第4話

 期末テストが終わった。

 教室内は問題用紙を持ち寄って、「この問題はどうだったか」「この問題の答えこれだよね」「え、この問題こう解くの」、なんて声がそこら中から飛んできて、教室の中はある種の祭りのような騒ぎになっていた。

 中間テストのときもそうだったし、こういう定期テストの恒例儀式なんだろうね。僕も中間テストのときは他のクラスメイトのもとに集まって、やいやい騒いでいた。ただ今回は僕はその騒ぎに参戦しなかった。理由は特になかったけれど、なんだかそんな気分になれなかったから。

「おーい、ユウタ。今回の期末どうだったよ」

 シンゴが集まりのひとつから離れて、僕のもとに駆け寄ってきて聞いてくる。その表情はなんだか晴れやかとしていて、こいつのテスト結果がそう悪いものではなかったのがわかる。

「まぁまぁだな。そういうシンゴは、結構上手くいったみたいじゃん」

「え、わかるか?いやぁヤマが当たってさ。一夜漬けの効果でまくりでよ」

 よく見ると、目の下には隈が軽くできていた。

 こいつ、まさか期末試験の期間ずっと起きてたわけじゃないよな、なんて思いながら、シンゴと話を続ける。

「いやぁ、これでスマホもSNS解禁よ。1週間振りよ。いやぁ、テスト前スマホ禁止キツすぎるってー」

「ふっ、おいおい、スマホに支配されすぎじゃねぇか?高校生ならさ、もっと外で遊ぶとか色々あんじゃんか」

「えー、なんか、おっさんくさい事言うじゃんか、ユウター。お前だって中間の時はスマホ解禁喜んでたじゃんかよー」

「……そいや、そうだったな」

「ったくいい子ちゃんぶっちゃってヨォ」

 シンゴは僕の肩を叩き、笑いながら言った。

 僕も「悪りぃ悪りぃ」と笑いながら返す。そんなこんなであっという間に時間が過ぎて、学校は少しの休みに入ることになった。


 僕のテストの出来はというと、そう悪いものではなかった。というのも前世の記憶がそれなりに役に立ったのと、普段からそこそこ勉強していたこともあって、今回の期末テストは苦労しなかった。前世の記憶というのも悪くないもので、久しぶりの高校のテストで、強くてニューゲームな気分を味わえた。


 帰り道、僕はシンゴと途中まで一緒に帰ることにして、通学路を歩いていた。

「なぁ、夏休みなんか予定あるん?ユウタは」

「うーん。まぁあるっちゃあるかな。どうしてよ」

「いやさ、夏休みどっかで遊ばん?ぱーっとさ」

「いいな。そしたらまた予定決まったら、連絡するわ」

「……絶対だぞ。約束だからなっ!」

 シンゴの顔が妙に真剣で、いつにない表情だからかちょっとびっくりしてしまった。

「なんだよ。わかってるって。約束な」

 僕は小指を出す。シンゴはそれを見て「子どもっぽいな」と笑いながらも小指を互いに結んで指切りをする。

 し終わった後に二人で互いに噴き出して笑ってた。 

 

 それで少しの休み、というのは、期末テストが終わると始まる1週間の休み期間のことだった。この期間はテストの採点や成績を出す期間で、この休み期間が明けると終業式があり、その日が1学期最後の登校日になる。

 この期間は一応自宅学習日として設定されているが、そんなのは詭弁で、実際はただの夏休みの前哨戦だったりする。

 大体みんなこの休みは遊んで過ごすのだけれど、僕にはやるべきことは決まっていた。

 それは前世での知り合いを見に行くこと、出来れば話すことだった。

 僕はここまで前世のことを信じてはいたが、それでも心のどこかで自分がおかしくなってしまった可能性も、ひっそりと持ち続けていた。

 僕がどうなってしまったのかを確かめるためにも、もし前世があるならば、その僕の未練を晴らすためにも、僕は前世の途絶えてしまった道を辿る旅を、この夏に歩もうと思った。

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