転生正義

国芳九十九

第1話 死後の世界

 苦しみが無くなり、嘆く声が聞こえなくなった頃、幾重に男女の声が言霊する。それは朴念仁的だが、平坦な優しさを持っている。

?「嗚呼、可哀そうに、可哀そうに。夭折だなんて可哀そうに、可哀そうに。童よ、私は神だ。君の壊れかけの精神力は、輪廻する際に於いてとてつもない力になる」

 僕はよく分からないこの場所を、死後の世界だと決めつけた。夜に浮かぶ星々が円を描き、満月が円の只中にあって、水平線の向こうにまで赤い砂が瀰漫している。

 僕は赤い砂に尻餅をつく様に座ってい、躰の一部を浸からせていた。

 この何者かは、神と名乗っていた。併し、認めざるを得ない状況である。疎かに人の形をする光が、目も無いのに僕へ視線を送る。僕は裸だが、その視線に対して恥ずかしさを覚えなかった。神はどこからか絹の布を取り出し、僕に銀のベルトで簡易的なトガの様な物を著させた。ここは寒くも無いし、熱くも無く、とどのつまり熱が無いのだ。正しく死後の世界である。

 神は語った。

神「私は一にして全、全にしての一。現代と未来に於いて唯一の人格神。私以外の神は、神性で空、大陸、海、様々な物と最終的に包含したんだ。まぁ、併し君には分かりづらいかな?」

 神は少し笑った様に話をし、一旦終え、「場所を変えようか」と云って指と指とで音を鳴らし、渦を巻く様に視界が明滅した。木立は円形に並んで背を比べてい、この鳥渡開けた空間の、央の石のテーブルへ根を追従させている。

 僕は三つの、背と足とを持たない石の椅子の足元を見た。根によって固定されてい、僕はこの場所も死後の世界だと決めつけ、一部の布を握り、座り込んだ。

 神は手の様な物を使わず、変に空気を触って器用に空中で二つの湯呑にお茶を淹れ、急須をテーブルの只中に置き、神は湯呑を握ってい、僕の手前に湯呑を置いた。奇天烈な湯気が出ている。

 神は「さて」と云って、話し出した。

神「君には別の世界に転生してほしい。その魂、その精神でね」

 僕は困惑した。

神「君が拒否すると、地獄に落ちる。いくら君が可哀そうと云っても、罪と罰からは逃げられない」

 突然、周囲が宇宙に塗り替わった。テーブルと椅子だけが残ってい、僕は戦々恐々としている。

神「何、恐れる必要は無いよ。君が異世界に転生をして、君のその巨きな正義で善行をすれば、罰を受ける必要は無いのだからね」

 僕は「はい」としか云わざるを得なかった。

神「併し、私は君へ押し付けているんじゃあないんだよ? 併しだね併し」

 神の声が段々と恐ろしい男の声に変り、辺り一面が火に包まれ、地獄の様な場所になり、僕はますます恐れた。神の光が赤くなってき、悪魔の様に見え始めた。

神「君が生前に犯した罪は! 夭折では償われない! 君の死は行動の末に生じたものだからだ! 決して罰にはならない!! さぁ、どうする?」

 僕にはもはや選択肢は無い。僕は復、「はい」と云った。すると、元の木立の央に戻った。神の光も、声も元に戻っている。

神「そうか。さようならだね、少年。ばいばい」

 神は小さく手を振り、僕の躰から光の線が出、意識を失った。

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