クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら、各名家の美しいご令嬢が集ってハーレムが形成されたのですが~
リヒト
第一章 陰陽師
プロローグ
日本。
バブル崩壊後、長らく経済を停滞させながらも驚異的な持久力で大国としての地位を維持し続けている極東の大国。
その国の裏側。
裏側の部分には経済大国としての姿の他にも、皇紀で2600年以上の数字を刻む歴史ある大国としての姿もあった。
「まったく何をやっていたのかねぇ……」
陰陽道。
その起源、基礎を遡れば、飛鳥時代に伝わっていた中華の陰陽五行思想に行きつく。
この陰陽道という制度は、縄文時代から弥生時代にかけての古代日本で完成した自然崇拝を旨とする淵源の上に、律令体制のおいて体系化された神道と共に、確固たる形となった。
この過程の中で、陰陽道は神道の要素を多分に盛り込んだことにより、日本の独自色が強いものとなっていた。
そんな陰陽道は今も、この令和になって七年経った今でも残っていた。
「まさか、一般人を私たちの世界に引き込んでしまうなんてぇ」
そんな陰陽道に連なる組織。
陰陽寮であったり、陰陽師であったり、それらすべては完全に隠匿され、一切表舞台には出ていなかった。
江戸時代までは、表舞台に立つこともチラホラあったが、
「はぁー」
そんな陰陽寮に所属する陰陽師の一人。
腰まで伸びた艶やかな黒髪に垂れ目で優し気な瞳に加え、グラビアアイドルなど超越する抜群のプロポーションを持った赤羽一葉は深々とため息を吐きながら、その視線を自分の隣へと送る。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
その先にいるのは寝息を立てている一人の少年。
同年代と比べても一回り小さな体を持つその子は白髪赤目という目を引く見た目をしていた。その相貌は童顔ながらも整っており、道行く人が十人いれば、十二人が振り返るほどの美しさだった。
ベッドで寝息を立てるその姿は、何処か芸術品のようにも感じた。
「どうしましょ」
そんな少年のお腹の上には黒いもふもふの毛玉が乗っかっていた。
「それにしても、あれが……妖魔なのかしらぁ」
妖魔。
その時代時代によって呼び名が変わる、日本だけではなく世界共通の敵であり、怪物。
この世界の裏側。反世界に住まうその怪物たちは不毛の土地である反世界から脱出し、現実世界へと現出することを望んでいる。
陰陽師の歴史とは、その妖魔たちとの戦いの歴史だ。
陰陽師は自分たちの使う秘儀、陰陽術を用いて妖魔たちと戦うのだ。
「ちょっと、そうは見えないけどぉ?」
そんな陰陽師の戦う妖魔と言えば、獰猛で狂暴。
そんなイメージなのだが、少年のお腹の上に鎮座しているそいつは見た目が実に可愛らしく、凶暴さもゼロで、呑気にあくびを浮かべている。
マスコットのような雰囲気を持っている。
「どうなっているのかしらねぇ?」
陰陽師の一人である赤羽一葉の元へと少し前に届いた一報は、一人の少年が反世界へと妖魔の手によって連れさられ、相手の攻撃を受けて気絶してしまったというもの。
それで医務官としての顔を持つ赤羽一葉の元へと運び込まれたのが無害そうな妖魔をお腹の上に乗せて穏やかな表情で眠る少年だ。
だが、一体何をすればいいというのだろうか?
この少年は寝ているだけ。ここから何を処置すればいいというのだろうか。
「それにここ、保健室だしぃ」
なおかつ、ここは普通に高校の保健室。
運ばれてきた少年が通っている高校の保健室である。
陰陽師は基本的に、特殊な修行によって体内へと蓄積される呪力を用いて戦う。そして、その出力方法には何かしらの道具を必要とする。
ここには陰陽術を使うための道具が何もない。
もし、この少年が何かしらの治癒行為が必要だったとしても、今の赤羽一葉では大したこと出来ない。
ここにいる彼女は本当に、高校の保健室の先生として勤めているだけなのだから。
「あいつは元気かしらっ!?」
そんな理由で、保健室に運び込まれても、少し困る。
そんなことを思っていた赤羽一葉のいる保健室へと一人の少女が慌ただしく入ってくる。
彼女は土御門涼音。
肩のラインに揃えられた綺麗な黒髪に、紫色のつり目を持った実に美しい少女だ。
その少女が視線を送る先はベッドで寝かされている少年だ。
「元気よぉ」
心配そうにベッドの上で眠らされている少年のことを眺める土御門涼音に対し、赤羽一葉は微笑ましいものを見るような視線と共に大丈夫だと声をかけるのだった。
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