第2話

降り積もった恋心は、大人になっても上手に伝えられないまま、ただ心の片隅でうずくまっている。


それでも、私は、どうしても麗夜の側に居たくて、最近は、暇さえ有れば麗夜の専務室に入り浸っている。


「はぁ……」


「どうした?颯に失恋したからか?」


ソファーで、来月発売の『ORION』の自身の写りを確認しながら、ページを捲る。


『今の20代の女子の、欲しい!を全てもってる木野英玲奈』の見出しに、思わず漏れ出た、ため息は、麗夜にまで聞こえていたらしい。


「違うよっ!」


「まさか、あの企画書が、あの颯が熱をあげてる平民女が、書いたものなんて……僕も驚いたよ」


「颯なんて、どうでもいいもん」


そう、颯の恋愛事情に、私は、何の関心も興味もない。そもそも、以前対談で、颯を誘惑して欲しいと麗夜から言われたのだって、麗夜が、颯の副社長という座を望んでいるから、手伝った訳で、颯なんて心底どうでもいい。


顔がいいのは認めるが、あんな俺様全然タイプじゃない。


「私は、大きな瞳の王子様みたいな人がタイプだもん」


もう麗夜は、忘れてしまってるだろうか。思い切って、大きな瞳、とつけたが、麗夜は、顔色一つ変えない。


「この間は、せっかくお願いしたのに、上手くいかなくてごめん、またどこか美味しいお店連れていくから」


この間というのは、颯との対談の事だろう。


麗夜は、パソコンを叩いていた手を止めると立ち上がり、私の頭をポンポンと撫でた。


見上げた、その藍の瞳に見惚れてしまう。


(私が、好きなのは……麗夜なのに……)

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