第11話 毒魚

かくして、私の海釣りデビューとなった。

江ノ島の足場のいい磯で、竿を出す。

初めて釣れたのは、アイゴという毒を持つ魚だった。ヒレに毒があるので触れない。

ゆきちゃんは糸を持ってバケツにアイゴを入れ、針を抜こうとしたが、なかなか取れない。毒魚だから触れないからだ。

針はエラに刺さっており、エラは人間に置き換えると肺だった。

かろうじて針を抜き、ゆきちゃんは海へとアイゴを投げるが、アイゴは泳がずに浮き、徐々に海底へと落ちていった。

「死んじゃったね」

ゆきちゃんは悲しそうだった。

自分の道具箱から、合わせちゃダメジナ、という針を出した。

「針を交換させて」

そう言うと、素早い手つきで針を交換した。

合わせちゃダメジナという針には返し(魚が引っかかっても抜けないような構造を返しという)

がない。

「これなら魚の口の上に針が刺さるし、死なせないから」


その後、最後までアイゴラッシュが続き、納竿した。

「釣りって残酷だよね」

帰りの車の中は沈黙していた。


帰宅するとLINEが来た。


『ママにアイゴが死んじゃったって言ったんだ』

「お母さんはなんて言ってた?」

『仕方ないでしょ、って』


その後彼女が立ち直るのに1週間かかった。

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