第19話

「ちゃんと高坂社長に聞いてくれたんだな」


「えぇ」


俺は麗華を抱き寄せると、ブラウンの長い髪をひとつかみして口づけた。


「で?高坂社長は渋ってた都市開発の契約、うちと契約してくれるって?」


「ふふ、せっかちなのね。そうよ……私から高坂にお願いしたら、しょうがないなぁって言ってくれたわ」


「じゃあ、明日の料亭での接待に契約書持っていってもよさそうだな」


「まあね、でもほんと雅也さんって……悪い人なのね。私のこと、こうやって利用して……早苗さんっていう素敵な奥様がいながら……私なんてどうせ遊びなんでしょ?」


「麗華が遊び?そんなわけないだろう?」


俺は麗華の唇を奪うように口づけた。


「ンンッ……もう、ダメよ。早苗さんに気づかれるわ……せっかくご近所さんとして仲良くしてるんだから」


「いつも相手させて悪いな」


俺は早苗の顔を思い出して、ため息を吐きだした。


「はぁ、このまま麗華の家に泊まりたかったよ」


「またね」


か、楽しみにしてるよ」


俺は頬の横で小さく手をふる麗華に頷いて答えると、早苗の待つ家へと重い足取りで帰った。


──この時の俺は知らなかったんだ。俺がどんなふうに破滅へと向かっていたのかを……

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