天才少女剣士は異世界で剣術を広めたい!
ナーゴ
第1話 異世界への招待
静けさ漂う道場に一人の少女〈刃隠三奈〉が立っていた、黒く艶やかな髪を後ろに結い、三奈は祖父から譲り受けた刀〈白虎〉を抜き、テンポよく振るっていく。
剣術なんて時代遅れ。
そんなもの極めても役に立たない。
女の子らしい趣味を見つけなさい。
刀振り回す女の子は可愛くない
刀を振りながら教師や同級生、果ては剣術を代々受け継いできたはずの両親にまで言われた言葉を思い出し素振りが荒々しくなっていく。
「言われなくても分かってる!でも私はおじいちゃんやご先祖様のように剣を極めて広めていきたいの!」
刃隠三奈は剣術家の家系に生まれ、幼い頃より祖父から代々受け継がれてきた天元一刀流を教えられてきたが、両親は三奈が刀を振るうことを快く思っていないようで今日も両親と少し言い争いをしていた。
息を切らしながら素振りをする手を止め、刀を鞘に納める。
あの子達や先生が言ってくるのは仕方ないけど、剣を受け継いだお父さんまで否定するなんて信じられない!私には剣しかないのに・・・。
下を向き俯いていると足元に魔法陣のようなものが浮かび上がり、徐々に広がっていった。
「ちょっと!なにこれ!」
驚きながらも素早く後ろに飛ぶが、広がっていく魔法陣からは逃れられずに光に包まれていく。
光が収まり目を開けると三奈は大きな石造りの部屋に立っていた、部屋の中には数えきれないほどの武具が並び、どれも並みの剣ではないことが一目で分かった。
「なに?ここどこなのよ!?」
部屋の奥には豪華な装飾を施された椅子に座る女性が楽しそうにこちらを見ていた、三奈は人間とは思えぬ雰囲気と美しさを持つ女性に目を奪われていた。
「ようこそ、我が自慢の武器庫へ!あなたを呼んだのはこの戦神グロリアよ!」
そう名乗りながら椅子から立ち上がり長く美しい金色の髪をなびかせた、しかし神と言う言葉より三奈を困惑させたのは戦神グロリアの装いであった。
「ちょっと!なんであなた服をきていないの!?どういう事なのよー!!!」
現状を把握できずに困惑する三奈を愉快そうに見つめながらグロリアはおもむろに傍らの剣を手に取り三奈に投げつける。
投げられた剣を難なく腰の刀で弾きグロリアを睨みつける
「いいわ!あなた私好みの子よ!」
「そんなことはどうでもいいから私を家に帰して!」
「いいのかしら?あなたの望みを叶えてあげられるのはこの私くらいのものよ?」
「どういう事よ?私の願い?私の願いは天元一刀流を私の手で広めることよ」
三奈は語気を強めながらグロリアを睨みつける。
三奈の様子にグロリアはますます楽しそうにしながら三奈に近づいた。
「私の世界に来なさい、あなたは戦の神である私から見ても天才剣士、あなたの腕をあなたの世界で埋もれたままにしておくには勿体ないわ」
「アニメとか漫画の異世界転生ってやつ?よくあるチート能力で無双なんて私の望む剣じゃないわ!」
「あら、そんな転生ボーナスなんてあげないわよ!あなたは今のままでも異世界で暴れまわれる実力よ?どう?モンスターや凄腕冒険者が沢山いる私の世界で腕試ししてみたくない!?」
三奈はグロリアの言葉に考え込んでしまう。
確かに現代日本で本格的な剣術なんて誰も興味なんて持たない、それに異世界のモンスターや冒険者との腕試しを想像したことなんて一度や二度じゃないけど・・・
考えこむ様子にもう一押しと思ったグロリアは三奈の耳元で囁く。
「なにも日本で剣を広めなくてもいいじゃない、異世界であなたの腕を示して道場でも立てれば十分生活できるわよ」
その一言に三奈は決意を固めたように頷いた。
「わかりました、私を異世界に連れて行ってください!」
決意を固めた三奈の様子に心底嬉しそうに手をかざす。
「いいわ!あなたなら私の世界を存分に楽しめるはずよ!」
徐々にグロリアの手から光が放たれていく。
「その前に伺いたいのですが・・・なんでずっと裸なんですか」
三奈は光に包まれながらグロリアの姿について疑問を問いかけた。
「そんなの決まってるじゃない!趣味よ!」
その言葉に期待よりも不安のほうが勝っていたが、今さら後戻りなどできようもなく眩い光に包まれていった。
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