第9話 殺生に加担したくない
昨日の夜、今度江ノ島へ釣りに行こうと約束をしてくれたゆきちゃん。
私は楽しみにしていたが、ゆきちゃんからはいっこうに連れて行ってくれる気配がない。
仕事が終わった後、ゆきちゃんに確認してみた。
「いつ江ノ島に連れて行ってくれるの?ねえ、いつ?」
ゆきちゃんはPCを見ながらキーボードを叩き、小さな声でひと言。
「殺生に加担したくない」
え?ちょっと待って?約束は?
約束って破るためにあるの?
私の心は、怒りと深い悲しみで…。
低い声でこう言った。
「わかった。もう言わない」
ゆきちゃんは、はっと気づいて私の顔を見た。
「いやいや、その、私は…。あっ、あっ、あっ」
「サヨナラ」
「ちょっと待って、忘れ物が」
私はデスクにハンドタオルを忘れていた。
「ありがと」
もらってからそそくさと帰っていった。
「うっ、うっ、うわーん、うわーん、あああ、ひっく、うわーん」
ゆきちゃんの鳴き声が部屋の外まで聞こえた。
泣きたいのは私の方だよ。
私も帰りながら涙を流した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます