第7話
「あの頃に戻りたいな……」
手を繋ぐだけでドキドキして、たわいないことでも笑い合って、ふざけ合って、抱きしめあえば、涙が出るほど幸せで、陽太が居れば何にもいらない、そう思っていたのに。
コーヒーを飲み終わると、私は、立ち上がろうとして、壁にぶら下がっているカレンダーに目をやった。
「嘘……」
そこには、丸印がつけてあった。自分で付けたくせに、年末で、仕事が忙しく、すっかり忘れていた。
ーーーー今日のカレンダーの日付は12月25日。
「最悪の3年目の結婚記念日とクリスマスだな」
カレンダーに丸印をつけた時は、久しぶりに陽太と、どこかお洒落なレストランで食事がしたいなんて思っていたのに、あんなケンカをしたばかりで、到底行ける雰囲気でもなければ、誘う勇気もない。
そもそも言いすぎたことを、その場で、素直に謝ることすらできない私には、サンタクロースも呆れて物も言えないだろう。
カレンダーの25の数字が、涙で滲みそうになった私は、ふと、結婚式場でもらった蝋燭の事をを思い出して立ち上がった。
うろ覚えだが、3年、5年、7年、10年と、結婚記念日の一区切りごとに、火を灯して、長い蝋燭をどんどん短くしていくのだ。
最後の50年目の金婚式まで、夫婦で結婚記念日の度に、今日という、かけがえのない素晴らしい日の事を思い出しながら、お二人で灯してみてくださいね、とウェディングプランナーの女性が話してくれた事を思い出す。
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