再会

第4話

「居たよ」


エイムズは、ほら、と、食堂の1番端のテーブルで長い足を組んでいる、兄のイーサンを指差した。


僕と同じネイビーに赤ラインの入った制服を見に纏っている兄からは、同じ物を着ているとは思えないほどの気品が漂っていた。 


エイムズに連れられて、僕が近づくと、イーサンは、サファイアを思わせるブルーの瞳で僕を見つめ、ブロンドの髪を揺らしながら、笑ってくれた。

 

「ゼイン……よく来たね、会いたかった」 


言うと、立ち上がり、そのまま僕を抱きしめる。


兄の優しい、変わらぬ匂いに、僕は安心した。  


「感動の再会か。ゼイン。何でも分からないことは聞いて。兄さんだけに頼らないでよ。僕は、上級生なんだからね」


言いながら、ウィンクするエイムズは、僕の肩に手を置いた。


──そして、僕らは食事を済ませ、寮へ向かった。


僕は、明日から授業に出れば良いと言われていた。だから、今日中に、最低限のルールを知っておきたかった。


イーサンとエイムズは、新入生の案内という名目で、午後からの授業をサボったようだ。


「エイムズ!部屋、此処しか空いてなかったのか?!」


無機質な廊下の突き当たりにある、ドアの前で、イーサンは、エイムズに食ってかかった。


「この部屋、何かあるの?」 


僕の質問に、イーサンとエイムズは少しだけ困った顔をした。 


「たいしたことじゃないんだけどね。管理人のハイデンが、昔使ってた部屋らしくて。皆、気味悪がって使いたがらないんだよ」


僕の脳裏に、さっきの醜い男の姿がよぎった。


「あそこが俺達の部屋だ。いつでも訪ねてきていいから。ただし、俺たち眠るのは早いから、夜は立ち入らないでもらえるかな。あと必ずノックはすること」


エイムズが、何事もなかったように、右側の二つ隣のドアを指差した。


「それじゃ、夕食まで、ゆっくりお休み」


エイムズに鍵を開けてもらい、僕は部屋へ入った。もっと、兄さんと一緒にいたかったけれど、明日の準備もある。


ベッドの脇に荷物が置いてあった。備え付けの机の上には、あの回想録が─。


僕の苦手なラテン語の教科書以上に、目を通す気にならないモノだ。


ふと、机の片隅に目が止まる。


一瞬、傷かと思ったが、よく見ると、ナイフの様なもので、刻まれた文字だった。


『あなたしかいない』


小さいけれど、確かにそう読める。


一体誰が……。


まさか……管理人のハイデンが?


この部屋は、ハイデンだけじゃなく、沢山の人が使っているはずだ。誰かに恋した気持ちを残したい人だっているかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る