第16話 大鳩、狩ります
「ピキイイイイイイイイイイイイイッ!」
「出た、さっきの鳥だ!」
モンスターと戦いながら大樹の幹を登っていく。
眼前に現れたのは、先ほども戦ったマーダー・ピジョンである。
「それじゃあ、作戦通りに頼むぞ。二人とも」
「わかったよー。頑張るねー?」
「了解です。任せてください」
龍一の指示にトワとイナベルが頷いた。
先ほどの失敗を踏まえて、今度はドロップアイテムを取りこぼさないように戦うつもりだった。
(先ほどのように無理に遠距離攻撃はしない。敵をできるだけ引き付けて、近距離攻撃で仕留める……!)
「ピキイイイイイイイイイイイイイッ!」
マーダー・ピジョンの攻撃は先ほどと同じ。足による物理攻撃だった。
空中から勢いをつけて、こちらを蹴りつけてくる。
「『シールド・アタック』!」
「ピギュッ!?」
そこでカウンターの一撃。
龍一が手に持っていた盾でマーダー・ピジョンを殴りつけた。
マーダー・ピジョンが怯んで、その場から飛び去ろうとする。
「逃がしません」
だが……巨鳥の羽よりも速く、イナベルが動いた。
風のような速度で敵に肉薄。マーダー・ピジョンの片翼を斬り落とした。
マーダー・ピジョンが墜落して太い枝の上に落ちる。
「ピィ……」
「この状態であれば、ドロップアイテムを取りこぼすことはないでしょう」
「流石ですね、イナベル先生」
龍一が今回は出番がなかったトワを振り返る。
「トワ、トドメを頼んだ」
「私で良いのかな?」
「もちろん。絶対に君の方がドロップ運が良いからね」
トワのドロップ運はもはや気のせいではなく必然だ。
このダンジョンでも、ラストアタックはできるだけトワに譲りたい。
「イナベル先生も構いませんよね?」
「リーダーはリューイチです。あなたに従いましょう」
「ありがとうございます……それじゃあ、頼んだ」
「うん、わかったよー」
トワがメイスを手にマーダー・ピジョンのところまで歩いていく。
「ごめんねー」
「ピギャ……」
上段からメイスを振り下ろして、マーダー・ピジョンの頭部を叩き潰す。
マーダー・ピジョンの肉体が消滅。ドロップアイテムが残される。
枝の上に落ちていたのは白く濁った宝石のようなアイテムだった。
「これは……『大鳩の宝珠』?」
【鑑定】スキルを使って、アイテムの名称を読み取る。
これまでの経験上、『宝珠』と名が付くアイテムはレアドロップだ。
「やっぱり、トワはドロップ運が良いみたいだな」
「リューイチから聞いていましたが、大したものですね。それは一つの才能ですよ」
「ありがとー。二人から褒められて嬉しいよー?」
朗らかに会話をしている三人であったが、バサバサと鳥の羽音が聞こえてくる。
「ピキイイイイイイイイイイイイイッ!」
「ピキイイイイイイイイイイイイイッ!」
またしてもマーダー・ピジョンである。今度は二匹同時だった。
「二人とも、油断しないように。ドロップアイテムは無理しなくても良いから」
「うん、リュー君も気をつけてねー」
「問題ありません。彼らの動きには慣れましたから」
「「ピキイイイイイイイイイイイイイッ!」」
同時に飛びかかってくる二体のマーダー・ピジョン。
例のごとく、足で蹴りつけてくる。
「やらせるかよ!」
二体同時の攻撃であったが、この程度のこと龍一は慣れっこである。
前方に飛び出し、盾をアイテムボックスへ収納。代わりに取り出した大きな棍棒を振るう。
「フンッ!」
「「ピイッ!?」」
一体のマーダー・ピジョンを殴って、もう一体にぶつけた。
ソロでの戦いの中で身に着けた、複数の敵と立ち回るやり方である。
「ぶつよー」
「斬ります」
そして、トワとイナベルが同時に敵を間合いに捉えた。
トワのメイスが、イナベルの剣が、左右のマーダー・ピジョンに一撃を見舞う。
二体のモンスターが消滅して、ドロップアイテムが残された。
「二人とも、お疲れ」
「うん。私のはさっきと同じだよー」
「こちらは鳥の羽ですね。おそらく、これが下位のドロップでしょう」
トワが手に入れたのは『大鳩の宝珠』。
イナベルの方は顔よりも大きな鳥の羽だった。
フサフサの羽毛が揃っており、何とも温かそうである。
「名前は『魔鳥の羽毛』……そういえば、この町は羽毛布団の産地だったな」
事前に聞いていた情報を思い出す。
この町で作られる羽毛布団は国内最高級の物。真冬でも温かく、ぬくぬくと眠れるらしい。
「なるほど……布団の材料か」
「ホテルのお布団にも使われているのかな? すっごく気持ち良かったよねー」
「……そうだな」
昨晩のことを思い出して、龍一がさっと赤面した。
トワが言うとおり、極上の温もりだった。布団はもちろん、もう一つの方も。
(いずれ拠点を構えたら、この町の羽毛布団を買おう……)
龍一は心の中で、密かに決意したのであった。
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