ」
高校生探偵・サエが立てた人差し指に、部屋中の視線が集中し――はっきりとした口調で、探偵らしく述べる状況は。
「フロア自体が密室の状態で起こった事件――最上階に用のあるお客さんも少なく、新たに踏み入る人も無し。……いえ、これほど手の込んだ事件です。あるいは細工でもして、エレベーターも稼働していないかも――」
「―――えっ!?
「――エレベーターは動いているようですけど、まあでも、ここまで密室状態だったので、そういうことに。……あっ、ご友人の方、現場保存のため、あまり近づかないようにしてくださいね」
「えっ、あっはい。あ、アタシ看護師の資格あるんで、あと友達ですし、せめて傍に……ああ、花緒里、なんでこんなコトに……」
「コホン。……さて、そういう訳で……密室状態の最上階、そしてこの
少しばかり、水は差されたが。
今、この高層ウェディングホテルの、最上階において。
高校生探偵・サエが、高らかに叫ぶ――!
「犯人は―――この中にいる―――!」
「「「「……………………!!!!」」」」
高校生探偵の宣言に、容疑者である三人(+一人)に、戦慄が奔る。
果たして、誰が犯人だというのか。
白薔薇と称えられる純白の超高級ドレスを、赤薔薇の如くに染めて―――
これより、事件の全貌を明らかにする―――!
………そのために。
この事件における容疑者たちの思惑を、一人一人、解き明かしていこう。
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