第9話 殺生に加担したくない

昨日の夜、今度江ノ島へ釣りに行こうと約束をしてくれたゆきちゃん。

私は楽しみにしていたが、ゆきちゃんからはいっこうに連れて行ってくれる気配がない。

仕事が終わった後、ゆきちゃんに確認してみた。


「いつ江ノ島に連れて行ってくれるの?ねえ、いつ?」


ゆきちゃんはPCを見ながらキーボードを叩き、小さな声でひと言。


「殺生に加担したくない」


え?ちょっと待って?約束は?

約束って破るためにあるの?


私の心は、怒りと深い悲しみで…。

低い声でこう言った。


「わかった。もう言わない」


ゆきちゃんは、はっと気づいて私の顔を見た。


「いやいや、その、私は…。あっ、あっ、あっ」


「サヨナラ」


「ちょっと待って、忘れ物が」


私はデスクにハンドタオルを忘れていた。


「ありがと」


もらってからそそくさと帰っていった。


「うっ、うっ、うわーん、うわーん、あああ、ひっく、うわーん」


ゆきちゃんの鳴き声が部屋の外まで聞こえた。


泣きたいのは私の方だよ。

私も帰りながら涙を流した。

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