第17話 白虎
夜空を散歩しながら白虎に現状を説明した。
白虎はここが自分の世界でないと知ると驚いたがそれだけで、俺とまた一緒にいられるならどこでも良いと嬉しいことを言ってくれた。
早速俺はここに白虎を呼び出した理由を話すことにした。
「お前にはここで悪意をもった霊、ん〜レイス? を監視し、場合によっては倒してもらいたい」
『レイス、でございますか? そのような低級の存在など主の聖剣を掲げれば消滅してしまうと思うのですが』
「ま、確かにそうなんだけど、理由あって聖剣は使えない」
『もしかして聖剣がこの世界では使えないのですか?』
「いや違う。聖剣は・・・・眩しい」
『・・・・は?』
「聖剣は眩しいから使えない」
『それは・・・・』
「まぁ聞け。この世界に魔法は存在しない。そして聖剣みたいなのも存在しない。そんな訳でこの世界で聖剣を使ってしまうと何かと目立つ上に、それを使ったのが俺だとバレると色々面倒なことになる」
『はぁ。つまり、主としてはお力を知られたくはないから聖剣を使えないと』
「ま、そう言う事。だから目立たずレイスを殲滅する必要がある。それは俺の身近な者たちを守るためであって、そのためには広域での探索が可能なものじゃないといけない」
『なるほど、それで我というわけですか』
「お前としては物足りない仕事だと思うんだがお願いできないか?」
『いえ主が畏まる必要などございません。我は主のお役になてるのであれば何の問題もございません。それにこうしてまた相まみえることが出来たのです。これ以上の喜びなどないでしょう』
白虎は任せろ大きく頷く。
「おぉありがと。じゃぁ任せるな! 俺と親しいのが誰なのかは、そうだなしばらく俺の回りで見ててくれればいいか。基本はこのまちの警護で、守る優先としては今の俺の母親と幼馴染の女の子とその家族が最も高い、それ以外はその後になる。あ、あとくれぐれも誰にも見つかるなよ。魔法や聖剣と一緒でお前みたいなでっかい獣はいないんだ。それとその『魔力』なんとかなんない? ダダ漏れ状態はよろしくないんだよな。こっちにも魔力を感知出来る人間がいるみたいだし」
のんちゃんが多分そう。
あの子は魔力を感じ取っている。
そうなるとこいつの存在が気づかれてしまう。
俺? 俺は完璧な元勇者様だからね。魔力の制御など掛け算九九より簡単よ!
『承知。見つからないようにいたしますが、もしもの場合もありましょうから、ならばこれではどうでしょうか?』
白虎が薄っすらと光るとみるみると小さくなっていく。またがっていた俺は自分の魔法で飛んだ。するとさっきまで白虎の巨体があった場所には、綺麗な白い普通の猫がいた(ただし空の上である)。
『この世界の動物で我に近いものを選びました。人にもなれますが話を聞いたがりではこちらのほうが動きやすいでしょう』
既にこの世界の情報を入手し順応する白虎に驚愕を覚えつつ、可愛らしい猫の姿に俺は思わず白虎を抱きかかえた。
「おぉかわえぇ!」
『はわわわわわ』
慌てたような白虎の声を聞き流し、猫フォーム白虎の頭を撫で回す。
その手ざわりは高級なベルベットのような滑らかさで撫でるのが癖になってしまいそうだ。
「うん、バッチリだ。魔力も全く感じない」
『お、お褒めにあじゅかり恐縮でふ』
ふにゃふにゃになる白虎を優しく空中に下ろし(若干意味不明)、俺は改めて白虎に命令を下した。
「それでは白虎。本日を持って街の警備を一任する」
「んにゃぁ!」
すると白虎は言葉を忘れてしまったのか可愛らしく一鳴きするのだった。
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